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90.男と過ごす休日
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今日は、土曜日。
僕と、仕事がお休みである透さんは、街までお出かけに来ていた。
確か今はまだ2月なので、外はまだまだ寒いようだ。
「凛人、これお前に似合いそうだな」
ふと、隣を歩いていた透さんがショーウィンドウに飾られた純白のウェディングドレスを見て話しかけてくる。
「…冗談やめてよ。僕男だよ」
「何を言うんだ、性別上は男だろうがお前のその見た目なら全く変じゃないさ。世のノーマルな男共だってこれを着たお前を見て瞬殺さ」
「…」
…放っておこう。一々この人の話に真面目に耳を傾けていたら僕の体力が持たない。
「なんだよ、つれないな」
ひとりでさっさか歩いていると、後ろから透さんがすぐについてきて言った。
「実際結婚はその内どのみちするんだし、衣装見といて損は無いんだぜ」
…!?な、何だって…っ?!
「っちょ、ちょっとまってっ、結婚…なんて僕あなたとしないよ…!」
何ですることになってるのっ?!
「はあ?だってお前俺のものになるって言っただろ」
「えっ?」
「一生俺のものですってそう言ったろ」
……まって、…もしかしてあれって、そういう意味だったのっ!?
「まさか意味もなくあんな言葉をお前に俺が言わせただけとでも思ってたのか?」
「…っ」
「本当にアホだな、お前は」
ショックを受ける僕を置いて前を歩いていく男を見て僕はわなわなと体を震わせる。
…き、聞いてない…!!本当にそんな話全然聞いてないってばっ!!てゆうかしないし!絶対っ、誓わないよ僕っ!
「…ってあれ、透さんどこ行った?」
僕の傍から離れるなんて珍しい…そう思いながら辺りを探していたら、ふと女子高生だろう子たちに捕まっている透さんの姿を発見した。
うわっ…な、なんだあの男!ま、まさか女子高生に、ナンパされてるのかっ?!…嘘だろう!
いつもと何ら変わらない涼しい顔をした透さんの腕を、明らかに学生服を着た女の子が一方的に掴んで引き止めているようだ。…なんて男なんだ、見た目だけでこうも寄ってくるのか…。そりゃあね、僕はあの人みたいに地位もないし背もないしおまけに無職だしね!
花屋で働いてたけど1ヶ月も経たないうちに辞めちゃったから給料入ってこなかったし、つまり今も相変わらず所持金0だし…、うう…やっぱり僕も何かして働かなきゃ…だってもう22なんだよ。僕になにかできることって、何かないかな。何か、簡単そうなこと…
すると、
「どうも〜こんにちはっ!」
突然黒い革ジャンを着た茶髪のいかにもチャラそうな見た目の男の人に笑顔で話しかけられた。…だ、誰…。僕はビク、と体を後ろに下げながら警戒した目で男を見る。
「そんなに警戒しないで、悪いお兄さんじゃないよ〜」
そう前置きしてくるところが逆にめちゃくちゃ怪しいっっ!
「君、大学生さん?」
「…僕は社会人です。」
働いてないけど学生でもないし…。
「え〜!嘘、見えない全然!僕ってことは男の子なんだ?」
「はあ、まあ…そうですけど」
「そっか〜、ずばり単刀直入に聞くけど、モデルって仕事興味無い?」
「え?」
ピラピラとチラシを目の前にチラつかせながらチャラい茶髪の男が満面の笑みで話してくる。
「ちょっと1回写真撮らせてくれるだけでお金たんまり稼げるよ。副業にどう?」
お金…。
モデル、か…どんなことするんだろ。ポーズとればいいのかな。でもモデルなんて仕事僕にできるか…。いや、そもそも透さんが許してくれないんじゃ……?
「あっっ」
「とりあえず事務所近いからそこまで行こっか」
じっと黙っていると男に腕をぐいと引っ張られた。ま、まって、僕はまだするとは…っ!
「あのっ、待ってくださいっっ!僕…するなんて一言も」
慌てて男に引っ張られどこかに連れて行こうとされる手の力に体をその場に踏ん張って僕は言い張る。
「いいからいいから。すぐそこだから」
「…!」
男が一瞬妙な顔をして僕を見ながら言ったのに気づいた。…何かちがう。この人、一体何…っ?
「…は、…はーなーせーっっ!」
ぐぐぐ、と男の手に強く引っ張られるのに必死に抵抗していると、
「おい」
「!」
傍にいつの間にかさっきまで離れていた場所にいた透さんがいた。
「なんだ?お前は」
「……はあ?……!…だ、誰だあんたは、……は、もしかしてこの子の保護者か何かかっ?」
振り向き、後ろに立っていた透さんを見て途端に慌てるようにしてそう言った茶髪の男の顔に向かって、間髪入れずに透さんの拳がヒットした。
「あ…っ!」
僕はそれを見て思わず声を上げる。
「ふざけんな。何が保護者だ」
その場にうずくまり顔を抑えて表情を歪める男を見ながら、透さんが傍にいた僕の肩を抱く。
「断りもなく勝手に人のものに触ってんじゃねえ」
隣で恐ろしい表情を浮かべた男の目が、地べたに尻もちをつく男に向かって向けられた。
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