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お互いに自己紹介をすませ、俺たちが部屋に入ろうとすると、美琴さんは「ちょい待ち」と横から手を出して来た。
「俺、今部屋に入れへんのやわ」
「え?」
「は?」
何の前触れもなくはじまった話に俺と蛍汰は素っ頓狂な声をあげる。
「鍵、部屋ん中忘れてしまってな、理人も部屋におらんし俺部屋ん中入れんのよ」
「理人ってだれ」
「美琴の同室で三年の先輩だよ」
「理人には連絡したからもうすぐ鍵持って来てくれると思うんやけど..」
「それならいいじゃないか」
美琴さんの話を無理やり切る形で、蛍汰はしれっと口をはさむ。
「いや、だからそれまで部屋に入れさせてや?」
「いやだよ、冬じゃないんだし待ってればいいんじゃないかな」
縋るような目を向ける美琴さんをチラリとも見ることなく蛍汰はそう切り捨てた。
「鬼か!悪魔か!ほんまお前はええ性格しとるな!冬じゃないってまだ四月やぞ」
俺が死んでもええって言うんか!
そう叫ぶ美琴さんは、少しだけ可哀想に見えてくる。
だが、蛍汰はそんなのお構いなしに容赦のない笑顔をむける。
「死なないから大丈夫だよ。理人さん優しいからすぐ来てくれるって」
「そういう問題とちゃうわ!お願いやから入れてくれ、な?」
「や、だ。はやく入ろう優真」
わざとらしく一音一音区切って断った蛍汰は部屋のドアをあけて、さあさあと俺を催促してきた。
...ニコニコと微笑む顔がなぜかこの上なく恐ろしい。
すると、これ以上蛍汰に何をいっても無駄だと踏んだらしい美琴さんは、蛍汰に向けていた視線をこちらに向けてきた。
「優真ぁー、優真からも頼んでやぁ。俺もう部屋入りたくて死んでしまう」
ニコニコと微笑む蛍汰と、縋るようにこちらを見てくる美琴さん。
...なんだろう。すげえシュールな画に見えてくる。
二人を交互に見つめた俺は、呆れ半分にため息をついて蛍汰を見上げる。
こんな状況で無視なんかできないだろ。
「理人さんって人が来るまでの間くらい入れてあげてもいいだろ?」
「...優真」
「な?」
じっと見つめれば、蛍汰は仕方なさそうなため息をついてから美琴さんに目をやった。
「...はぁ、優真がそう言うなら」
「おおっ、ほんまに!?優真すごいやんけ!うおおっ、ありがとう!」
困ったように眉をさげた蛍汰を促し、大喜びの美琴さんを落ち着かせ、俺たちは部屋の中へと足を踏み入れた。
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