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オレは卑怯者 <Side静
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我ながら、狡いと思う。
オレは、卑怯者だ。
それでも、オレは天馬の恋愛の芽は、根刮ぎ摘む。
オレの唇に、評判なんてない。
キスなんてしたコトもないんだから、評判なんて立つわけがない。
オレの唇を見詰める欲に塗れた天馬の視線。
半分、目蓋に隠れた瞳が、興奮に血走っていた。
この機を逃がすものかと、オレは言葉を重ねた。
1度で、いい。天馬に、…その唇に触れたかった。
天馬のファーストキスを、奪ってしまいたかった。
……天馬の中で、キスとしてカウントされないとしても。
ムードに絆され、刺激されれば勃つのは、当たり前だ。
それは、普通の生理現象で、愛でも恋でもない。
天馬のセクシャリティがオレと同じな訳がない。
でも、オレは天馬を騙した。
お前はオレと同じで、男が好きなんだ、と。
あわよくば、オレを好きになってくれないかという希望に縋った。
女の子は恋愛対象じゃないだろうと言い聞かせるオレに、天馬は、小さく謝罪する。
心の隅が、罪悪感に軋んだ。
「しず」
厳兜の声に瞳を向けた。
「あんまちょろちょろすんなよ。お前ちっちぇから探すの大変なんだよ」
ゆったりとオレと天馬の側に近寄ってくる厳兜。
「そんな小さくねぇよ。お前がでかすぎんだろ」
165センチのオレを捕まえ、180センチを越す自分のでかさを棚上げし、小馬鹿にする厳兜に、ぶつくさと文句を垂れる。
「あ。僕、戻るから……」
厳兜の出現に、臆したように天馬が文化祭の準備に戻っていった。
厳兜が現れなければ、もう少し天馬と話ができたのに。
背が小さいと貶されたコトにも腹が立っているオレは、むっとした顔で厳兜を見やる。
厳兜はオレのそんな視線にも畏怖するコトもなく、つらっと隣を陣取り、背を校舎へと預けた。
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