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プロローグ《4》
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その足で玄関ホールにある受付へと向かう。
目的だった男を見つけ、カウンター越しに声をかけた。
「オーナー」
「んー?」
手に持っていた書類から顔をあげ、オーナーがこちらを見る。
「あの金髪、どうなったんだ?」
「なんだ、珍しいな」
オーナーは怪訝そうな顔をしたが、すぐに棚にあったファイルを取り出した。
「どうもこうも、今日は部屋に帰した。あんな状態じゃ仕事させられないし。本人は何も無かったの一点張りだったけどな」
「ケロッとしてて可愛げがなかったよ」と言いながらオーナーがファイルを手渡してくる。見ると、それはあの金髪に関する資料だった。
『永田 理斗《ながた りと》』
年齢:十八歳
性別:♂Ω
誕生日:十二月二日
職業:高校中退後、住み込みで働けるアルバイトを転々としていた。
家族:父親が借金を残して失踪。それを理由に母親が自殺。現在残された借金を返済中。
備考:未経験。客の要求に全て応える傾向あり。要注意。
簡単にまとめられた書類には、顔中に痛々しくガーゼや絆創膏を貼りながらも、明るい笑顔を浮かべる少年の写真があった。
「元々、こういう仕事は初めてらしい。どうにも危なっかしい感じだったから、つける客は選んでたんだが。まぁ、こうなる予想はしてたよ」
やれやれとため息を吐いて、オーナーはまた事務作業を再開させる。
「……何か、昔のお前に似てるんだよなぁ」
ボソリとどこかの誰かと同じようなことを言うオーナーに小さく舌打ちだけ返し、ファイルに入っていたスペアキーを手に取った。
「俺、このあと休みにしてくれ」
「は? ……別にいいが」
オーナーは「珍しいな」と驚いた顔をしたが、戸惑いながらも素直に了承し、俺の名前を名簿から抜いた。
いい加減に休まないと、イツキがまたうるさそうだし、何だか金髪に興味が湧いた。
静かに踵を返し、ファイルに書かれていた部屋に向かった。
なんとなく今、行かなければいけないような気がした。
滅多に来ない寮のフロアへと足を踏み入れる。最上階の自分の部屋以外に行くのは、ほとんど初めてと言っていいかもしれない。
静かな廊下を進んで行くと、やがて目的の部屋へとたどり着く。インターホンを押せば、ピンポーンと軽快な音が鳴り響いた。
「………………」
しばらく待つが中からの反応はない。寝ているかとも思ったが、もう一度インターホンを押す。再び軽快な音が鳴り響くが扉は開かない。試しにドアノブを回してみたが、カギがかかっていた。
……イラッ。
〈ピンポーン〉
〈ピンポーン〉
〈ピンポーンピンポーンピンポーン〉
何だか面倒くさくなり、連打してみる。
すると中からドタドタと足音が聞こえ、勢いよく扉が開いた。
「うっさい! 部屋にまで悪口言いに来んな‼︎」
急に大声で怒鳴られ、耳がキーンとする。
出てきたのは先程と同じ、茶色がかった金髪と整った顔立ちに、アザや絆創膏などが痛々しく目立つ少年のような風貌の男だった。
金髪の言葉に他のボーイにいびられたんだなと予想しつつ、特に反応もせずにその顔を見ていると、目が合った瞬間に「あれ?」という顔をされた。
「あんた誰」
眉間にシワを寄せ、不機嫌そうに言われたものだからイラッとした。
「俺はここのボーイで、お前の先輩にあたる人間だ」
努めて落ち着いた口調で話すが、金髪は相変わらず不機嫌そうな態度でため息を吐いた。
「ああ、そうっすか。先輩ね。俺、もう寝るとこなんでお説教なら明日にしてもらえます?」
早口にそう捲し立て「じゃ」と言って金髪は一方的に扉を閉めた。
何だこのガキ、腹立つな。
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