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56.雪うさぎ
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年が明けました。今日は20××年、1月1日だ。
お正月ということで、透さんも少しの間はお休みらしい。
それにしても冬の朝って寒いな。
「あー…眠い」
ベッドに裸のまま布団をかけうつ伏せになる透さんが目を覚まして怪訝そうに言った。そりゃ朝方まであんなにエッチしてたら眠いのは当然だが…。
「お前今日何でそんなに起きるの早いんだよ」
ばさっと温かいセーターを頭から被り着る僕の方に顔を向けて、横たわったまま透さんが尋ねてくる。
「え?別に…。それに6時間は寝たし」
そう言いながらズボンを履いてジーとチャックをあげ透さんの方に顔を向けると、じっとベッドの上に頬杖をつきながらこちらを見つめてくる男の姿があった。
「な、…なんだよ?」
少々警戒しながら見返すと、透さんが、いや、と言う。
「お前は肌が白いなと思って見てただけだ」
「、…セクハラしないでもらえますか?」
朝から人の体をじろじろと舐めまわすように見てくるな。
「冗談、これがセクハラになるならお前に昨夜ーーーーしたこととか、ーーーーとかーーーとか、ーーーでーーーーして、ーーーしたことはどうなるんだよ」
……ほんと嫌いだ僕、この人…。
「痴漢発言してないであなたもさっさと起きたらどうですかっ?」
冷ややかな視線を男に送ると、僕は階下へと降りていった。ポットにお湯を沸かし、テレビのスイッチを入れた。
『そうですね、今年は少なくとも数日は雪が降る日が見られるかと。』
テレビでは天気予報について話していた。
…雪、か。僕は沸いたお湯をコップに入れ、ゴクリとココアを一口飲みながらテレビに映る映像を見る。
「おい、俺もコーヒー飲む」
食卓テーブルの席に着きゆっくりしていたら、寝癖のついた髪をした透さんがまだ眠そうにしながら降りてきた。僕は沸いたポットのお湯を透さんに渡す。
「あっつ」
コーヒーを口にした透さんがそう顔を歪めて言う。
テレビではまだ雪の話をしており、雪だるまと雪うさぎの映像が映った。懐かしいな。
「僕雪の遊び好きだったな、雪って綺麗でさ」
「はぁ?雪遊び?は、相変わらずお前はガキだな」
「誰だって雪遊びくらい小さい頃にしたことあるでしょっっ」
「俺はない」
ばっさりと真顔で言い切る男に、僕はどう反応すればいいのか分からない。この人の子ども時代がどんなものだったのかなんて、僕には想像もつきはしないからというのもあるが、頭の中にふと、あの言葉を思い出して。
〝俺は生憎生まれてこの方、誰にも人に愛されてこなかったもんでねぇ〟
…あれって結局どういう意味だったんだろう?
「なんだよ?急に黙って」
「え?あ、ううん。別に」
僕は透さんから少し目を逸らし、愛想笑いをしながらもう一度テレビに目を移した。
「ねえ透さん」
「あ?」
眉間にシワを寄せながら湯気の立つコーヒーを口にする透さんが僕の方に視線を向けた。僕は、笑顔を浮かべながら頭に両手をやって、うさぎの耳の形を表現しながらほんの少し頭を横に傾けた。
「雪うさぎ〜」
にこにこと笑いながらそのままの体勢で透さんを見る。
すると、透さんはコーヒーの入ったコップを右手に持ったまま一瞬驚いた顔をして僕を見て、それからじーとさも怪訝そうに見てきた。…な、なんだよその明らかにウザそうな目…。だってさっき、透さんが僕の肌の色が白いとか言ってきてたし、それで何となく…。
つまり、僕は今ボケてるんだよ!もうウザイならウザイでそれでいいし!何か言ってくれ!
すると、コトンと机の上にコップを置き、透さんが再びスっとした鋭い目つきで僕を見た。
「凛人…」
「…は、はい。」
一体何を言われるんだ…怖い。
透さんは至極真剣な顔をしてこう言った。
「……うさぎのコスプレ衣装買うか?」
ッッ!!!
って!この人一体僕に何をやらせる気なんだっっ!!そんな反応全く求めてないっての!!
全く予想していたものとは違う返しがきて、寧ろやらなければよかったと身の危険を感じ少しだけ後悔する僕だった。
ー
お正月が明けたら、僕は職探しだ。
透さんから色々と門限とか週3でいいとか、制限付きではあるが、…まあそこは目を瞑るしかない。多分しばらくそれで、僕がやっていけるかの様子を見るのかもしれない。もしくは、そんなこと全然考えてないのかもしれないけど…。
「凛人、見つけたぞ。お前に似合いそうなうさぎのコスプレ」
リビングの机の上でパソコンを置いてカチカチしながら透さん一体何してるのかと思ったら、そういうことか。新年から早々この人何やってるんだ…。
「透さんっっ、あの!言っとくけどっ僕絶対そんなコスプレなんかしないからねっっ!!」
「まあやってみるだけやれって。お前は可愛いから何でも似合うさ。お、これもいい、これもいいかもしれない」
「…ちょ…っと……ほんとに嫌だからね僕、…ねえ!!!」
しかし数日後、僕はこの変態悪魔男に理不尽な睨みを利かされ、力づくで無理矢理そのコスプレを着せさせられる羽目になった。
…僕って無力…、うっう…こんな恥ずかしい格好させられるなんて。
「何落ち込んでんだよ、お前すごく似合ってるぞそのうさぎの格好。かなりエロい」
「…だまれ…この…」
控えめに言ってこの人を今殴り飛ばしたい…。ド変態め…。
「他にも色々買ったんだ。今日も寝かせられないな、凛人」
ベッドの上に座っていた僕は、そう言ってやらしい顔をしてじりじりと近寄ってくる男にひい、と恐怖で体を震わせ涙目を浮かべながら後ずさる。こんなのあんまりだ…!
「凛人、俺に可愛く上目遣いできたらその格好辞めさせてやってもいいぞ」
「…!」
なんだそれ…でも上目遣いか。それくらいなら。
僕は目の前に膝立ちになって見下ろす男を首を傾けながらちら、と目を上にあげて見つめる。
こ、こんな感じかな…。
すると、突然透さんにベッドの上に体を倒された。…えぇっ!?なんで!
「可愛いよ。可愛くて抱きたくなった」
「…!?」
ニヤリと意地悪げに笑む男に僕はわなわなと体を震わせる。
「う、嘘ついたな!!」
「お前もほんとアホだな。そんなことでこの世の中渡り歩いて行けると思ってんのか。こんな格好させて何もしないまま脱がせるわけがないだろ」
至って真顔でそう話す男に、僕は口元をひきつかせる。…なんで軽く僕が説教食らってんのさ。
「あとミニスカポリスの格好とナースの格好と、メイドと学生服と」
「〜ふざけるなっ!」
誰かこの変態クソ男をどうにかしてくれっっ…!!!
「ていうか、絶対着ないからなっっ!!」
やっぱり今日にでもここから逃げ出そうかと6割くらい本気で考える僕だった。
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