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王子様
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結城 蛍汰
それがみんなの王子様の名前らしい。
王子はニ年の先輩で、今年入ってきた一年の多くは王子目当てでこの三之宮高校に入ってきたとかナントカ..。
「その王子もアパート組らしくて、女子は色々期待してアパート組に入るって話だ」
「...なんで巡はそんなに詳しいんだよ」
「ばっか。こんなの誰でも知ってるよ」
知らない優真がおかしい。
じいっと俺を見つめる巡の目は、そう訴えているように見えた。
...別に知らなくたっていいだろ。
「今年も王子が住むアパートへの入居希望者がすごかったらしくてよー」
「へぇ」
「なんだっけな...八百一荘、だっけ。結局だれも王子と一緒のアパートになれなかったらしいけど」
「え、八百一?」
「そそ、違ったけな?忘れた」
「なんだそれ曖昧かよっ」
「いいだろー。あーあ、俺もアパート組なりたかったなぁ」
脱力したように、巡は机上にうなだれる。
アパート組っていうのは、そんなにいいものなんだろうか。
俺の場合は、朝が弱いから遅刻しないようにって母親に勧められただけ。
家族がいない空間ってのも自由でいいけど、ホームシックになりそうで怖い部分もある。
「...って、もうこんな時間かよ」
ふと教室の時計を見上げた巡が声をあげる。
それに続いて時計をみれば二つの針は、いい時間を指していた。
教室には、もう俺たち二人以外誰もいない。
「帰るか」
「そうだな、また明日な」
「おう」
教室を出た俺たちは、じゃあなと手を振って別れた。
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