アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
36.負けない
-
その後、少し話をしてすぐお開きとなった。
永祐くんはあまり僕たちの方を見ず、軽く頭を下げて僕たちの前から消えていった。…彼が透さんに最後まで何もされなくてよかった。僕はただそれだけを思って彼の去っていく後ろ姿を見つめた。もう、会うこともネット上で彼と話すことも二度と無いんだろう。そう僕は悟った。
「…やめて!」
マンションに帰ると、ドアを閉めてすぐ透さんに無理やりキスをされた。僕は今ある力の限りを出して透さんの厚い胸板を強く両手で押し返しながら、顔を横に逸らした。
「何でそんなに拒否するんだよ」
ハッとして振り向いて見上げた透さんの顔は僕を見て機嫌が悪そうだった。…何で?だって…。僕は顔を俯かせながら唇を噛んだ。
「…あなたの性格の悪さに幻滅したんです、今更だって思うけど、だけど僕、」
…どこかでそうじゃないって、まだ夢見てた。僕は馬鹿だよ。大馬鹿さ。そうだ、僕はほんとにどうかしてる。僕は、この人を憎みきれないのに、この人のことが嫌いなんだ。この人のことを突き放せないのに、僕はこの人の手から逃れようともがいて、必死なんだ。…この人の言う通り、僕はこんな人に対して情が湧いてしまった。信じようとして、裏切られる。自ら勝手に、こうして馬鹿みたいにショックを受けて…。
「何言ってんだよ今更お前は」
「…っ!」
男の大きな手に腕を簡単に捕まえられる。この人が本気を出して握れば、僕の細い腕など折れてしまうのではないか、とそんな恐怖心を今は感じる。
「俺はお前の望む優しい人間にはなれねえぜ。俺は生憎生まれてこの方誰にも人に愛されてこなかったもんでねぇ」
…え?どうゆうこと…。生まれてずっと…?何を言ってるんだ。
「だから誰かを愛するって行為にもなれてねーんだ。大体、俺は人なんか愛する時が来るなんて一生ないと思ってたんだ。それなのにお前が…」
僕をじっと真顔で見下ろす透さんが、ふとそこまで言って言葉を止めた。……僕、が…?なに、僕が何かをしたの?…今の透さんの言葉を聞いた感じだと僕が人生初めて透さんにとって愛する対象になったということが分かる。
……だけど、なんで、僕が……?
顔がタイプだった?従順だから?いや…僕はそこまで従順ではないような気もするが…。そもそもこの人との出会いは自殺しようとしていた僕となはずだろ。…こんな人がそんな僕をわざわざ好きになるだろうか?愛する…この人はそう言ったが何故僕をそうまで思うように…。一体いつから?
すると、突然透さんが靴を履いたままの僕を抱きかかえて寝室へと向かった。
「…っ!なにすっ」
ばふっとベッドの上に上着も羽織ったまま体を下ろされ、文句を言う前に透さんに上にのしかかられた。
「…っ退いて」
キッと強く上にある透さんの無表情の顔を見て睨んで僕は言う。透さんはそんな僕を顔色ひとつ変えず見下ろして言った。
「抱きたい」
…!!
何だって……。僕は目を大きくして上にいる男を見つめた。
「……今、僕がそんなことを言われて受け入れるとでも思うの?」
…彼にあんな大人げない仕打ちをしといて。
「…お前に俺を振りほどく程の力があるのか」
横たわる僕の腕を強く掴みながら透さんが言った。ああ…そうか、またそうやって力づくってわけか。
「……あんたは勝手だな、自分勝手に何でもかんでも振り回して僕の人生を奪って、僕に友だちすらも作らせない!あんたは人じゃない!あんたは人間なんかじゃないんだ!!」
だめ、だめだ、分かっているのに止まらない。
目頭が熱い。僕、どうして泣いているんだろう。
こんな人の為に、流す涙なんかひとつも無いっていうのに。…ただ悔しくて堪らない。こんな奴に、僕は捕まっているのか。
「…あんたに命を助けられたって言ったけど、あれは撤回する」
「ほう」
僕は男を睨みつけて言った。
「僕はもうとっくに死んでる。あんたの指示から逃れられない僕は、もう死んだも同然なんだ。…今更気づいたんだよ。あんたは死のうとした僕を迎えに来た悪魔なんだ。」
そして、この人の手に捕まった僕はこの人から一生逃げられないんだ。別に弱音を吐きたいわけじゃない。だけど僕はもう、この人から逃げられない。なぜだか、今そんな感覚を嫌に感じてならない。…僕はまだ、深い暗闇の中にいるんだ。
「…どうとでも言えばいいさ」
「っ」
「俺はお前さえ手に入れば他はどうでもいい。だが、お前だけは絶対他の誰にも渡さない」
そして、透さんが強引に僕の服を脱がし出した。それに抵抗しようとするが、両手首を頭上で掴まれ、足の上に乗られ体重をかけられ動けない。
「は、離してっ!離せ!!」
全力で体を動かそうと試みるが、既に剥き出しになった僕の素肌に透さんの唇が押し当てられる。同時に足の間にあるソコも手で揉まれて、出したくないのに僅かに声が出てしまう。同じ男なのにビクともしない…っなんて馬鹿力なんだ、畜生!
「また前みたいにお前を快楽漬けの体にしてもいいんだぜ。お前は敏感だからな?お前を素直にさせるのなんて簡単さ」
耳元で囁く男の言葉にぐっと奥歯を噛む。
「…体は奪われても、心までは奪わせないっ、あんたなんかに!」
「…っ…なに…」
負けない、負けない…。力で敵わないからってなんだ、ちょっと犯されるからってなんだっ、そんなこと屁でもない!僕はあんたが憎いんだ、嫌いなんだっ!あんたなんか少しも好きじゃないんだ…!僕を本当の犬のように扱うあんたなんて…そんな僕を愛してると言うあんたの戯言なんて…僕は絶対ー…
「…うあ!」
「なるほどな……凛人、お前はそうまでして俺に逆らいたいんだな。いいだろう、受けてたってやろう」
おしりに、何かを入れられた。なんだ…っ、ローター…ではない、それよりもっと大きい…冷たい無機物の何かが、おしりの中に…っ
「…ぬ、抜い…」
「これが何か分かるか?そうだ、男のアソコの形をした玩具だ。いい格好だな凛人、可愛いお前にとても似合っているよ」
「…!」
こいつ…っ
「凛人、お前にはよくよく自分の立場ってものを思い知らせた方がいいらしいな。お前の気の強いところは好きだが、度を超えた威嚇は好きじゃねえ。…気に入らねえな、今回のことだってまだ許してねえんだぜ。お前俺から逃げようとしたな、スマホを俺から貰って」
「…っ」
「お前はそんなこともう考えないって信じてたから渡したんだぜ。が、…そんなこと一瞬でも考えるなんて酷いよなぁ」
バカ、僕……。そんなこと考えてないって、嘘でも今つけばいいものを。でも言えない、ううん言わない。だって、本当に思ったことだから。
「……おいなんだその目は」
「……」
「あの日自殺しようとした日のお前と同じ顔をしてるよ、凛人。俺がそんなに憎いか」
「……っ」
「光栄だな。どんな理由でもいいさ。お前の頭の中を俺だけで染められるなら、何だってな…」
男の手が僕の顎を掴み、僕の唇にキスを1度落とすと、男は体を動かせない僕の首筋にゆっくりと唇を這わせていく。
「…やっ…やめろ!!」
だめだ、このままじゃ僕はあの時と同じようになってしまう。快楽に抗えず、男に思うようにされるがままだ。嫌だ、こんなのはもう嫌だ、僕に触るな…!いいや、自分の力でどうにかするんだっ!
「あの男だって、頭の中じゃ俺がお前に今してるようなことを考えてたはずだぜ?」
「……なに…」
僕の鎖骨に舌を這わせる男がどこか笑いを含む声で話す。
「男なんてのは皆そういう生き物だ、あいつの一見害のなさそうな見た目に騙されてんじゃねえ」
「……っ。…その前に、僕だって男だ」
「はあ?ああ、そういえばそうだったか?男に触られて弄られて突かれてイク男、か?」
…!!
はっはっはっと軽快に笑う男に僕はぐっと唇を噛みながら男を睨むことしかできない。…畜生…この野郎…っ。
「もう諦めろって。俺に歯向かうな、凛人」
男の手に頭を宥められるように撫でられ、優しい声で囁かれた。上を見上げると、口端を上げ微笑を浮かべた男が、強く睨みを利かせる僕を見下ろしていた。
「お前は俺から逃げられないんだよ」
「…」
「一生な」
いい加減分かれ、男がそう言って再び僕に顔を近づけた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
37 / 178