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複雑な心境と...
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何かあったって言われても、蛍汰の事を言えるわけもない。
それでも、いつもバカみたいに騒がしい巡が心配してくれるだけでも心の奥がじんわりとくる。
「何でもないよ」
そう笑うと巡はむすっと唇を尖らした。
「嘘つくなよ」
「本当に大丈夫なんだってば」
「...信じるぞ?」
「信じて信じて」
じい、と見定めるように俺を凝視する巡は、ふと諦めたのか「はぁ」と大きくため息をつく。
「まぁ、何でもないならいいけどさっ。なんかあったら言えよ?」
「うん」
「とくに結城先輩のこととか、結城先輩のこととか!」
「...またかよーっ」
キラキラと瞳を輝かせる巡に呆れたような視線をおくる。
それでも蛍汰への憧れは消えないらしく、巡は嬉々として語り出した。
「明後日さ、新入生歓迎会ってのがあるんだよ!」
「なにそれ?」
「名前そんまんま!部活動の紹介したり、先輩たちが出し物してくれたり、すげー楽しいんだって」
「へぇ、そんなのやってるんだここ」
高校生にもなってそんな催し物があるなんて少し驚く。
特にこの学園は何かと厳しいって聞くし..。
「でさでさっ、噂なんだけど、今年は結城先輩が俺らの為になんかやってくれるらしいんだ!」
「あー..、そこに行き着くのな」
「あったりまえだろ!あの結城先輩だぞ!?やばいよなーっ俺、あの人と一緒にご飯食ったんだぞ!?」
「はいはい、蛍汰大好きなのはもう分かったからっ」
俺はあいつのことで悩んでるって言うのに、
なんて八つ当たりかな。
騒がしい巡を落ち着けながらも、俺は新入生歓迎会とやらに思いを馳せた。
本当に蛍汰が出るのなら俺的にはすこし気まずい。
アパートの踊り場でのことは俺にも非はあったけど、今回の件で根本的に悪いのは蛍汰だ。
謝って貰わないと許せない。
というか、
(朝、あんなに怒ってすぐに許すっていうのも...)
何となく、気恥ずかしというか..。
人生で喧嘩をしたことなんて数えるほども無いからだろうか。
こういう時どうすればいいのか、よく分からない。
(あーっ、もう...帰りたくない)
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