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15.熱と本音
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ふと、僕はガサガサとする音で目が覚めた。
あれ、ここどこだ…。高い天井……もしかしてここ、透さんの家か…。そして僕はベッドの上に今横たわっているのか。
「凛人!目が覚めたのか」
びくっ
突然横から大きな声が聞こえてびっくりした。さっき外に出ていた時と同じ格好をしたままの透さんは、微かにはぁはぁと息を上げる僕を見て、僅かに瞳を揺らしたように見えた。
「待ってろ、今薬を…これだっ」
近くの薬局にでも行っていたのか、ビニール袋から次々に大量の薬品を出していく透さんは、ふとある物を握って顔を上げる。
「口開けろ」
「……え」
「いいから。水も持ってきてる、ほら開けるんだ」
僕の体を起こし、遠慮がちにぱかっと開ける僕の口の中に錠剤をいくつか入れる透さん。
「ほら水」
「…」
僕は渡された透さんの水の入ったコップを持ってごくごくと錠剤を流し込んだ。
「まだ辛いか?」
透さんの問いに僕はふるふると首を横に振る。
「…大丈夫、平気」
僕は目を瞑りながらはぁはぁと息をする。
「……嘘つくな。この間お前ここを出て公園で野宿なんてしてたから」
…そう言えばそんなこともあったな。
「だから体冷やして風邪引いたんだ。今日は久しぶりに人の多いところにも来てたし、ずっとここにいたお前は体が弱ってるんだ」
そんなこと……
「…そんなこと、ない。」
「動くなよ。…分かったよ、熱が治ったら適度に運動出来るようにさせてやるから今は寝てろ」
ぐっと起き上がろうとする肩を抑える透さんの胸に、僕は頭をくたりともたれかける。
「…ふ、普通に外に出させてよ…」
「…え…」
「僕は逃げない…逃げないから…。だから、僕をもう解放してよ……透、さん…」
「……」
透さんはもたれる僕の頭を自分の胸から離し、ベットの上へと僕の体を戻した。透さんはベッドに横たわる熱で頬を赤くする僕を見て言った。
「……悪いが、それはまだ無理だ」
「……」
なんで……。
「……今はまだ、嫌だ。」
「…え?」
透さんの手が僕の髪を撫でた。…とても優しい手つきで。
「お前が俺の元から離れなくなると、そう確信できる時が来るまで……俺はお前に自由を与えないぞ」
「……そんなのひどいよ」
熱のせいか、目の端にうるっとしたものがたまった。瞬きをすると、それがつうっと頬をゆっくりと耳にかけて流れていった。
「……、…凛人」
透さんの目が僕を映して動揺するように泳いだ。
「…こんなこと間違ってる。僕はあなたに命を救われたのに、僕は今あなたに生きることを妨げられてる。」
「……な、なに」
「僕は犬じゃない、猫でも、鳥でもないよ。僕は意思を持ってる、だから僕はあなたの言うことなんか絶対きかないよ」
「……っ」
「…絶対透さんの思い通りにはさせない。僕は、僕はぜったい……」
あなたに、従順な犬のままになんてならない。なるもんか……!
「…………黙れ!!!!!」
ビクッ
透さんが立ち上がるのが分かり、僕はベッドに身を預けながら微かに体を震わせ、見上げる。
「…うるせえなあ何にもできないガキがさっきからああだこうだとぐちぐちと…」
「……っ」
「お前は俺のものなんだよ!!俺から一生逃げられないんだよ!」
…いやだ、いやだっ、何でそんなふうに言うんだよ、僕を物みたいに、物みたいに…っ!
「お前は黙って俺の言うこと聞いてればいーんだよ!そうすれば何だって与えてやる。寝床も食事も、金も!」
「……い、いらない!」
「………なに」
「…あ、…あんたの言いなりとしてずっとここで生きていくくらいならっ、…あの公園で野宿してる方が、ずっとずっとマシなんだよっ!!!」
「…っ」
「あんたはすごい奴なのかもしれないけどっ、あんた間違ってるもん!何でこれがおかしいって分からないんだよ…!僕は……あっ!」
バシッ、と男に頬を叩かれた。
僕はじんじんと痛む右頬にゆっくりと震える自らの手を伸ばして触れた。
「……い、いたい…」
「……」
「…痛い、よ……」
じわ、と瞳に涙を滲ませながら男を見つめる。透さんは僕からすっと目を逸らし背を向けた。
「…黙ってとっとと寝てろ。クソガキが」
そう言うと、バン!と大きな音を立てて部屋の戸を閉めると透さんは僕の元から去っていった。
僕は涙を流しながら目元を拭った。自分でも、なんでこんな事になっているのかよく分からない。そんな僕の頬をどこからかやってきたタマが小さな舌でぺろりと舐めてくる。
「…た、タマ…」
「ミャァ〜」
僕はタマを胸の中にぎゅっと抱いた。
熱のせいで、今日はなんだか失敗しちゃったよ…。何で僕あの人にわざわざ本音をぶつけたりしちゃったのかな。あの人が、まさか僕のことを理解してくれるはずなんてないのにさ…。
僕は涙で睫毛を濡らしながら眠った。
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