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「お前出ろって誘われてたじゃん」
「あー、あれね。断ったよ」
いくら新入生の為とはいえ、壇上にあがるなんて御免だよ。
芸の一つや二つできればいいんだろうけど、俺にはそんなことできないし。
他のみんなが盛り上げてくれた方が絶対に楽しいと思う。
「連中、まだ諦めてないって話だけどな」
「やだよ、俺はでない」
今の俺はそれどころじゃないんだ。
はやく優真のことを何とかしないと、ずっと気まずいままになっちゃう。
それだけは何としても阻止しなくちゃいけない。
今日家に帰ってからが勝負だ、と頭を捻らせていると、
「ゆ、結城くん」
クラスの女子が控えめに声をかけてくる。
「あ、あのね美琴が結城くんのこと探してたよ」
「え、美琴が?」
「う、うん。わたし、美琴呼んでこようか?」
「ううん、いいよ。俺が行くから」
「そっか」
笑顔で断る俺に、残念そうに教室を出て行く彼女。
俺は、置いてあった鞄を手に取り、席を立った。
美琴が俺を探してるってことは、要件は十中八九歓迎会のことだろう。
「ほら、諦めてないって言ったろ」
「俺は、ぜったい、でない」
「本人の前で言えよな」
「そんなことしたら絶対面倒なことになるに決まってる。ってことで、俺帰るね」
「おうおう、おつかれ」
大変だなぁと他人事のように...、いや本当に他人事なんだけど。
手を振る八重に別れを告げて俺はそそくさと教室を出た。
美琴には悪いけど、今の俺は歓迎会よりも優真のことで頭がいっぱいなんだ。
(優真、もう帰ってるかな)
何を話そう。
何て言おう。
こんなにも誰かのことを真剣に考えるのは初めてだと思い、自然と笑みがこぼれた。
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