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30.嵐の夜
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「や、やだよ離して!」
僕は透さんに力づくで自分の寝室まで連れていかれた。ベッドの上にドサッと投げられ、僕はうっと微かな声を漏れさせて一瞬目を瞑る。
「…凛人…」
ビクッ
体勢を整えようとする前に透さんが僕に近づいてくる。透さんの表情はただ怒っているだけでなく、どこか悲しそうにも見えた。
「とおるさ」
「…信じてたのに…」
透さんは言いながら僕の顔の横に付いていた手でシーツをぎゅっと力強く握った。そして、透さんは強く僕を睨みつけながら突然僕の両腕を掴んで上にあげた。
「!?いたっ」
「…いつからだ」
「……え?」
「あの時からか?お前が携帯を欲しがったあの時から、その時から、最初から俺を裏切るつもりだったのか!?」
…!!
「……」
「……そうなのか!?ええ!?凛人!お前まさか、あのチャットの男が好きなのか…!!」
「!…ち、ちがいます、それはちがうっ」
「何が違うんだ!!俺を無視して違う男と話してたんだろ!」
……っっ、
何で、こんなことになってるの…?透さんに上にあげられ掴まれた手首が痛い。僕、僕は今日どうなってしまうの。
「…い、言い訳はしません」
「何だって!?」
怖い。この人が怖い。とても…。
だけど、僕にだって黙って見過ごすことの出来ない言い分はたくさんあるよ。
「凛人、今日という今日はお前を許さないぞ!!」
「っっ!ほ、他の人と話して何が悪いの…!?別に彼のことを好きとかそういうわけじゃなかったけどっ、ずっと一生あなたとだけ話して暮らしてくなんて無理…!」
「…何だって」
「大体…僕が何をしたって言うの!?そもそもあなたとは付き合ってもいないし、合意の上でここに暮らしてるわけじゃない!」
はぁはぁと息をしながら僕は自分の震える体に気付かないふりをして、上にいる透さんをじっと強く見つめ返した。…僕は負けないよ、僕は謝らないよ。だって、僕は何も悪いことはしていないんだから。
「……そうか。お前の為に…俺としたことが少し血迷って優しくしようとしたりして、だけどそれも無駄な行為だったわけだな」
…え……。
「結婚の誘いを断ったのも、俺からのキスを拒むのも、全部その男が好きだからか…!!だからだったのか!?そうなんだろう…!!」
「だから、それは違うって言ってるでしょうっ?」
「黙れ!!!!」
「…あっ!」
掴まれていた手首を乱暴に放され、僕はベットの上に横向きに膝を曲げて体を倒す。顔を上げると、こちらに向かって右手を振り上げようとする透さんの姿が見えて、僕はこれから降りかかるであろうその痛みと恐怖にぎゅっと強く目を瞑って体を硬くした。
しかし、しばらく経ってもその痛みは訪れず、僕はそっと目を開けた。
「……透、さん…?」
「………っ」
透さんは右手を振り上げたまま僕をどこか揺れた瞳で見つめていた。
「…くそう!!!!」
ビクッ
透さんの握った拳がベッドの上に強く打ち付けられた。その後、透さんは立ち上がりふと、鏡台に置いてある物を手で横に向かって強く押し床上に全て叩き落とした。
「…と、透さ…」
それから僕の元へ再び歩いてくる透さんを、ベッドの上で固まったまま身動きのできない僕は青い顔をして見つめる。すると透さんは、ベッドの横に置いてあったスタンドライトを手にして床に向かってそれを叩き割ろうとするのが分かり、僕はやめて!と声を上げる。
「何してるの透さん…っ、それを割ってどうするっていうのっ?」
「うるせえ!!」
…!
眉をつり上げた透さんのあげた手が頬にパシッと当たり、僕はベッドの上に倒れる。
「……っぅ」
……いったた…結局また叩かれた…畜生。頬を押さえて顔を上げると、透さんがこちらを見て瞳を彷徨わせているように見えた。……透さん…?
その時、どこからかミャ〜と鳴きながらやってくるタマの存在に気づいた。
「タマ…!」
こんなところに来ちゃ危ないだろう…、そう思いながら僕はベッドの上にやってきたタマを胸にだき抱えながら眉を下げる。するとふとこちらを見る透さんに気づきタマを抱えながら僕はビクリと体を震わせる。
「…っ…」
青い顔でそのまま透さんを見つめていれば、透さんは僕から目を逸らし手にしていたスタンドライトを床に向かって叩き割った。ガシャンと大きな音が立ち、目に見えて分かるほどビクリと僕は大きく体を震わせた。
「……とおる、さ…」
「……」
僕は手元から離れて行こうとするタマを必死に自分の胸に抱くことだけで精一杯だった。
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