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11.作戦
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夜、いつも通り男が帰ってきた。
「ただいま」
「お、おかえりなさい」
僕は男の前まで歩み寄ってそう言った。すぐにじっと疑いの目を向けて見てくる男の目に僕はきゅっと唇を結んで耐える。
「…ほう。今日は家でいい子にしてたんだな」
よしよし〜、そう言いながら僕の頭を撫でてくる男に僕は一瞬の苛立ちを感じるが、何とか耐える。
「あのっ、く、…首輪っ!」
靴を脱ぎリビングを歩きながらスーツを脱ぐ男にそう言いながら僕は駆け寄る。するとじろっと怖い目つきで男に見られた。
「…ああ?」
ビクッ
…なんてやつ、なんてやつなんてやつ!このヤクザ!!でも、僕だって負けない…!
「と、解いてくれませんか!」
もういい、直球勝負だよ!あんたとは…!
「はあぁ?寝ぼけたこと言ってんじゃねえぞ」
ぐ…。やっぱりそう甘くはないか…。
「昨日これを外した途端に俺の目をかいくぐってお前は脱走した。あ?また逃げて俺に探させて同じことをさせる気か?このくそ迷惑な犬め」
「……っ」
男の言っていることはまあ分かる部分もあるが、なんて口の悪い男だ…っ、ほんとにヤクザでもやってるんじゃないのかっ?!こんな性悪で自己中で変態趣味のやたら金持ってる男が普通のサラリーマンなわけがないっ!
「なんだ?その目は」
びくっ
男にくい、と顎を持たれる。
「威嚇でもしてるのか?別に噛んでくれても構わないぞ」
「っっ」
「お前に手を噛まれたところで、犬の甘噛みと言うやつかな」
そしてあははと楽しそうに笑うと男は浴室へと消えた。
……ほんっっと、なんて性格の悪い男なんだ…ッ!あ〜〜っくそう!!
いや、だめだ。落ち着け自分、僕は首輪を外してもらって、何も逃げようと思っているわけじゃない。いや、それができたことに越したことはないのだが、また失敗した時のことを想像するとあまりにも怖すぎるのでとりあえず今はやめた。今回は初犯だったからか何もされずに済んだが、次同じ真似をして捕まったら…この男に僕は何をされるか分からない。軽率な行動は、自分の首を絞めることになる。
だから僕はしばらくの間、自分のことを男に信用させるという方向に変えた。何も男に、豹変したように媚びを売る計画というわけではない。この家に住む一員として日頃の家事をして、男の癒し的な存在になるのだ。そうしていく内にいつか、あの悪魔のような男も僕に対して甘くなる時が来るはず。
『…こんなの間違ってるよな。ごめんなずっと』
これだ…っ!夢見すぎてるかもしれないけど、僕がこの男に何か尽くすようなことをすれば、この男も油断して、隙を与えるようなことくらいはできるかもしれない…!つーか、これくらいしかもう出来ることがないっ!
「あ、明日から、家の家事をしたいと思っていて、」
「…はぁ?」
とにかく、今は男の僕に対する疑いの目を完全に晴らさなければ…!
「洗濯物も、掃除機も、洗い物も…、これが付いてるだけで不便なんです。」
「……おまえ」
「分かってます!首輪を外したら逃げる、なんてことはもうしません。もし次僕がそんなことをしたら…、その時は好きにしてくれて構いませんっ!」
…言った、言い切ってしまった。もう取り消せないが、こう言わなければ男の信用は得られない。
食卓の席に座る男は、恐る恐る顔を上げる僕をにやあっとした顔で見つめた。
「へえ、いいのか?そんなこと言って」
…くそう、楽しんでやがる。僕がどんな気持ちで言ったかも知らないで。この悪魔め。
「…はい。だからこれを外してください。僕に何かをやらせてください。せめて家の家事を」
ぺこ、とそう言って頭を下げる。するとんーと言う男の声が聞こえたが、後にいいぞ、と言う男の声が聞こえぱあっと僕は顔を輝かせながら顔を上げた。
「ほ、ほんとにっ!?」
「ああ。但し1週間様子を見る。」
「えっ」
「1週間お前がほんとに逃げ出さず家事をこなしてると分かれば、その後はもう首輪を付けなくてもいい」
え…っ!
うそ、ほんとに…!?
「だが、覚えとけ。次逃げ出すような真似をしたら俺は泣こうが喚こうがお前を無理矢理にでも犯す」
びく…
「それが嫌なら、約束を守れよ。…分かったな?」
「…は、はい」
この人…一体僕をどういう目で見ているんだ、ずっとただのペット感覚で見ていると思っていたが。とにかく…この男の逆鱗に触れないようにしよう。今後は特に要注意だ。
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