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第三章「痛みの香り」《11》
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「可愛いなぁ、ホント……孕ませたくなる」
これまで何度も言われてきた言葉が、下劣な笑みと共に囁かれる。同時に、十年にも及ぶこの男との暴力的なセックスが頭の中を駆けて行った。
発情期を迎えたオメガは、アルファにうなじを噛まれると強制的に番(つがい)関係を結ばされる。
オメガにとって、番は生涯唯一の存在だ。
だからこそ、俺には一生、必要ない。
楽しそうな表情を浮かべながら、アオさんが首元に顔を近づけてくる。
すぐにガリッと首輪が軋む音がした。発情期ではないにしても、首輪の上からうなじに噛みつかれて、どっと嫌な汗が吹き出す。
「ッ……」
首輪で守りきれていない皮膚にまで歯を立てられ、鈍い痛みに顔をしかめた。
「痛いか?」
「………」
わざとらしく聞いてくるアオさんに、何も返さずに口を噤む。この男相手に“痛い”なんて言葉を吐こうものなら、その残虐な行為に拍車をかけることを身をもって体験してきていた。
だからどんなに痛くても、苦しくても、俺は懇願の言葉を吐くことすら許されない。
アオさんは突然ガバッと体を起こすと、躊躇うことなく今度は向き合った体勢のまま後孔に性器をあてがってきた。
「ッ……」
自由になった手でシーツにしがみつき、与えられるであろう衝撃に備える。
さっき中に出された精液と俺の愛液が滴り続けているソコに、硬いモノがゆっくりと押し入り始めた。
「あ…ぐぅッン」
乱暴に犯されたせいで、後孔全体がぼったりと腫れているような気がする。より敏感になった肉壁が、性器によって割り開かれていく感覚にゾクゾクと快感が走った。
パンッパンッと肌がぶつかる音が部屋中に響き渡る。
その度に自分の性器からは先走りが溢れ、口からは喘ぎ声が漏れた。さっきまでの痛ぶるような行為とは違って、ただただ与えられる快感に体が支配されていく。
まるで恋人とのセックスのように向かい合うこの体位が、俺は一番嫌いだ。今までにも数えきれない程、こうして正常位での行為を行い、その度に死にかけてきた。
一定だった腰のピストンが段々と早くなっていく。
「あッ、ン、アッ…」
心の中がどんどん冷えていく中、体だけは勝手に高められてしまう。
そして、いつものようにアオさんの両手が俺に向かって伸びてきた。
「ぅ゛ッ、──」
躊躇いも、加減もなく、その大きな手が俺の首を締め上げる。一瞬にして止まる呼吸と血流に、すぐにズキズキと頭が痛みだした。
腰の動きを早めたまま、アオさんが気持ち良さそうに息を吐き出す。
白みがかる意識の中で、昔アオさんが言った言葉を思い出した。
『首絞めると段違いにナカが痙攣して最高に気持ちいいんだぜ?』
そう言って笑っていたのを、今と同じように組み敷かれながら、ただ呆然と見上げていた。
「ぁ……ッ……、」
酸素を求め、無意識に口がパクパクと動く。それでもギチギチと首を絞める手が、気道を塞いで呼吸を許さない。
その手をどうにかしようと必死にもがくが、力の差は歴然でビクともしなかった。
俺が意識を飛ばしかければ、慣れた手つきで僅かに力を緩め、気絶という逃げ道を絶つ。そんな地獄のような時間が延々と続いた。
すっかり萎えてしまった俺の性器とは対照的に、アオさんの思惑通りに肉壁は酷く痙攣を続ける。それが心地良いのか、アオさんは恍惚とした笑みを浮かべ、荒々しい息を吐いた。
ナカでドクドクと脈打つソレは、限界が近いのかどんどん硬さと質量を増しているような気がする。
徐々に視界が歪んでいき、自分の意識があるのかないのか、よくわからない境い目を彷徨いだす。身体を突き上げられる度に、圧迫感と揺れを感じるが、痛いのか気持ちいいのかは曖昧だった。
自分の身体なのに鉛のように重くて、まるで思い通りに動かない。
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