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96.透さんの過去
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「おい!!朔夜!!!」
突然バン!と家のドアが開かれる音と共に仕事から夜帰ってきた透さんの大きな怒声が部屋中に響きわたる。
しかし、リビングのソファに座りくつろいでいた自称透さんの友人だという“ 朔夜さん”と言う人は、透さんの方を振り向いてにこやかな顔をして言った。
「おお、透。おかえり〜♪」
「何がおかえりだっ!!!この!仕事サボって勝手に人の家に上がってんじゃねえ!」
どんどんという音が聞こえるかのように朔夜さんの元まで足を進ませる恐ろしく怒った顔をした透さんの様子を見て、傍にいた僕は慌てて透さんに駆け寄って言う。
「と、透さん、まって…!そんな人を殺すみたいな顔して、こんなところで殺人なんて起こさないでよっっ!?」
「!凛人…!お前もお前だ!!」
ひえっ…
「俺以外の男を昼間から簡単に家に入れるなんてまた1から躾が必要みたいだな!ええ!?俺を舐めてるのかっ!この馬鹿!」
「…!そ、そんな言い方、しなくてもいいじゃんっ!透さんのこと会社の上司って言ってたし…それで」
「そう言われてすぐ家にあげるところが馬鹿だと言ってるんだ!!嘘をついてる可能性だってあるんだぞ!この調子が続くようならまた首輪を嵌めさせてやるぞ!!」
「や、やだ…!」
「口答えするな!俺に向かって!!」
キッとした目を向けて負けじと透さんと睨み合っていると、傍でくっくっと笑う声が聞こえた。…え。
振り向けば、朔夜さんが口元を必死に抑えるようにして可笑しそうに笑っていた。
「いや、びっくりしたなぁ〜。透と言い合える人間がいること自体に驚いた、あ〜良いものを見させてもらった」
「お前っっ」
透さんは僕から離れ、朔夜さんの元まで行くと何やら彼に向かってガミガミと言っていた。
でも、手を出すみたいなことはしてないようだ。てことは、やっぱりこの2人は友達、なんだ。
「透さん、朔夜さん、僕あっちにいるから2人で話していいよ。色々話すことあるでしょ、友達なんだし」
にこにことして笑って言うと、誰と誰が友達だ!!と透さんの声が飛んできた。
え?
目を点にして怒った顔をする透さんを見る。
「だって…2人は仲良しなんじゃ」
「ふざけんな!!友達だぁ?俺に友達なんてくだらねえものはいねえんだよ!舐めたこと言ってるとシバくぞ!」
そんな悲しいこと、自ら大声で言わなくても…。
じゃあこの2人は一体何のつながり…?会社の上司と部下ってなだけ?でもそれだけかな、下の名前で呼んでるほどの仲なのに…。
「つーかお前、こいつと今まで何してたんだよ」
首を傾げているとム、と眉を寄せた顔をした透さんに問われる。
「え?」
「変なことしてたんじゃないだろうな?2人きりで」
何言ってるんだろうな、この人は…。
「…そんなわけないでしょ、普通に話してただけ」
「何をこいつと話すことがあるんだよ、凛人、俺以外の奴と親しくなる必要はお前には無いんだぞ」
透さんに向かって再び反論しようとする僕の前に、スっと突然立ち上がった朔夜さんの手が現れる。僕はちら、と目線を朔夜さんの方に向ける透さんを見る。
「透、お前のこと聞かれてたんだ」
「…は?」
「お前何もこの子に話してないんだろ。何故だ、恋仲になってるなら愛する人にくらい全部さらけ出せばいいじゃないか」
こ、恋仲…!?
「ま、まままって…っ!僕達恋仲なんかじゃ…っ」
「え?そうなの?」
「は、はい…」
すると、朔夜さんが声を上げて笑い出す。…この人一体何なのさっ!ツボがわからないっ!
「嘘だろう、ずーっと何年も想ってるのにまだ片思いなのか透っ!くっっ、駄目だ、腹痛い」
「…お前…」
透さんはバカ笑いをする朔夜さんを見て怒りで体を震わせている。…ど、どうしよう!このままじゃ朔夜さんがボコボコにされてしまうっ!
それにしても、また何年も想ってるって…。どういうこと?透さん、僕のこともっと前から知ってたの…?
「お前だろうともう許さねえ!調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
「あ!」
ふと振り返ってみた時には透さんが朔夜さんに向かって拳を振りかざしていた。……当たる!
僕は思わず目を瞑る。そっとしばらくして目を開けると、透さんの放った拳を手で受け止める朔夜さんの姿があった。
「やめろ」
そう言って朔夜さんは透さんの手を放した。
…うそ、透さんの拳を止めた…。僕は2人の姿を少々固唾を飲んで見つめる。
「俺はお前とやり合うつもりはないぞ、もう族から抜けてお前だって何年も経ってるだろ。なのに未だにこんな調子じゃ…」
「黙れ!!」
と、どこか焦ったように透さんが朔夜さんに向かって言う。
族…?僕は朔夜さんの話に顔を上げる。
「もしかして、お前この子にその話してなかったのか?」
透さんは黙ったままだった。
「何でだよ、話せばいいじゃないかよ。暴走族なんて若き頃の男なら誰でも憧れるもんだぜ」
「暴走族…?って、あの暴走族?」
尋ねれば、そうだよ。と朔夜さんがにこやかに言う。
「透はそこの総長してたんだよ」
「えっっ」
「族のトップだよ。それくらい強かったってこと」
えぇぇ…ーーーっ!
何となくそう予想できる感じの出来事はこれまであったし、そんなに驚かないけど…やっぱりそうだったんだ。まさか総長、とまでは思わなかったけど…。
「どう?引いた?」
「えっ、いえ別に…何となく分かってましたし」
傍で透さんがガタンっと音を立てて食卓の席に腰を下ろす。なんだか、すごく不機嫌そうだ。
「おい凛人、他所の男と親しげに話すな」
「他所の男って…この人透さんの知り合いなんでしょ?」
「だから何だ、そいつとお前は何の関係もないだろ。」
「おいおいよせよ、確かにこの子は可愛いがわざわざお前のお気に入りに手を出すほど俺も理性無いわけじゃないんだからさ。」
透さんがちら、と仲裁に入るようにして言う朔夜さんに向かって目を向ける。
「朔夜…凛人が男に絡まれているところを助けた話は聞いた。」
「ああ、お礼でもしてくれるのか?」
「…調子に乗るなと言ってる。」
そう言う透さんからは、全身から漂う威圧のようなオーラが朔夜さんに向かって放たれている。
「必要以上にこいつに関わることは許さない。お前だろうと許さない」
ゾクリ、透さんの表情に僕は恐怖しながら2人の姿を見つめた。
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