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34.呼び出し
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それから約1週間後、僕と透さんは、えいすけくんと本当に会うことになった。僕とえいすけくんだけならそれはそれなりに楽しそうではあっただろうが、しかし今回は、あのゲームの中でチャットですら話したことの無い透さんとえいすけくんを会わせるという謎の意味のわからない展開。
何故こんなことに…。
「あーさみぃな〜まだかよそいつ来るの」
……というのにこの人ときたら。
「透さん、いくら何でも自己中過ぎるよ。勝手に突然呼び出したのは僕たちなんだよ、たまたま彼が同じ県に住んでたからまだ良かったものの…。喫茶店の前で立って少し待つくらい耐えてよ」
隣で高級そうな黒いコートを着て僅かに体を外の寒さで震わせる透さんを、隣に同じく立っている僕はじとっとした目で見つめる。…大体そこまで寒くないし。
「うっせえなぁ。つうか、何で店の中で待たねぇんだよ。馬鹿みたいにこんなとこで突っ立って」
「顔も知らないのにただ席に座ってても分かるわけないじゃん」
だから僕は顔くらい見せといた方がいいんじゃないかって、事前に言ったのに。なのに透さんが、〝何そいつとの仲を深めようとしてんだ!〟とか言って全く意味のわからない方向でキレてきたから…。
はあ、今日これから何が起こるのか考えるだけで胃が痛い…。
「とにかくお店で話すんだし、彼に変なこととかしないでよね」
「はあ?なんだそれ」
ビク
「俺はそもそもマンションに来させるつもりだったんだよ。なのにお前が外の店がいい〜とか言うからこんな羽目に」
「…、そ、それは、外のお店の方が色々といいかと思ってさっ」
「何が」
「ぼ、僕ジュースとか飲みたいし、お店の。あっあとパンケーキとかっ!食べたいなぁって…」
「…ふーん。」
…騙されてくれたかな。ああもうヒヤヒヤするな、この人といると何かといつもいつも。
だって、マンションになんか呼んだら、透さん彼に何するか分からないもの。僕だってまた、この人に何をされるか…。だからお店で話し合おうって言ったんだ。お店なら、人目があるもんね。だからそこまで酷いことは起きないだろうし、あの家に呼ぶよりはずっとマシだろう。
「まあその男のお前に抱いてる下心も俺が今日で全て打ち砕いてやるさ」
「!?は、はぁ?」
…何言ってんだこの人…。
その時、向こうからパタパタと走ってこちらにやってくる人の姿が見えた。あれってもしかして…。
「あの」
「!」
「…もしかしてリンさん?」
やっぱり…!
「えいすけくん?」
尋ねると、えいすけくんー鞄を肩にかける大学生風の格好をした爽やかな見た目の黒髪の青年が僕を見て一瞬固まった気がした。あ、…僕が男って気づいたからかな?
「ごめんね、僕男なんだ。騙してるつもりなかったんだけど…」
「……、…えっ!」
すると、また彼の目が大きくなった。そ、そんなにショックだったのかな…っ?
「ご、ごめんね…!」
僕としては彼とはいい友達になれたらいいのになぁなんて、そんなことを気楽に考えてたんだ。でもまさか、えいすけくんがあんなことを言い出すなんて言われるまで全く思わず…。
「…ほ、ほんとに…?」
僕を見てまだ狼狽えた様子の彼に、僕はえっ?と首を傾げる。えっと…ほんとに?ていうのは、なに?どうゆうことだろう。
すると、隣にいた透さんに突然ぐっと肩を抱き寄せられた。て、うわ!?急に何するんだよ…!
僕は胸辺りに回された透さんの腕を両手で掴んで引き離そうとバタバタとしてもがく。
「まだ分かんねえのかガキ」
「…えっ」
ま、まって、やめてっ…!えいすけくんが透さんのことを見てめちゃくちゃ驚いてる顔してる…!初対面の人にガキとか言うなっ!
「こいつは正真正銘性別男だ、髪が伸びてるから女に見える奴がいてもまあ不思議じゃないがな」
……って、え!ち、ちょっとまって!
僕って今周りから見たらそんなふうに見えてるの…っ?
でも確かに、最近放置しっ放しだったし頬に当たるくらいの髪の長さはあるけど…でも女に見えるなんて心外だ。だって僕男だもん。
「そう、だったんですか」
すると、どこか目を逸らし曖昧に笑うえいすけくんに僕は眉を下げる。…傷ついただろうか。
「えいすけくん、その、こんなところまで呼んでこんな形で会うことになって…本当にごめんね。とりあえずお店の中に入ろう」
そうして彼にスっと手を差し伸べると、えいすけくんが僕の手に触れるより早く、横から透さんの手が現れて僕の手首を掴んで手を下ろさせられた。隣を見上げると、透さんが僕ではなく彼を見下ろして鋭い目つきをして見ていた。
「こいつが手出したからって素直に応じようとすんじゃねえよ」
…!
「と、透さん」
目が、顔がもう、お店に入る前から怖いから…!
「ご、ごめん、僕が悪かったから」
「うるせぇ離せ。何でお前腕掴んで来るんだよ、はなせよ」
「…お店に行くんだよ!えいすけくんも行こう」
この手を離したら、あんたが彼に今すぐにでも殴りかかりそうな気がしてこっちはヒヤヒヤして気が気じゃないんだよ…!
「…ち」
舌打ちもするなっ…!!
ああどうか神様、何事もなく無事に今日が終わりますように…っっ。
絶対、無理なんだろうけど…。
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