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「優真?」
全校生徒の半分近くがいるこの騒がしい場所で、俺の小さな呟きなんてきっと誰にも聞こえていない。
八重にも、もちろん優真にも...。
それでも優真は、目があった瞬間あからさまに目を逸らして食堂の中へと入っていってしまった。
「あ...」
そりゃ、近くに来てほしいなんて言わないけど。
こんな人混みの中、俺に近づくなんて馬鹿な真似しないだろうけど。
「......」
(手くらいふってくれてもいいのに..)
知らない人のような反応は、少しだけ傷つく。
「おい!馬鹿!早く行くぞ!」
「え、」
「ぼさっとしてんなよ、蛍汰!」
「うるさい」
どうやら強行突破に出ることにしたらしい八重は、容赦無く女子たちを切り離していく。
さすが運動部。
「ちょ、痛いなぁ!もう」
「蛍汰くぅん!」
後ろから聞こえてくる文句にちらりと目を向けてから、俺たちは食堂の中へと入った。
食堂内に入ってしまえばそこはもう安全地帯だ。
「はぁ。何なんだほんと..、お前の信者たちは」
「嫌なら一緒にいけりゃいいのに」
「...るせーよ、ぶん殴るぞ」
殺意のこもった目を向けられた俺は、何も無かったかのように足を進める。
食券を買い、受付にそれを持っていく途中、俺は奥の席で先ほど目にうつった少年を見つけた。
「...ねぇ、八重。席どこでもいい?」
「あ?いいけど別に」
「じゃあ、あっち行こうよ」
「なんであんな遠いとこ...」
「いいから、いいから」
納得がいかない様子の八重を宥めて、それぞれランチBとカツ丼定食を受け取った俺たちは、目立たない奥の席へと足を向けた。
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