アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
27.揺れる心
-
その後、僕たちは透さんのマンションへと帰った。
「久しぶりに長い間外に出たから疲れたんじゃないか」
秋冬用の薄手のコートを脱ぎながら目を伏せて話す透さんに、僕は言葉を詰まらせる。
「えっと、…そう、ですね」
ほんとは全然疲れてないけど。…でも、なんて返せばいいのか分からない。
「俺、少し寝るよ。お前も、疲れたなら自分の部屋で休めよ」
透さんはそう言うと欠伸を噛み殺すようにして、自分の部屋に向かった。…透さんそんなに疲れてたのか、あんなに眠そうにして、変なの。昨晩はよく眠れてたように見えたけどまだ寝足りないのかな。
…なんて、何を僕は呑気に透さんのこと考えてんだろう。接する人がこの人しかいないから考えるのは仕方ないのか。でも警戒心を持たなきゃとさっき思ったばかりなのに、こうして怖くない普通の透さんを目の当たりにしてると、どうしても恐怖心が薄まってしまう。…僕、だんだんあの人のわけのわからない性格に慣れてきたのかな。
僕が逃げたり、あの人に強く歯向かったり、他の人と話したり、基本的にそれらをしなければあの人は普通の人なんだ。…ううん、あの人は自己中だから些細なことでもたまにキレてくる。怖いけど、でも我慢出来ないほどじゃあないよ。あれ、僕どうしてまたあの人のことを庇ったりなんかして…。あの人と居すぎて、暮らしすぎて、僕あの人のこと恨めなくなっちゃったのかな…。
あの人が本当は良い人、なんてもうそんな妄想はしないけど、僕、なぜだかあの人のことを強く突き放せない。…だって、僕があの人に助かったことだってたくさんある。今だって…よく考えたら僕、あの人がいなかったらどうしてただろう。どうにかして働いて細々と暮らしてたかな。僕、ここからいつか逃げる…そう思ってたのに今は何だか…。それは諦めも半分あるんだろうけど…だけど、だけど僕…
何だか…僕も眠くなってきちゃった…。昨夜ほとんど寝れなかったから…。
……僕、もしかしてあの人のこと、放っておけないのかな……
…
しばらくして、僕はジューというフライパンで何かを焼くような音と美味しそうな匂いに目を覚ました。…あれ…僕ソファの上でいつの間にか寝ちゃってたのか…て、あれ?このタオルケット、僕かけて寝たっけ。
「凛人、昼飯だ。少し遅めだが」
「え…」
ソファに身を起こす僕の傍に腕捲りをする透さんが来てそう言った。え…透さんって料理できるのっ…?僕は少々驚きながら食卓へと足を運んだ。
「簡単なものだから、気に召さないかもしれないけど」
ふい、と顔を背けて言う透さんを見て、それから僕は机の上に置かれた綺麗な形のオムライスを見た。カタン、と席につきスプーンを手にどこかどきどきとしながら僕はオムライスを口にする。
「…!…お、美味しい」
それはお世辞じゃなかった。もしかしたらこの人の方が、僕より料理上手なのかもしれない。
「そ。まあケチャップの味だから」
「…知らなかった。料理出来るなんて」
「まあ言わなかったからな」
パクパクとオムライスを真顔で口にする男に、僕はスプーンを持つ手を強くする。……僕、この人のこと悪魔だとか性悪男だとか、そんなことばかり思って罵ってたけど、…少しは見直した方がいいかもしれない。確かに性格は救いようのないくらい最悪だけど…でも、この人は社会で成功してる。口は物凄く悪いけど、僕よりずっと美味しいご飯が作れる。この人は、何だってできちゃう人なんだ。僕……、僕に、この人を罵る資格なんてあるのかな…?
「…凛人?」
「…」
僕、やっぱり犬として生きるしかないのかな…?
「……っ」
「…!…どうしたんだよ、何で泣くんだよ」
分からない。分からないけど、あなたといると僕は涙が出てしまう。…悲しいよ。
「…僕、何も出来ないよ…っ…あなたは最悪の性格してるけどっ仕事は出来るもん…っ!料理だって、作れて…」
「…凛人、急にどうしたんだ」
「あなたが僕を惨めにさせてくんだ…っ!」
「…」
「…ぅ…あんたが僕をここに縛るから…っっ」
「…凛人」
「僕は何も出来ない…なにも」
このまま、何も出来ないまま、ここであなたに養ってもらう代わりに、僕は、…あなたに僕自身を捧げるんだ。だからあなたと結婚するんだ。そうなんでしょ、僕はそういう運命なんでしょ…っ?
「……凛人」
「…やめてよっ、離して!」
「ごめん……凛人」
はっ…
僕の体を抱き締める、男の謝る声に僕は濡れた瞳を大きくさせる。
「…こんなことしてごめん……ごめん凛人」
「……と…」
なんで、どうしてそんなに素直に謝るの?いつもはそんなことしないのに。
「…透、さん…」
なんで、こんなに温かいの、この人の腕の中は…。そんなに優しく僕を抱き締めないでよ…。
「……お前が好きなんだ、好きなんだ」
「…とおるさ」
「愛してるんだ凛人、お前のこと…、愛してるよ凛人」
ぎゅっと抱き締めていた透さんの腕の力が緩んで、僕はそっと顔を上にあげた。
愛してる……そう言う割にあなたは僕に酷い仕打ちばかり。僕は、あなたの何を信じろって言うの…?あなたのその言葉を、僕は信じればいいの?
「…もう俺を受け入れてくれ。」
「…え…」
「俺にお前を抱かせてくれ」
ドキ
これはこの人の冗談…?それとも僕をコントロールする為の支配する為の何か…それとも僕に本気でそんなこと言っているの?
あ…っっ
そんなことを頭の中で考えていたら、気付いたら透さんにキスをされていた。
「…んっっは」
互いにオムライスを食べていたからか、ケチャップの味がとてもした。
「と、透さんっ…、ま、まって…」
透さんにされる激しいキスだけで腰がビクビクと震えていた。…だめ、抱かれるなんて絶対だめ…だって、そんなことしたらもう僕は二度と、この人に逆らえなくなってしまう。
「…あっ」
その場にずるっと足を滑らせ尻もちをつく僕の傍に透さんが屈み、僕のスボンに手をかけてくる。…こ、こんなところでっっ!僕は抵抗しようとするが、キスで軽く立っていたアソコをパンツ越しに透さんの手に揉まれて体の力が抜けてしまう。
「…ぁっっだ、ダメ、だよ透さん…そんな」
僕は透さんの首に手を回しながら透さんの耳元であられもない自分の声を何度も出してしまう。
「…だ、だめ透さ…っこ、こんなとこ…でっ」
透さんにパンツを引っ張られて自分の勃つモノが外気に露出する。
「美味そうな匂いがする…凛人、食べてもいいか」
「…!?」
頭を下に埋める透さんの舌がべろりと僕のを舐めた。
あ…っ!?
「可愛いな凛人、ひと舐めしただけでイキそうな顔させて」
「…と、透さん…っっお願いだよ…っ」
「うん?」
「こ、ここじゃやだ…、ベッドの上にして…せめて」
キッチンの床に尻もちをつきながら赤らめた顔をして僕はそう懇願する。僕は透さんにそのまま体を持ち上げられ、びくりとする。
「分かったよ。じゃあ…そこで思う存分食っていいんだな?」
僕を見つめるにやりと企むようににやついた顔を浮かべる透さんを見て、僕は途端に不安になる己の胸をぎゅっと握った。やめて…そんな顔で見ないで、食う…なんて言わないで。もっと優しい顔で僕を見てよ。僕…多分きっと、あなたのことを信じたいんだよ。だから、お願いだよ、もう僕に怖い顔しないで…。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
28 / 178