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第四章「好きな香り」《7》
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「レイさんッ!!」
シャワーの音が響く浴室の扉を勢いよく開けると、真っ先に目に入ったのは血だった。
「………」
虚ろな目をしたレイさんがこちらを見る。
服を着ていたときには見えなかった痛々しい傷の数々が、浴室の照明の下にさらけ出されていた。
傷を掻きむしったのか、止まっていたはずの血があちこちから滲み出ている。ガーゼが貼ってあった場所には歯の形をした深い傷があり、血がダラダラと流れ出ていた。
レイさんは俺が入ってきても何も言わないまま、タオルで手首に残ったアザを消すかのように強く擦り続けている。同じように体中の傷に、ひどく擦った跡があった。
急いでレイさんの手から赤く染まっているタオルを奪い取り、オーナーが渡してくれたバスタオルでレイさんを包むように抱きしめる。
「もういいよ……もう大丈夫だから」
まるで自分に言い聞かせるように、何度もそう繰り返す。レイさんは何を考えているのかわからない表情をして、どこか遠くを見ていた。
ぐったりとしたレイさんをシャワー室から連れ出し、近くのイスに座らせる。タオルで身体の水滴を拭っていっても、レイさんは俺にされるがまま、焦点の合わない目でボーッとしていた。
不意に、赤黒く変色しているレイさんのソレに気がついた。
根元に強く噛みつかれたのが見ただけでわかって、思わず息を飲む。優しくタオルを押し当てて様子をうかがってみたけど、レイさんは特に反応を示さなかった。
なんで、こんな酷いことができるんだよ……。
ドス黒い感情がフツフツと湧き上がる。でも、放心状態のレイさんを見ていたら今はそんなことを言っている場合じゃないと我に返った。
レイさんにバスローブを着せ、髪を乾かし、その身体を支えながら寝室へと戻る。
「リト、あと頼むぞ。また様子見に来るから」
レイさんをベッドに寝かせるのを見届けると、オーナーは「何かあったら受付に内線してくれ」とだけ言い残し、後ろ髪を引かれるようにしながらも出ていってしまった。きっと、お店の準備をしなきゃいけないんだと思う。
レイさんと二人、静かな寝室に残された。
とりあえず、ぐったりとベッドに倒れ込むレイさんの傷を手当てしようと救急箱を開ける。中から必要なものを取り出して、ボーッとしているレイさんに近づいた。
仰向けに寝転ぶレイさんの横に膝をついて、ベッドに乗り上げる。
えっと……。
とにかく血が出ているところから手当てをしようと思い、バスローブの紐を解き前を広げる。
「レイさん、傷のとこ消毒するよ」
そう声をかけてから、肩、胸元、腹、足と順番に消毒をしては、絆創膏やガーゼを貼り付けていく。
深い傷に消毒液をかけるたび、レイさんは僅かに顔をしかめたけど、何も言いはしなかった。
アソコは消毒したら痛いよね……?
そう思い救急箱の中を漁っていると、陰部用の塗り薬が入っていた。
ココに怪我をするのも、いつものことってこと?
そう思ったけど、口には出さないでおいた。レイさんに声をかけてから、その薬を根元にそーっと塗っていく。
「ッ……」
レイさんは酷く顔をしかめ、小さく苦しそうな声をあげた。
当たり前だ。どんな痛みか、想像しただけで足が竦む。
「ご、ごめんッ……」
手早く薬を塗り終え、レイさんの顔をうかがい見る。レイさんは俺と目が合うと、ぷいっと横を向いてしまった。
怒ったのかと思ってわたわたと動揺していると、レイさんは動きを止めた俺を怪訝そうに見てきた。
「……なに」
掠れる声でそう言うレイさんに、「な、何でもない……!」と慌てて返す。
怒っては……なさそう?
さっきよりは、元のレイさんに戻った気がする。
「レイさん、起きれる……?」
背中側の手当てをしようと恐る恐る聞くと、レイさんは眉間にシワを寄せながらもゆっくりと身体を起こしてくれた。
背中を支えて、羽織っていたバスローブを脱がせる。何だか凄く悪いことをしてる気分だ。
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