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25.夢
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…
『凛人』
う……ん…
『凛人、どうしたの。そんなに疲れた顔して』
……疲れた、うんそうだ…僕は、もう疲れたよ。あの人はきっと人間じゃないんだ…わけのわからないこと、ばかり……
『クス。凛人らしくないなぁ、凛人はいつだって前を向いてたじゃないか。』
……そんなことない、僕1度死のうとしたんだよ、だけど僕あの人に暇つぶしで命を助けられた…
『暇つぶし、か』
…何が言いたいの…
『何も言わないよ。凛人は凛人らしく、したいことをすればいい。』
……僕、らしく……
『俺はいつだって凛人の味方さ。君を見守っているよ。君と…透の、行く末をね…ー』
……
ーー
…なんだかまた長い夢を見たようだ。とても幸せな心地。不思議だ、さっきまで体が震えるほど怖かったのに、僕何でこんなに今心が穏やかでいられてるんだろ…。
「……っ!」
パチッと目を覚ますと、目の前にこちらを見つめる男の顔があった。
「ああっ!」
驚いて僕はベッドから体を落として床に頭と体をぶつける。い、いたぁっっ…!!
「騒々しいやつだなぁお前は」
「…〜っ!」
誰のせいで……!!
バスローブを着る男は濡れた黒髪を片手に持つタオルでわしゃわしゃと拭きながら、つまらなそうに床に寝転がる僕を見下ろしている。
「とっととお前も入れ。のろまが」
……ッ!な、なんて悪口…っ!
信じられない、信じらんないッッ!!!誰があんたの嫁になんてなってやるか!そもそも僕は男だしッッ!この悪魔!!スピード違反男!このクソ男!性悪男…!!
バンッ!と僕は浴室のドアを閉めるときっちりカギも締めておいた。また前みたいに入ってこられたら嫌だからな。僕はその後頭と体を洗うと、そ…っと浴室のドアを開けながらきょろきょろと部屋の様子を見回した。
あの男に対しての怒りもあるが、それ以上に恐怖心があるのも悔しいが事実だ。…ホテルに2人きり、あの男に何かされないわけがない。叩かれるのか、それとも変なことされるのか…。ああ、どっちも嫌だ…。
「何してる」
「!…ぎゃあっ」
後ろから現れた男に心臓が口から出るほど驚いた。な、なんで後ろからっ!?
「な、なん、なん…っ」
「…トイレに行ってたんだが。何か悪いか」
と、トイレ…っ?それは盲点だった…。
「お前どうでもいいけど、恐ろしくバスローブ姿似合わねえな」
「…!」
ふ、とバカにしたように笑う男に僕はカッと顔が赤く染まるのが分かる。
「…わ、悪かったな!童顔でっ!」
「背もチビだからな〜」
「…!!」
もう怒った!!人のコンプレックスばかり指摘してきてっ、こんな人やっぱり僕は大っ嫌いだ!
僕はベッドの上に乗ると、男から背を向けて横になる。
「おい、寝る気か?歯磨きしたのか」
「っ、もうした…っ」
僕をいくつだと思ってるんだこの男っ…!
「凛人」
「…」
「お前ホテルのダブルベッドで俺と2人きりでまさか何も無いと見込んでてそんなことしてやがるのか?」
ビクッ
男の手が横になる目を瞑る僕の頬に触れてくる。
「…無防備過ぎるぞ、凛人」
「…っ」
どうしよう、このままじゃこの男に今日こそ僕は、初めてを奪われる…っ!でも体が怖くて固まって動かないっ、どうすればいい?一体、どうしたら…っ、どうしたら……!
「……」
「……?」
しかし、男の手はそれから何をすることも無くスっと僕の頬から離れていった。え……?
「…俺も寝る。」
「……え」
「おやすみ」
男はそう言うと、ベッドから離れ近くにあるソファへと移動した。そこで横になり、電気を消し布団を被る男を見て、僕は瞳を揺らした。…え?何もしないの…?
僕はその夜、同じ部屋にいる男への恐怖心か緊張からか、眠りにつくことができなかった。
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