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99.目覚めの朝
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次の日の朝、チュンチュンと鳴く鳥のさえずりを聞きながら僕は目を覚ました。
「ミャ〜」
傍にはタマが目を細くしながら眠そうにしてこちらを向いて座っていた。透さんは僕が眠っている間に仕事に行ったようだ。
「タマ、おはよ〜って、なんだその顔」
ぶっと吹き出す僕に向かってタマは心なしか不機嫌そうに鳴いている。
「そう言えば昨日はあんまり構ってやれなかったよな。それで怒ってるのか?」
「ミャ〜」
尻尾を振りながら擦り寄ってくるタマ。僕はベッドの上に座りながらタマの体を持ち上げ自分の胸に抱いた。
「よしよし、ごめんな。昨日はなかなか…あの人が解放してくれなくって」
そう話しながら僕はぽっと頬を赤らめる。
「あっ、あの人はっ…僕を性奴隷としてしか見てないんだっっ、だからあんなに僕をモノ扱いして自分で好き勝手なことばっかして…」
…なんて。
ほんとは違う。
あの人は自分勝手で自己中で強引だ。だけど、いつもいつもそうなわけじゃない。少なくとも昨日は…僕のことを配慮しながらの行為だった、…気がする。あの人の表情とか体に触れられる優しさで分かる。
だけど僕、何であんなことされて気持ちいい…なんて思ったんだろ。昨日だけじゃない。
僕はこれまで幾度となく数えきれないほどあの人と体を重ねてきた。望まない行為も多々あった、しかし心の底から嫌だ、と思ったことは果たしてこれまでただ1度でもあっただろうか?
「タマ…もしかして僕、やっぱりあの人のこと好きなのかな…」
「ミャ〜」
タマの鼻先をかりかりと指で弄りながら呟く。タマは嫌そうに僕から顔を背け、長い尻尾をぶんっと僕に向かって振ってきた。
「わっっなんだよもう〜っ」
ぷりぷりとした様子を見せるタマを僕はむっとした表情で見つめる。
昨日、朔夜さんとほんの少しだけ透さんの話をしていたことを頭に思い出す。
……
『…透さんってどうしてあんな風になったんですか?』
『え?』
『朔夜さんなら何か知ってるかなって』
朔夜さんは顎に手を当てながらうーん、と唸っていた。
『…どうかな。俺と透が知り合ったの高校の時だったから。知り合った時、既に透はああだったから』
『え…』
『なんて言うか、16歳にして全てを悟ってるって感じの雰囲気というか落ち着き方、だったかな。』
『落ち着き方…て、落ち着いてたってことですか?透さんが?』
『ああ、もちろん暴れ回ってもいた。落ち着いてたって言うのは要するにあいつにとってここに怖いものは何一つない、そういう意味の落ち着き方って意味。並の高校生の落ち着きじゃなかったよ、ありゃ』
『…』
『なんて言うかな……』
朔夜さんはそう言って顎を触る手にほんの少し力を込めて言った。
『…もうこれ以上の地獄を知らない…。何もかもに動じない透を見ていたら、そんな気がした』
地獄…?
『あいつは出会った時から何かが欠けていた。人としての、…何かが。』
……
僕はゆっくりと、タマの体を手で優しく撫でた。
タマは僕の手の感触に気持ちよさげに目をウトウトとし始めている。
…人としての何か、か。
〝愛してる…〟
僕は頭に透さんの顔を思い浮かべ、静かに目を瞑った。…透さんに欠けているもの。それは…
……愛情。
人に、何の見返りもなく、無償に愛されるということ。僕の思い違いでなければ恐らく、きっと…。
透さんは愛されて来なかった、のようなことを前に言っていた。だからあんな、人の形をした悪魔のような性格になってしまったのかな。…でも、あの人は悪魔じゃないよ。僕知ってる。あの人が、悪魔じゃないって…。
優しい手をすることも、僕知ってる。透さんが、ほんとは何かを抱えてることも、僕…知ってる。
知ってるんだ。
だけど僕がそれを暴き出すその前に僕はあの人に捕らえられねじ伏せられてしまう。…何故?僕はあなたを知りたいのに。…救いたい、だけなのに。
ハッ…
……救いたい…?
僕はベッドに預けていた体を起こし目を開いた。
…そうか、僕はずっとあの人のことを救いたかったんだ。僕、……やっと分かった。
ああ…やっと、やっと分かった……、
…透さん……
僕は、…あの人を、助けたいんだ…ーーーー。
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