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19.洗脳
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最近、家にいて暇な僕は新しいゲームを始めた。
スマホで出来るMMOアプリゲームというやつだ。簡単に説明すると、オンライン上の人達とチャットで会話しつつ魔物を狩ったり、何かと協力し合って遊べるゲームというやつ。
こういうのあんまりしたことないけど…暇つぶしにはなるかな。うん?
ゲーム画面を閉じようとした時同じギルド内の人からメッセージが来ていることを示す赤いマークに気づいた。開いてみると、
[リンさんこんにちは〜、さっきはチーム組んでくれてありがとう!]
との内容だった。この人はぽん太というユーザ名の人で、そこそこギルド内でも、ゲーム内でも強めの人だ。まだあんまり話したことの無い人だったが、文面から優しそうな気さくそうな人だと分かって少し嬉しかった。
(うんと、こちらこそありがとうございます(*^^*)…でいいかな?)
返信すると、またぽん太さんから返ってきた。
[こちらこそ^^、またね!]
…なんて律儀な人〜〜。余計なことは何も言わずお礼だけ伝えてくるなんてネットには類を見ないいい人だなぁ絶対!(※たまに文面の感じが女だと間違われてセクハラを幾度となく受けてきたから)
この人きっと現実でもいい人なんだろうなぁ、何してる人なんだろ?そこそこ課金もしてるから、社会人の人なんだろうけど。まあこれ以上彼と話すことはないか。
僕はベッドから起き上がってう〜んと伸びをした。
ああ〜…にしても最近ヒモ感が増したなぁ…僕。完全にヒモなんだろうけど…。だってあの人バイトしたいって言ってるのに許可してくれないんだもん。それに…
『お前は俺が貰ってやる。だから将来の心配なんかしなくていいんだ。俺がいるんだから』
あ…っあんなこと、真顔で言ってくるんだもん…!あの人!ほんと何考えてんのっ?あの人!僕を愛してるとも言っていた。あれって本音?それとも僕を飼い慣らす為のマインドコントロールなのかな。ああもう、あの人の言うことを素直に信じられない。絶対に嘘だ!と思う自分と、もしかしたら本音なのかも…と思う自分もいる。けれどもし本当だとして、僕は一体どう思っているんだろう?…もしあの人が僕を本当に好きだとしたら、僕は…
『……愛してるよ、凛人』
………ッッッ!
あ、あっ……、ありえないから……!!
やっぱり嘘だ!あの人が僕を上手くコントロールしようとしてテキトーに吐いた悪魔の囁きなんだ!そうに違いない…!騙されるな僕っ!
僕は部屋着に着替えて男が最近買ってくれたピンク色のエプロンを身につけて、せかせかと部屋の掃除をするのであった。
「ただいま」
「おかえりなさい」
不本意ではあるが、最近主婦としての行いもさまになった。週に数回だけだが、僕は夕飯の料理を作っている。
「あ、味、どう…?」
無言でパクパクと箸を進める男の様子を見ると、つい気になってそう尋ねてしまう。男に不味いと思われたって別にどうでもいいことなのに。
「ん?美味しいよ。」
…!
「ほ、ほんとに?」
「ああ、俺の嫁に相応しい。すげえ美味いってわけじゃないけど」
「…っ!」
「ますますお前のことが気に入っちまったぜ」
心臓が、どきどきする…。
僕ほんとにどうかしてる。この人が怖いと確かにそう思っているはずなのに、こうして普通にほんの少し笑って話しかけてくる彼を見ていると、本当のこの人はこうなんじゃないかなって錯覚をしてしまう。ほんとは、すごく優しい人なんじゃないかって…
ーーって!何を考えてるんだ僕は…!ないない!絶対ない!僕はこの人に今、監禁されてるようなもんなんだぞ…!この人のお嫁に、なんて冗談じゃないっ!
「僕、別にあなたの為に作ってるわけじゃないんでっ」
「ふーん。何でもいいよ、別に」
「……っ」
「おら、スマホ見せろ」
「えっ、あ…はい」
ス、と男にスマホを渡すと、男は即座にロック解除してスマホの画面を指でスライドさせていく。
「変なことはしてないみたいだな。」
「っ!…変なことって、何ですか」
「んー俺以外のやつと話してるとかー」
…警戒心の強い男め。
「そんなことしてないし!返してよ!」
バッとスマホを奪い取ると、男が一瞬ムッとした顔をしたので僕は構えたが、男はすぐ目を逸らした。
「してないんならいいさ」
「…だからそう言って」
「でも、俺以外のヤツに興味を示したらただじゃおかないぞ」
びく…
また、あの怖い目…。
「…ど、どうゆうこと…?興味…って」
「そのまんまだろ。俺以外の人間と話すのも会うのも全て許さない」
「…!そ、……そんなのめちゃくちゃだよ!僕は一生あなたとだけここで過ごしてろって言うのっ?」
「ああそうだな。なんだよ、不満か?」
「っ…」
何でそんなこと平気そうな顔して言えるの、あの日命を絶とうとした僕への罰なの…?もしかして、ここが僕の行き着いた世界なの…?
「……信じられないよ、あなたのことほんとは良い人なのかもって…僕」
「あっはっはっ〜でもやっぱりそうじゃなかった、か?」
「…!」
ほんとに、信じられないよ。こんな人、こんなに話が通じない人を、僕は知らない。僕を、ここで一生飼い殺す気だって言うの…。
「…もういいっ、気分悪いから自分の部屋に行く!」
「あ〜あ行けば、後で俺が拗ねたお前を慰めに行ってやるよ。」
「…っ、絶対来ないで…!来たら僕、あなたに何するか分からないよ!」
「あっはっはっ〜おー怖い怖い。今度こそ俺を殺そうってか?してみればいいさ、そして思い知るんだ。」
思い知る?一体…
「…何を…」
怒りか恐怖か分からない震えで口元を震わせながら男を振り返り見ると、椅子に座ったまま男はニヤッと静かに口端をあげた。
「俺を殺せない自分に気づくことになる。」
「……なに、…何を勝手なことをっ!」
「お前は無意識に徐々に俺を受け入れ始めてる。こんなに一緒に生活して、傍にいて、1番お前にとって身近にいる存在のこの俺に対してちょっとでも情がわかないわけがない。お前は俺を殺せないよ、お前はもう俺のことが…」
……!!
「や、やめろーー………っっっ!!!!」
僕は絶叫した。
僕は笑う男から逃れるように部屋に向かって走った。走って、走って、走って……。男に用意されたベッドの上で僕は体をうずくまらせながら声を上げて泣いた。何がこんなに悲しいのか分からなかったが、ただただ悔しくて、悲しかった。僕は奥歯を噛みドアの向こうを見つめた。…絶対、絶対に思い通りにさせない!あんな奴の傍で生涯を終えるなんて嫌だ…!僕は負けない、負けないぞ、絶対に!
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