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93.抗う
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ーーー
…
夢を見ていた。
それは、昔の頃の自分の夢だった。
『凛人、また数学のテストの点数クラス1位だったの?すごいじゃない、お母さんとっても嬉しいわ』
『成績だけじゃないよ、凛人は他の誰より心も優しく綺麗で、父さんたちは君のことを本当に心から大切に思っているよ』
『…ありがとう。お父さん、お母さん…』
僕は微笑む両親に向かって涙ぐんで笑いながら言う。僕にとって、両親はまさに命そのものだった。
僕は元々孤児で、1人だった僕を貰い受けてくれたのが僕の今の両親となった、2人の仲のいいとある穏やかな夫婦だったのだ。
僕は心に決めていた。見ず知らずの僕を暖かく迎え入れてくれたこの人たちを、…僕の両親を、必ず幸せにしたいと。必ず恩を返したいと。
しかし大学に入学してすぐ、いつものスーパーまで車で寄っていた両親が交通事故に遭いこの世から命を絶った。僕はその瞬間僕として、この世を生きる意味が無くなったのだ。
それでも生きようと思った。悲しかったけど、後を追えばあの心優しい両親は悲しむと思った。…でも限界だった。
僕は社会という荒波にもまれ日々気力を失っていった。なんの為に存在しているのかも分からない。けれどあの二人のことを一瞬でも思い出せば涙を流してしまうから僕は体と心をボロボロにさせながらでも働くのだ。
しかしそれも持って2年が限界だった。僕は街にある大きな橋の上から見下げると見える真っ暗闇の水底に吸い寄せられるように体を落とそうとした。
何もかも疲れ果てていた。
もう、この世にいる意味は無い…。僕のことを、僕を求めている人なんて、僕を愛してくれる人なんて、僕を必要としてくれている人なんて、…もうどこにもいないのだから。
…
『…どうせ死ぬんだろ。なら、俺の奴隷にでもなれ』
……こわい…この人は、僕を支配しようとしている…。逃げなきゃ、逃げなきゃ……。
『お前は俺のものだ。』
『お前のことなんて、いつどこでも殺すことだってできるし、犯すことだってできる』
……どうしてそんなに酷いことばかり言うの、
…やめて、もうやめて…!僕を縛らないで!僕を、ここからいい加減解放して…!
男に首輪を嵌められる。そうして男に好き勝手させられた僕は、後に男に首を絞められる。
『降伏しろ、俺に』
僕は男の言葉に抗う。出もしない声を出し、眉を悩めかしく寄せ、額に汗を吹き出しながら、僕は悪魔のような男に向かって呟くのだ。
『……間違ってる…こんなこ、と、間違ってる…』
『……!』
男の手が緩む。僕はその隙に逃げ出そうとするが、すぐに男の手に捕まる。
『ああっっ!』
『俺から逃げられると思ってるのか。お前は俺のものなんだよ、なぜ分からない?いい加減分かれ、理解しろ!』
『ちがう、僕は…あなたのものじゃない…。』
僕は、僕は…あの日、確かにこの世から姿を消そうとした。けれどできなかったんだ。それはあなたが、
『……凛人』
…あなたが、僕を…、僕のことを……ーーー
ー
浅い眠りから目を覚ました僕は、ハッとして辺りを見回した。どうやらここは、あの躾部屋のようだ。そうだ、僕さっきまであの人に無理やり力づくで抱かれてたんだ。
両手首は紐のようなもので拘束され、ベッドに括り付けられている。服を乱され男に犯された僕はベッドの上に仰向けに横たわりながらお尻から男に吐き出された液をだらりと垂れ流す。
少しするとガチャ、と部屋のドアが開くのがわかり、僕はそちらを向く。そこには拘束された僕を見てニヤリとする男の姿があった。
「やっぱりお前はそういう姿が似合う。犬のような下品な扱いをされているお前の姿を見ているだけでまたヤリたくなっちまう。」
クイ、と僕の顎を手に持ち、悪い笑みで話しかけてくる男に僕は顔を横に逸らす。
「…一々盛らないでよ、この変態男っ。僕にこれ以上近づくな!」
「ほう?お前は威嚇だけは一丁前だな。…まだ俺の嫁になるという自覚が足りないのか。」
そう言って再び伸びてくる手を僕は歯で噛んで阻止する。僕は絶対に、降伏なんてしない…!
「たく…聞き分けの無いやつだな」
透さんが僕に噛まれた手を抑えながら静かに僕の方にスっと視線を向けてくる。
ビク
せめてこの手の拘束を外せれば…。
そう考えているうちにも僕の上に透さんがやってきて、体を触り出す。
「や……やめ」
そう言葉を発しようとした時、何かが手元でゴソゴソと動く気配を感じた。…?
不思議に思い首を捻らせ上を見ると、タマが拘束された僕の手首の紐をガジガジと口にくわえて噛んでいた。
透さんは僕の体に埋めていた顔を上げ、横たわる僕を見て言った。
「さあ凛人、どうだ。そろそろ観念する気になったか?」
「…」
「俺だってこんな酷い扱いお前にしたくないんだぜ。もう俺に歯向かわないって言うならやめてやろう。どんな話だろうと、お前に俺のすることに口は出させない」
鋭い瞳…。
…一時、この人が変わってきていると思った。良い方向に向かっていると。
でも、今の目の前にいるこの人はあの時より前に戻ってしまった。傲慢で自分勝手な恐ろしい悪魔に…。
「歯向かうなって…それがあなたの本心?」
「は…?」
「…だって透さん、言ってたよねあの日。僕を意思のない返事するだけの人形にしたいわけじゃないって」
「…」
「透さんは僕が大人しく何でも言う事聞く人形になってもいいの?」
「…何が言いたい」
「本当は、…僕に抗い続けてほしいんじゃないの?」
「…!…何だって」
タマが解いてくれた手の拘束を男に気づかれないようにして僕は口を開く。
「透さんのしてることは間違ってる、本当に僕を好きなら…こんなこと絶対できないはずだよ」
すると透さんが狼狽えた表情をして僕を見る。
「だ…黙れ…」
「透さん間違ってる……愛してると言うなら、僕にこんなふうに、酷いことしないで!」
突如透さんの手が僕に伸びる。それに驚き目を瞑った時、みゃあっという鳴き声を耳にする。見れば、透さんに向かって恐らく飛びかかったのだろうタマが、透さんの手に捕まえられていた。
「この…っ」
「!や、やめてっ!タマを放してっ!」
青い顔をして慌てて僕がそう言うと、透さんの手からタマがベッドの上に投げられる。僕はすかさずタマを胸に抱えると、素早くベッドから降りた。
「…!凛人!!まてっ!!!」
僕はタマを胸に抱いて部屋を飛び出した。
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