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悲憤
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個人個人でひとつずつ種目をこなしていく授業の為、生徒は二人一組になり、一方が記録を取り合うことになった。偶然にも俺のパートナーはあのいじめられっ子だった。名前は東間君。
「ああぁああっ!それ以上はだめぇっ! おかしくなっちゃう!」
東間君は身体がかたく、背中を押しても全然つま先に手が届かなかった。叫び声も何かアレだし、これ以上は死ぬと言うので、程々でやめておく。
かく言う俺は前屈はともかく、開脚前転とかは絶対したくない。皆はともかく、光義だけは恐らくスケスケフィルターを瞳孔にかけて俺を見ている。いわば視姦しているんだ。
壁倒立も絶対嫌だ。ズボンが落ちる可能性がゼロではない。
マット運動は全部地獄だ……と思っていた矢先、件のウェイウェイどもが近付いてきた。
「東間、お前どんだけ運動音痴なんだよ。幼稚園児の方がマシなんじゃね?」
「……」
彼らは東間を嗤笑する為にやってきたようだ。こうも堂々と馬鹿にされてる姿を見ると猛烈に腹が立った。東間はすっかり萎縮し、何も言えず俯いている。
「アンテナぐらいできるだろ? やってみろよ」
アンテナ、いわゆる背支持倒立はマットに仰向けに倒れ、下半身を限界まで天井に向けてぴーんと維持するやつである。普通はすぐにできるが、東間君はできなかった。
「カオナシの方がずっと運動神経良いよなー。カオナシ、ちょっとお手本見せてやれよ」
東間が突き飛ばされ、逆に自分がマットへ引き寄せられた時……頭の中で何かが切れる音がした。
「いい加減にしろ! やるかやらないかは俺の自由だろ! 他人のこと気にするより真面目にやれよ!」
今までで一番大きい声で怒鳴ってしまった。体育館は嫌に響く。皆の視線が集まり、東間にまで驚いて見られてしまった。
しかし絶対にやるわけにはいかない。倒立をした時にこのクソどもが俺のズボンを下ろさないとも限らない。うん。ないと思うけど、今の俺は過去最高に疑心暗鬼になってる。
「カオナシが喋った…………」
東間をいじめていた数人の男子は唖然とし、肝心の内容は頭に入っていないようだった。そこがちょっとモヤモヤするけど、彼らのことは無視して東間にアンテナのやり方を教えてやることにした(※立ちながら)。
「……ごめん、もっと早くに追い払えば良かったんだけど」
「ううん、ありがとう。カオ……望君だけだよ、俺なんかに優しく教えてくれるの」
彼は背を丸めて照れ臭そうに笑う。それにはホッとしたけど、こいつ今俺のことカオナシって言おうとしなかった?
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