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第三章「痛みの香り」《12》
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「あ〜あ」
不意に上から呆れたような声が聞こえて、僅かに意識が戻った。ジョロジョロと何かが零れる音が聞こえるが、何の音か考える余裕がない。
どうやらナカに出されるのと同時に、失禁したようだ。
シーツがぐっしょりと濡れて温かい。
「──ガハッ、ゲホッゲホッ、ゴホッ……!」
ようやく首から手を離され、反射的に激しく咳き込む。足りなかった酸素を補うように必死に呼吸を繰り返した。
止まっていた血流が流れ始め、脳が覚醒していくにつれ、体の感覚が徐々に戻っていく。
アオさんに性器を引き抜かれると、後孔からゴポッという音を立てながらドロドロと精液が流れ出した。
その感覚にゾクッと身体が震える。不意に、アオさんがベッドから降りて行った。シャワー室へと離れて行くその背中を静かに睨みつけ、その姿が見えなくなると同時に身体からドッと力が抜けるのを感じた。
自分の喉がヒューヒューと音を立てるのを聞きながら、目を閉じて荒い呼吸を繰り返す。
そこへ照明の明かりを遮って影が差した。
うっすらと目を開けると、そこにはさっきまで扉の傍に立っていた秘書がいた。
上手く働かない頭では、男の名前を思い出せない。
秘書である男はいつもアオさんと一緒にここを訪れては、ただ静かに行為を見つめ、こうしてアオさんがシャワー室へと行っている間に、俺の身体を清めるのが仕事だった。
アオさんが出てくるまでの凡そ十五分程の間に、このベッドの惨状を最初の状態に戻す、それがこの男に与えられた役割だ。
それは知っている。でも──。
「触るなッ……!」
伸びてきた手に思わず声を荒らげる。大声を出したつもりが、掠れてしまい大した声量にはならなかった。
ガタガタと震える身体を悟られないように、無理やり上体を起こしてベッド上に座り込む。自分を落ち着けようと胸に手を当て、深呼吸を繰り返したが、震えは止まってはくれなかった。
一度下げられた秘書の手が、再び俺へと伸びてくる。
その手にはいつの間にかタオルが握られていた。水で濡らされたタオルが俺の頬を撫で、テキパキと全身を拭きあげていく。
体中に残された血の滲む歯型をタオルが掠めるたびに、ビリッと痛みが走った。
その感覚に身体が跳ねるのを止められない。
殴られた時に切れた口の端には血が固まっていた。その血をタオルで拭われながら、秘書の顔を見る。
行為の最中は、まるで俺を食い入るように見つめてくるのに、今は目すら合わせようとしない。
伏せられた目が、欲情を孕んでいるのを知っている。
この男もまたαなのだ。
腹の底では、俺のことをさぞかし卑しく思っているだろう。
身体を拭き終わると、秘書は俺の下腹部へと視線を移す。男がソコに触れる前に、反射的にその手を叩き落とした。
「ッ……自分でやる」
眉間にシワを寄せて言うと、男は素直に離れていく。じっとこちらを見てくる嫌な視線を感じながら、後孔へと手を伸ばした。
真っ赤に腫れているソコにそっと指を入れる。ぐちゅっと音が鳴るのを聞きながら、ナカの精液を掻き出した。
「ッ…はぁ、ン……」
単純な動作で掻き出しているだけなのに、腫れて敏感なソコから快感が湧き上がる。口から声を漏らしながら、やっとの思いで精液を掻き出し終わると、秘書の男が新しいタオルを差し出してきた。
それを受け取り、自分の陰部を拭う。白かったタオルがわずかに赤く染まった。
「ッ……」
それに気づいて顔をしかめたが、秘書の男は特に気にした様子もなく、ベッドの上を片付けだす。
力の入らない身体で、這うようにしてベッドから降りた。裸のまま床に座り、男がシーツを取り替えるのを大人しく眺める。身体のあちこちが痛んで、何もする気にはなれなかった。
男は、慣れた手つきで俺が汚したベッドを片付けると、当たり前のように俺を抱き上げベッドに乗せる。そして、そのまま扉の近くに立つと、何事も無かったかのように雇い主の帰りを待った。
数分としない内にアオさんがシャワー室から出てきた。その目はまだまだ悪意に満ちていて、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべている。
「さぁてと、再開するか」
アオさんが言うと同時に、再び長い地獄が始まった。
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