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37.沈みゆく
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何も言わない僕を見て、ふっと男は笑うと、再び僕の体に自らの唇を押し当ててきた。舌を這わせ、手で僕のアソコを刺激するように触ってくる。……こんなの性奴隷と何ら変わらない。そうだった、この男にとっては僕はいつだってペットだったんだ。僕はこの男の犬だ。僕はあんたの望み通りの犬だよ。これで満足か。
「……は」
顔に影を差して、息を吐き出すように笑う僕の様子を男は見逃さない。
「…なんだ」
男の手の動きと舌の動きが止まり、僕は別に、と言いながらこちらを見る男から目を逸らす。
「…彼をガキだと言ったあなたのことを思い出してちょっと笑っちゃって」
「………は?」
「永祐くんが本当は何を考えてるのかなんて僕も分からない。でも、少なくともあなたよりは性格はずっといいだろうね。会ってみて、本当にいい人なんだなということが分かったよ」
「…黙れ」
「彼は子どもなんかじゃなかった、あなたの何倍も彼は大人だ。…付き合ってるなんて言って、あなたが隣にいることがすごく恥ずかしかったっ」
僕はそう言ってぎゅっと目を瞑った。そうだ、僕は恥ずかしかった。彼にあんな姿を見せる透さんも、そしてそんな透さんを制止することのできない自分自身にもだ。
「ふざけるな、俺とあいつを比較して、どうして俺の方が子どもなんだ、どう考えても子どもはあいつだろ!」
「…いいや違う。透さんは彼とは全然違う」
「……それはどういう意味だ」
こちらを睨むように見てくる男に僕はまた視線を逸らし、無表情に呟く。
「少なくとも彼は絶対こんなことしない。人を惨めにさせるような、傷つけるようなことは彼は絶対やらないよ」
「……」
「別に彼が万が一僕をすきだったとしても、あんたに無理矢理力づくで抱かれるよりずっといい。彼に抱かれる方がずっとずーっとマシだろうね」
バシッと強く透さんに叩かれた。いつも叩かれるのよりずっと、何倍も痛い平手打ちだった。嫌味を言ったのでこうなることは大体分かっていたが、…痛い。
今ので口の中が切れた。いや、唇が切れたのかな。どちらか分からないが、血の味がする。相変わらず力の加減を知らない男だ。
「……凛人……てめえ…」
「…」
「俺の前で平気そうな顔して他の男の名前を口にし挙句その男の話をして、さらにその上俺を怒らせるようなことをワザと言ったな?!」
「!うっ」
透さんに首を締め付けられた。真上には恐ろしい顔をした男が僕を殺す勢いで見下ろしていた。殺される、…僕はこの人に。
「勘違いするな。俺はお前の生死すら握ってんだ、お前がほかの男の元に行くようになるようなら、お前の息の根を俺の手で止めてやるまでだ」
「……っ」
「まだ調子に乗るようならそれなりの覚悟をしろと言っているんだ。……怖かったか?」
しかし、すぐ首から手を離され、頭を優しく男の手に撫でられる。…っ、完全に舐められている。この男の手の上で遊ばれている。
それに対し、やめろ!と強い言葉で目の前の男を突き放せない自分自身の弱さに嘆き、僕は強くシーツを掴み小刻みに体を震わせるしかできない。
畜生…僕にはやっぱりどうすることも出来ないのか。体を震わせるしか、涙を流すことしか。目の前の憎たらしい男に、精一杯の嫌味を吐くことでしか抵抗できないのか。…くそう、……くそうっっ!!
「凛人、可愛いよ」
「…うっ、や、やめ、ろっ!」
嫌だ、僕はこんな人に抱かれたくなんてない…!僕から人を遠ざけ、…遠ざけ、僕をここにひとりで閉じ込めようとするあんたなんかに。平気で手を上げてくるあんたなんかに…。畜生っ…
〝でもしないさ。俺は、お前のことが大切だからな〟
…嘘つき……。
僕は透さんに突かれながら涙を流して泣いた。
僕を無理やり抱くことはないと言って、それに先週は悪かったとあんなに反省した様子で謝ってきていた。でも、…それも全部嘘だったのか。
「…うあっ、あっ」
支配されていく。
体が、どんどん透さんの形を覚えていっている。…嫌だ、感じたくないのに体は勝手に反応して、勝手に口から甘い声が出る。落ちていく、この人の手の内の中に…沈んでいってしまう。やめろ、やめろ…!!嫌だ!嫌なんだ!!
気持ちいい、痛い、でも気持ちいい…違う、すごく痛い……。この人が好きなわけはない、僕は、こんな人好きなわけがないのに…寧ろ大嫌いなのに!
…誰か助けて。…もういっそ、僕を殺してくれ。犬としての人生なんて、そんなの嫌だ!ずっとこんな人生を送っていくなんて、いやだ…。僕は一体、今、何をしているんだろう。僕は今、どこにいるんだろう。
分からないんだ、自分が生きているかどうかさえ。誰か僕に教えてくれ。僕は今どこにいるのかを、ここはどこなのかを。
まさか……僕は負けたのかな?この人に。もう一生このまま?そんな、まさかー
「あっぁ…っぁっ」
大きく熱い硬いモノに体を突かれ、揺さぶられるぼやけた視界の中で、腰を振る男が口端を上げるのが見えた。なんて悪い顔だろう、自分が今こんな人に抱かれているなんて。…なんで…どうして。こんなのおかしい、間違ってる。
「…っ…はなせ、……離せ…っ!」
最後の悪足掻きすら、目の前の男は笑ってみせる。僕は涙で男を映した瞳を濡らしながら多量の涙を頬に落としていった。
ああ……僕は…負けたんだ。この男に、この人に。…僕は、負けたんだ。もう、無理なんだ。何をしても。分かっていた、始めから。全て分かっていたことだった。それでも、…前を向いていたかったー
「お前は俺のものだ」
その瞬間、僕は暗い闇の底まで落ちていくのを感じた。
…助けて、誰か…。
僕は、ここにいる。誰か、助けて……たす、け……
……………
……
ーーー
ー
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