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一歩、近づく
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ぼそりと呟いた言葉は、本人にもしっかりと聞こえていたらしい。
王子様という単語に、彼はピクリと一瞬動きをとめた。
「あれ、知ってたんだ」
「と、友だちに聞いて..」
結城蛍汰は優しそうに笑っているのに、その笑顔をどこか怖く感じる。
「そうなんだ、王子様なんて俺には不釣り合いだけどね」
「....たしかに。男に痴漢する変態だし..」
ポロリと零れてしまった言葉。
はっと気づいたときには、時すでに遅し。
王子様は笑みを消し、目を見開いていた。
「あ、いや..ごめ」
「ふふっ、いいよいいよ。優真の言うとおりだし」
慌てる俺をよそに、王子様は楽しそうに笑う。
普通なら、怒ってもよさそうなのに..。
コイツはよく分からない。
「優真はおもしろいよね」
「...?どこが」
「お馬鹿さんなところとか」
「なっ..!!お前に言われたくな..っ」
言われたくない。そういい終わる前に、俺はハッと動きを止める。
...そういえばこの人一応先輩だし、王子様って言われてるくらい人気者だった。
お前ってのは流石に失礼だよな。
「ゆ、結城先輩に い、言われたくない..」
何となく恥ずかしくなってしまい、ボソボソと声が小さくなった。
そんな俺を見て、結城蛍汰はパチクリと目を数回瞬かせ、ポツリと声を漏らす。
「...優真には、蛍汰って呼んでほしいな。一緒に住むわけだし」
「..っ...じ、じゃあ、蛍汰..」
「うん、ありがとう」
「っ...別に..っ、手止まってんぞ!」
年上の男の人を呼び捨てにするなんてこと初めてだったせいか、蛍汰の名前を呼ぶと妙に緊張する。
からかわれることに恥ずかしさを感じながら、俺たちは荷物整理を再開させた。
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