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花の所有者
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月に一度の面会は、
いつもこのホテル、このレストランで行われるため、
季節商品以外はもうコースの品は覚えてしまっている。
どれも高級で、贅沢な品々ではあるが、
今の僕には、いやこの面会時においては、
そんな贅沢な味も、まるでわからなかった。
いつもとにかく、何事もなく、
波風立てずにこの食事会を終えることしか頭にない。
下腹部から伝わる電流に耐えながら。
「黒澤、土井塔カンパニーから合併の話が出ているそうだが、首尾はどうなっている?」
「上々です。いつも通り、ねじ伏せる算段はついております。」
「ほう、さすが、手慣れたものだな。」
父はにやりと口角をあげ、目を細めながら、
黒澤さんを見やった。
その横で直樹兄さんが、舌を打つ。
「そんなに有能なら、なぜ一回で潰してしまえないのかね?一体今季に入って合併の話が何度出たことか。
容量の悪いお方だな、副社長殿は。」
父がちらりと直樹兄さんを一瞥したが、
直樹兄さんは気にする風でもなく、
コース料理を口に運んだ。
「申し訳ございません。
専務にもご心配をおかけしてしまい、
まったく情けない限りでございます。」
思ってもないことを、と毒づき、
目線を、黙々と料理を食べている僕の方へと移した。
「お前も、随分、息が詰まっているんじゃないか、
幸樹。こんなきな臭い男と暮らしていては。」
そしてうっすら笑いかけ、
僕の手に自分の手を被せてきた。
それもいやらしく、ねっとりとした手つきで。
「この男に飽きたなら、いつでも俺達の家に帰って来れば良いんだぜ、…みんな待ってる。」
ひどく情欲的に絡み付こうとしてくる声を
僕はそれとなく、その手と一緒にかわす。
真横の黒い気配と、湧き上がってくる熱に気付かぬふりをして。
「そんなことはありません。
黒澤さんにはいつも良くして頂いています。
感謝しても、しきれないくらい。」
冷や汗が、ばれないようにしなくては。
震えが、伝わらないようにしなくては。
徐々に徐々に強くなっている電流と、快感を、
気取られないようにしなくては。
なによりも、誰よりも、
彼に…。
父は相変わらず、睨めつけるような目で、
僕を一瞬も逃さず見ている。直樹兄さんは僕にかわされたことを、むしろ面白がっているかのように、へぇ、と片肘をついて、にやりと笑っている。
黒澤さんは何も言わない。
こちらに目もくれず、ただ食事を口に運んでいる。
ただ、時折、
ポケットのリモコンを操作するとき以外は。
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