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誤解
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……そうだ。いじめっていうか、笑われた経験ならたくさんある。無邪気な子どもだからこそできる嘲笑があって、……絶え間なく浴びせられたあの日のことは今でも覚えている。
ガキの時は牛乳が飲めないとか逆上がりができないとか(今もできないけど人生に支障はない)……、親が学校に来た、というだけで笑われたりした。謎社会だ。
苦手な牛乳を頑張って飲んだら案の定お腹が痛くなって、トイレに籠った。教室では皆大爆笑していたらしいけど、唯一心配して様子を見に来てくれたのが……ずっと忘れていたけど、他でもない光義だった。
「望。何か揉めてたみたいだけど大丈夫?」
ちょうど授業終了のチャイムが鳴って、隅で休んでいた光義がやってきた。そして目の前にいる東間に笑いかける。
「また東間がちょっかい出されてた? 東間はドMだからなぁ……」
「へっ?」
ここに来て初めて聞く単語に、素っ頓狂な声が出てしまった。
「ドMって……?」
「彼ちょっと怖い性癖あってさ。皆に虐められると気持ちいいんだって」
何それ。気持ち悪っ。……じゃなくて!
「いじめじゃねえの!? どう見てもいじめだったろ!」
「あ、ごめんごめん、いじめじゃないよ。俺から頼んでるんだ。皆本当はすごく優しいんだけどさ、何か冷たくされるとゾクゾクしてきて、すごい楽しいんだよね」
「……とかクラス替え当日に皆の前で言ってんだよ。やばい変態だろ、こいつ」
光義は肩を揺らして笑っている。他人事みたいに言ってるけど変態はお前も同じだろうに……。
ていうかちょっと待って。それじゃ俺は彼がいじめを受けてると思って、深刻に悩んでいたのか。カオナシという道化まで演じて、ノーパンであることを必死に隠していたのか……!
現状を頭の中で処理できず、再び放心状態になる。今日の夜ご飯は何かな……と思ったところで、ようやく思考が回って色んな感情が溢れ出した。
「おい、望。聞いてる?」
「……聞いてない! 馬鹿! 人でなし!」
光義の手を強く振り払い、東間のことも忘れてその場から走り去った。
今までの俺の努力を返せ! 自業自得だけど!
体育館の真横にある倉庫へ逃げ込んだ。すると最悪なことに、光義は後を追ってきた。
暗い密室に二人きり。これはこれで気まずい。
「……何だよ」
「望こそどうしたの」
抑揚がないのに、どこか宥めるような声音。ちょっと振り返って見ると、彼は不安そうな表情を浮かべていた。また胸の辺りがチクッとして、息が苦しくなる。光義を安心させてやらないといけない気になる。実際は自分が楽になりたいだけかもしれないけど。
「あっ……東間が、虐められてると思ってたんだよ。でもしょうがないだろ! あんな毎日嫌がらせされてたら勘違いするって! だから俺、あいつだけがクラスで浮かないように陰キャを演じてたのに! 何かもうどうしたらいいのか……何を信じたらいいのか分からない……今すごく混乱してる」
「カオナシは陰キャっていうか、最後に爆発するもんね。忠実に再現できてると思うよ」
「そういうことじゃない!」
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