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70.囚われの花
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……何かの、甘い花の匂いがした。
僕はゆっくりと目を開けた。目を開けた先に映る天井は、いつも見ている天井ではなかった。…頭がクラクラする…。僕は頭を軽く手で抑えながら、体を、いの間にか勝手に横たわっていたベッドの上に起こした。
ここは一体…。きょろきょろと辺りを見回す。
一般的な一人暮らしの部屋よりは少々広めだろうか…ほんの少し余裕のある広めの綺麗に磨かれているフローリングと、机の上に置かれている大きめの赤い花を見て、僕は後にゾクリと顔を青くする。
…そうだ僕、さっき烏堂さんに…。あれは多分睡眠薬だった…。
「起きたのかい?」
「…!」
「随分寝てたから、ちょっと心配したよ。大分疲れていたみたいだね」
ドアの向こうから現れたのは、こちらを見てやってくる烏堂さんだった。
「まって」
近づく烏堂さんから逃れようと、僕はベッドからすぐに体を降ろそうとして、烏堂さんに腕を掴まれる。
「少し俺と話しをしようよ。そんなに急いで帰ろうとしなくてもさ」
「…っ…」
烏堂さんの掴む手は力強かった。僕は烏堂さんの手から逃れると、ベッドの上に座りながら後退り、目の前に立つ烏堂さんを見て威嚇の目を向けた。
「俺ほんとに君に嫌われちゃってるんだね。」
烏堂さんはそう瞳を伏せて話しながら、する…と僕の頬に撫でるように手で触れた。
「っ触るな……!」
僕は烏堂さんの手をはじいた。体を震わせながら依然として男を見て睨みつけると、烏堂さんはそんな僕を見て、困ったなぁと言ってベッドの上に腰掛ける。
「君はすっかりあの男にコントロールされちゃって」
あの男……透さんのことか…?
「何があったのか知らないけど、君とあの男は不釣り合いだよ。」
…!
「君とあの男では恐らく何もかもが違うだろう。ひと目見ただけで分かるさ」
「…」
「凛人君、俺は君に何も強制して何かをしようってわけじゃないんだよ。ただ心配なんだ、あんな男の元にいる君を俺は放っておけない。」
烏堂さんはそう言って、再び固まる僕の方に手を伸ばし、僕の後ろ髪を触った。
「いい加減目を覚ますんだ、凛人君。君はあの男に洗脳されてるんだ」
……っっ!
それは自分の図星を突くように、僕の胸に強く突き刺さった。せん……のう………。
そうだ。今までだってずっと何度だって、僕はそう思ってきた。そうなんじゃないかって、…これは洗脳なんじゃないか、って…。
烏堂さんが表情を暗くする抵抗のない僕の体をベッドの上にゆっくり押し倒し、薄ら微笑む。
「凛人君、大丈夫だ。俺が君を救ってあげる」
「…」
「じっとして。君はあの男のものなんかじゃないよ」
そう言って、烏堂さんの顔が徐々に横たわる僕に近づいてきた。僕にはわからなかった。何が真実なのか、何が本当なのか、何も…。何も……。
「…あっっ」
“…凛人…”
首筋から鎖骨へとぬるっとした舌が這い、そのうちつきん、とした鋭い痛みを感じて僕は顔を歪ませた。
「……美しい、まるで赤い花が咲いたようだよ」
烏堂さんが僕を上から見下ろして、どこか感嘆するような表情と声で言った。…分からない、自分が今何をされてるのかも、自分がどうしたいのかも。
「凛人君、まだ薬が効いて眠たい?ごめんね、でも仕方なかったんだよ。君が大人しくしてればすぐ終わるからね」
僕は烏堂さんに服のボタンを全て外されるのが分かった。
「…本当に綺麗だね。君は」
烏堂さんの手が、胸から下腹部へと手を下に下ろしていきながら僕の体を撫でる。
「いつもお尻にあの男のモノを入れられてるの?」
「…!」
烏堂さんが僕の耳元で囁きながら手で僕のお尻をズボン越しに掴む。……僕……今…何やってるんだ……?
烏堂さんの手が僕のお尻を若干浮かせ、お尻の割れ目を指でいやらしくなぞる。
…いや………いやだ、…気持ち悪い……。
「…いやっっ!」
僕は手を男の顔に向かって振り上げる。しかし、すぐに烏堂さんの手に捕まえられてしまう。
「本当に…すっかり飼い慣らされちゃって…」
「……」
「君はあの男の思うがままにされてる。目を覚ませ。毎日毎日ここをあの男のモノで突かれて…君はそれに涎を垂れ流して、ココもはしたなく勃起させて、あの男に触れられただけで犬のように君は発情して……そのうち体の奥にあの男のものが、君のナカに躊躇なく吐き出されて…」
「ーーやめろ……ッッ…!!!」
僕は両手で自分の顔を覆いながら唇を噛み、体を震わせた。
「…凛人君」
「……やめて……、……やめてくれ……」
僕は手で覆った顔の下から、涙を流した。
「凛人君、俺は君を」
「触るなっっ!!!」
僕の体に触れる烏堂さんの手をはじき、僕は体をベッドの上に起こし、烏堂さんを睨んだ。
「……なんで分からないんだ。君はあの男の良いようなオモチャだ。都合のいい物でしかない。なぜ分からないんだっ?!」
「違うっ!!!」
違う、ちがう……、絶対に違う…っ。
「…本当に洗脳ってやつは怖いね。なら俺が無理矢理目を覚まさせてあげるだけだなっ!」
…!!
烏堂さんに両腕を強く掴まれ、僕は再び体をベッドの上に押し倒される。そしてすぐ、前のはだけた状態の僕の素肌に烏堂さんの唇と舌が這って、僕はそれに目を大きく開いて体を震わせる。
いや、……いやだ、
……いやだ…いやだ…!!!
これは洗脳か…?この人の言うとおり洗脳されてるから、僕はこんなことを思うのか?分からない…分からない……。でも……
違う……、これは…あの人の唇じゃない…。
這っているのは…透さんの舌じゃない……
…ちがう、違うっっ…!これは…
…あの人のものじゃない……っ…
透さんのものじゃない………っっ!!!
「っ!!」
僕は強く眉を寄せ、曲げた足で上にいる男のお腹を蹴る。烏堂さんの手が掴んでいた僕の腕から離れ、ベッドの上でお腹を抑えて咳き込む。
「……ま…、…待ってくれっ!」
後ろからかけられる烏堂さんの声を無視して僕は一目散に出口に向かって駆けた。
「!凛人君駄目だ…!外はまだ雨が…っ、それにここから君の家までは遠い!歩いてなんて行けない、よせ……!」
僕は目元に流れる涙を拭いながら烏堂さんの家を迷うことなく走って飛び出した。
降りしきる雨の中を右も左も分からぬまま、僕はただがむしゃらに走り抜けていった。
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