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第七章「嫉妬の香り」《14》
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勢いよく倒れ込んだ俺に、ベットがガタンッと音を立てる。
すぐにレイさんが覆いかぶさってきて、開いていた口に噛み付くようなキスをしてきた。
「ン゛…んぁッ、ぅ……」
今までされたキスとは比べ物にならないほど、乱暴で激しい。熱い舌に口の中を蹂躙されて、呼吸すらままならない。
苦しくて、怖くて、レイさんの胸を両手で押す。その手を邪魔そうに退けられて、泣きそうになった。
「言ったはずだ。二度と逃がしてやれないって」
顔をあげたレイさんが酷く冷たい目で俺を見下ろす。
「待ッ…ぁい゛ッ……!」
止める間もなく、レイさんはオーナーの痕を上書きするように、鎖骨の下に歯を立てた。ビリッとした痛みが走って、堪らずレイさんの肩にしがみつく。
い、痛いッ……!
何度も吸い上げては噛みつかれ、強烈な痛みが込み上げてくる。怖くなってレイさんの肩に爪を立てたけど、レイさんは止まってくれそうにない。
しばらくしてようやく顔をあげたレイさんの口から、俺の血で僅かに赤く染まった唾液が糸を引いた。
レイさんの目が冷たくて、嫌われるのが怖くて、気づけば泣いてしまっていた。
「ぅッ…ぁ……ごめ、なさいッ……」
込み上げる涙が抑えられなくて、レイさんの服を掴んだまま子どものようにしゃくり上げる。身体が震えてるせいで、声まで震えた。
噛まれたところがズキズキと痛んで、余計に涙が出る。
嗚咽のせいでなかなか喋れない俺を、レイさんはずっと無言で見下ろしていた。その顔はやっぱり冷たくて、怖くて、嫌われたんだと思ったらどんどん泣けてくる。
何度も言葉を詰まらせながら、俺は自分がしたバカな行いをレイさんに話した。
「バカか」
俺が話し終えると同時に、レイさんはひどく呆れた声でそう言った。
恐る恐る見上げた顔はもう怒ってはいなくて、無意識にホッと息を吐き出す。
「バカにも程がある」
レイさんは自分の前髪をぐしゃぐしゃとかき混ぜると、大きくため息を吐いて、どこか安心したような顔をして俺を見下ろした。
「誰がお前のこと心配してないって?」
レイさんの言葉に「うっ……」と言葉を詰まらせる。
いたたまれなくて、レイさんに押し倒されたまま顔をそらした。そんな俺に、レイさんは身を屈め顔を近づけてくる。
「……本当は、お前を縛り付けて、ここに閉じ込めておきたいくらいだ。誰にも会わせたくないし、どこへも行かせたくない。……バカなお前に、自分が誰のものなのか、わかるまで教えてやりたいよ」
真剣な声音に、思わずレイさんの顔を見る。至近距離で俺をまっすぐに見つめる瞳と目が合った。
ゆっくりとした動作で首に手を当てられ、身体が縫い付けられたように動かなくなる。
「でも、そんなことをしてお前に不自由を強いる気はない。お前には笑っていてほしい。お前を働かせたくないと言ったのは……正直、お前を独り占めしたい俺の我儘だ」
レイさんの言葉にドキッとする。レイさんも、俺と同じことを考えてた。俺も、レイさんを独り占めしたくて、誰かとそういうコトをしているのが嫌だ。
「お前に手を出さないのは、お前に興味がないわけじゃない……大切にしたいからだ。お前が怖いと思うなら、一生、先になんて進まなくていいと思ってる」
レイさんが俺の頬を撫でながら、寂しそうな目をしていて胸が痛くなる。触れている肌が熱くて、焼かれてるみたいだった。
レイさんが俺にえっちなことをして来ないのは、俺が無理やり犯された怖さを忘れられずにいるから……?
俺が働くのを嫌がるのは、俺に何かあるのが心配だから……?
俺は今までレイさんの何を見ていたんだろう。こんなに大事にされていたのに。どうでもいいと思われているのかと、勝手に勘違いしていた。
情けなくて、申し訳なくて、また涙が滲む。でももう泣きたくなくて、レイさんの肩をおずおずと押して身体を起こした。
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