アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
プロローグ《3》
-
次の日も、常連客からの指名を受け、ベッドの上で嬌声をあげていた。
二十一時をまわり、次の予約まで時間があったため、本館にある休憩スペースでコーヒーでも飲もうと廊下を歩く。
するとバタンッと何かが倒れるような音と、バタバタと誰かが走っていく音が聞こえた。廊下に他に誰もいなかったこともあり、チラリとそちらを伺いみる。
長い廊下に一定の間隔である扉のうちの一つが開いており、その隙間から誰かが倒れているのが見えた。
廊下の奥に走っていく客と思しき男の姿が、一瞬だけ目に映る。
特に慌てるでもなく、「またか」くらいの気持ちでその扉へと近づいた。そこには茶色っぽい金髪をした、まだ幼さの残る顔立ちの男が裸でぐったりと倒れていた。
ああ、こいつがイツキの言ってた新しいΩか……。
その整った顔立ちと、傷だらけの身体を見てなんとなく察する。
「おい、大丈夫か」
開いた扉から部屋へと入り、洗面所からバスタオルを持ってきて、金髪の身体を包み抱き上げた。
「ぅぐ……重」
俺は華奢なわけではないが、同じくらいの体格の男をベッドに寝かすのは非常に面倒だった。とは言え、一先ず金髪をベッドに乗せて、そのまま内線でオーナーを呼んだ。
すぐにやってきたオーナーとスタッフに状況を説明し、その場を任せることにする。コーヒーを飲み損ねたな、と誰もいない廊下で小さく舌打ちをしながら、次の客のもとへと向かった。
同じ日。もうじき日付が変わるという頃。
いつものように客を玄関ホールまで見送り、先程飲み損ねたコーヒーを買いに、休憩スペースへと足を進めていた。すると、休憩スペースに近づくにつれて話し声が聞こえ始めた。
「ホント、あのガキむかつくな」
「それな。オメガだからってオーナーも何であんな未成年雇ったんだろ」
「そりゃ、オメガは価値があるからだろ。本番禁止でも、それなりに客はつくだろうし」
どうやらβのボーイ二人が、休憩室のベンチに座っているようだ。
「“たかがオメガ”だろ。どうせさっきのも金欲しさに自分から誘ったんじゃないの」
「だよな、あいつケロッとしてたもんな」
「そうそう。レイプされてたら、あんな平然としてらんないっしょ」
なんとなく隠れて盗み聞きをしていると、彼らは例の金髪の話をしているらしかった。
どうやらあの後、金髪はすぐに目を覚ましたが、何もなかったと証言したようだ。だが、あれは俺が見ただけでも本番行為があったのは明らかな状態だった。
それが、こいつらの言うように金髪が誘ったのか、客が無理やりやったのかはわからない。しかし、未成年者との本番行為を禁止するというここの規則を破ったことに変わりはない。
客は出禁になり、今頃身元を調べられている頃だろう。
「そういえばあいつ、今日は出勤停止になって部屋に返されたみたいだぜ」
「へぇ、そうなんだ。まだここに来て四日目とかだろ? 早くも問題起こしたし、そのうちクビになるんじゃねーの」
そう言ってゲラゲラと笑うボーイたちを無視して、コーヒーを買うべく休憩室へと足を踏み入れる。
途端に静まり返る休憩室。俺を見ると焦ったような顔をして二人は固まった。
さっきまでと打って変わってシーンとした休憩室で、目当てのコーヒーを買い、自販機にもたれかかりながら缶を開けた。生憎、ベンチは座られているし。
すると慌てた様子で立ち上がる二人。
「「すみませんっ、どうぞ!」」
それを鼻で笑い、二人をじっと見つめた。
「……何だ。“たかがオメガ”に席を譲るのか?」
俺の言葉に、二人はわかりやすい程に顔を引きつらせた。
「……滑稽だな」
それだけ言い残してさっさとその場を立ち去った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
3 / 119