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side結城 蛍汰
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部活動紹介から始まり、二三年の出し物が次々と終わっていく。
毎年のことながら、歓迎会の盛り上がり方は少々異常なものがあると思う。
それでもやっぱり美琴が委員長を務めただけあって、今年の歓迎会の完成度は例年にも負けずとも劣らないものだった。
「..もうすぐ終わりだな」
隣で呟いた八重。
「うん。これが終わったら生徒会長が喋るんだっけ?」
「会長さん話なげーからなぁ..。美琴のやつ無理にでもお前を引っ張り出すと思ったが考えすぎだったみたいだな」
「そうだね..」
チラリと体育館の淵に集まる実行委員たちに目を向ける。
もうすぐ歓迎会は終わりだというのに、やけに彼らは慌ただしい。
「残念ながら嫌な予感しかしないよ」
実行委員の輪の中にいる中心人物に目を向けながら、俺は小さなため息をついた。
そんな俺の心境を知ってか知らずか、壇上にはたった今出し物を終えた三年生が拍手を受けている。
「...ありがとうございましたー!!いやあ、さすが三年生!完成度が素晴らしいっ!」
礼をし、舞台袖へと帰っていく三年生と入れ替わりで出てくる松岡。
最後の出し物が終わり、ついに歓迎会も終幕の時が近づく。
「えー..、皆様のお手元にあるプログラムでは次は生徒会長の挨拶なのですが、みなさん!ぜひ壇上に上がってもらいたい先輩がいるんじゃないですか!?」
松岡のその言葉に、期待に満ち溢れた声が体育館中に響き渡る。
ああ、もう、本当に嫌だ。
「我らが王子様こと、結城蛍汰くん!是非とも壇上にあがってください!」
パッと壇上に向いていたスポットライトが俺の方へと向く。
キャーキャーと騒ぐ女子生徒に、驚きを隠せない男子生徒。
隣では八重が呆れたように笑っていた。
「さぁさぁ、結城くん!はやくはやく!」
松岡はキラキラとその瞳を輝かせて、チラリと美琴を見れば「はやく行けや!」と手を動かしている。
...逃げ場はない。
そう確信した俺は、ゆっくりと重い腰をあげたのだった。
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