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14.火照る頬
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『お前は素直なのが一番可愛いんだから。』
…くそうっ、何故なのかさっきから男に言われた言葉が頭の中にこびり付いて離れない。
「何ずっとつまんなそうな顔して歩いてんだお前」
「…!」
喫茶店を出て店内を歩く僕の横を歩く男が覗くようにして僕の顔を見てくる。
「べっ、別につまんなくありません…っ」
「ああそ?」
はっ…。まて、これじゃあまるで、この男との外出が楽しい、とでも言っているようなもんじゃないか!
「なんか服買ってやろうか?」
「!、い、いや、いいっっ」
しかし、すぐ否定するも、男の力強い手に逃げようとする体を無理矢理捕まえられてずるずると傍にあったメンズ店に入れられる。いいって言ってんのに…!ほんと自己中!
「こいつに似合いそうな服ある?」
店に入ってすぐ店員を見つけると、僕を指差しながら男が言う。
「は、畏まりました。少々お待ちください」
「何着か持ってきて。俺が合わせるから」
「はい。」
深々とお辞儀をすると店員は店の奥に入っていく。マジで何もんなんだよ、この男…。
しばらくすると店員がビニール袋に包まれた服を何着か持ってやってくる。
「こちらは今年新作の物でして」
「これいいな。色も明るい、こいつに似合いそうだし」
…っ!勝手に人を着せ替え人形みたいにして僕の服を選ぶな!
「よし、おいお前こっち」
びくっ
しばらくして、店員と楽しそうに口元を綻ばせて話していた男がちらっと僕を見て真顔で手招きをしてきた。…つか、行くわけないだろう!?
「ほら、早く来いよ」
「……」
「おい、…早くしろ」
「…っっ」
……こ、怖い顔で睨んでくんなよ!!この鬼っ!!!
「…たく一々時間取らせやがってお前は」
「!」
男はそう言いながらぐいっと僕の肩を引き寄せる。
「まずはこれ。」
目の前には、大きな全身鏡があり、そこには僕と僕に服を合わせる男の姿を映していた。
「うーん。これかな」
「…っ」
て、いうか…なんか近いんですけど。
「お前はどう思う?」
ビクッ
男の息が、耳にかかる。なんで、こんなことでドキドキしてんだ、…自分。そうか、この人無駄に顔整ってるから、それで…。
「俺はこっちが似合うと思うけど」
「……っ…」
服なんか、…何でもいいっつのっっ!!
「…あれ」
ドキ
ふと鏡の中で男と視線が合う。……やばい、顔赤いのバレたっ!?
「…お前」
「………っ」
何でこんなに、心臓うるさいんだっ…。
この男は、悪い男なんだぞ!嫌な奴なんだぞ…!僕は、この男から逃げようとして……っ
「……お前、熱あるんじゃねえのか?」
「…!」
え、熱…?
目を開いて驚く僕の額に、男は突然コツン、と自分の額を合わせてくる。……あ、あぁ…っっ、ち、近い近い近いっ…!!
「い、嫌だはなっ!」
「ーーやっぱり熱いじゃねえか!!!」
ビクッ
男はそう大声をあげると、こわい目付きで僕を見て、それからその場に突っ立つ僕を真顔で抱きかかえた。…!?!?
「悪いが服を選んでる暇が無くなった、後日この住所にその服まとめて送っといてくれないか」
「…え、ええっ」
「金は払う。」
スっと胸ポケットからクレジットカードだろう物を取り出す男に店員は頭を下げた。…ほんと、何なんだこいつ…。
「……!……凛人!しっかりしろ、凛人…!」
僕は薄れゆく意識の中で、必死そうな透さんの声を耳にしながらゆっくりと目を閉じた。
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