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83.赤く染まる(透side)
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今日はいつもより一段と強い風が俺の体に当たる。空は曇天。
俺は海沿いの肌寒い砂利道をコートを羽織って歩き、ギィと音を立て倉庫のドアを開けた。
「よお、数日ぶりだな」
いつの日かに見たような光景と同じ、手を後ろに拘束され地べたに座る男の姿を見て、俺は口端を上げながら男の前に立つ。
「…!あ…あんたは…一体」
男が青ざめた顔をしてこちらを少し体を震わせながら見上げる。俺は男の背後に立つ奴らに下がれ、と言い後ろに下がらせる。
俺はそれからその場に屈み、男の顎を掴んで顔を自分の方へと向かせ笑った。
「一体俺は何だって?」
「…っ…」
「さあな。人間さ、人間!お前と同じ一個人のヒトだよ」
俺はそう言いその場に立ち上がり膝を立て座る男の周りをコツコツと足音を立てて歩く。さて、一体どうしてやろうか…。凛人に手を出したからには、このままここでこの男の息の根を止めてやりたいところだが…人を殺すと後々面倒だ。それに、
『透さん』
……凛人とこれからも生きていく為には、流石にまずいか。あいつも、こいつを殺したりなんてしたらあとからどうのこうのと俺に喚いてきそうだし。
まあいい、要は殺さなければいいんだ。方法はいくらでもあるさ。
「…っな、何を」
ぐっと男の胸ぐらを掴むと、驚いた顔をして男が近い俺の顔を見る。
「お前、凛人に惚れてるな。」
「…!」
「俺の目がないところであいつに手を出したな。あいつもアホだからな、バイトとはいえ上司であるお前に強く抵抗出来なかったんだろうよ。さっさと俺に言えばいいものを、頑なに口を閉ざして」
「…」
「最初からあいつ狙いだったんだろう?上下関係を利用して拒めないあいつにつけ入るのは楽しかったか?え?」
「…やめてくれ」
瞳を逸らし唇を噛む男の顔を見て、俺は眉を吊り上げる。
「お前に分かるかよ、お前に騙され、お前のところでまんまと働きたいと言ったあいつの気持ちが!」
「…!」
「あいつは馬鹿さ、大馬鹿者だよ。…お前は、あいつの思いを、ほんの数日で踏みにじりやがったんだッ!!お前はあいつを裏切り、そんなあいつを信じようとした俺をも裏切った!」
凛人に…よくも手を出したな……
よくも、よくも凛人に。許せない、…許せない…
「あいつに、変な薬まで飲ませやがって!!」
「ぅぐっっっ!」
俺は男の首を手で締める。目の前が怒りで赤く染まる。やっぱり殺してやる、…殺してやる……よくも俺の凛人に…、凛人の体に汚い手で触りやがって…!
〝…怖い…透さん、…透さん助けて…っ!、…ぁあっ…いや……お願い……もうやめて……っ…〟
「……っ」
男の首を締める手に力をさらに込めながら俺はギリギリと強く奥歯を噛んだ。
…こんな男ひとりいなくなったって誰も悲しまない。そうだ、やっぱりここで殺そう。何を躊躇しているんだ俺は。凛人を裏切り、この俺を怒らせた罪として、…こいつを殺す!!殺す!殺す!!
殺してやる!!!!
「…ぅ…う…っ!」
「…」
「…ぅ…」
…
『…透さん』
…!!
『…透さん、こんなこと間違ってる。』
…り……凛…人……っ…?
頭の中で突然、凛人の悲しげに俺を見つめる顔が思い浮かぶ。
『あなたが本当に優しい人だったら、…僕はあなたを……受け入れられたかもしれないのに』
『あんたはすごい奴なのかもしれないけどっ、あんた間違ってるもん!何でこれがおかしいって分からないんだよ…!』
『…絶対透さんの思い通りにはさせない。僕は、僕はぜったい……』
……や……やめろ…、凛人…やめろ…!!
…うるさい、…うるさい!!凛人!!黙れ…!!!黙れ…!!
黙れーーーー…!!!!!
俺は男の首を絞めていた力を緩め、頭から凛人の顔を消し去る。
畜生っ、俺どうしちまったんだ、凛人の顔なんか、言葉なんか、突然頭に思い出して…。
俺はスっとその場に立ち上がり、げほげほっと咳き込む男を見下げた。
…だが凛人、お前に俺が止められるか?お前に俺を、止めさせることができるのか?…この俺を。…お前に!!!
「…痛めつけとくか。早々に殺す必要は無いし」
青い顔をしてガタガタと体を震わせる男に向かって、俺はニヤリと口端を上げた。
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