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47.甘い夜
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「カップルばかり泊まってて空いてないと思ってたけど、一番高いところが空いてたぜ。凛人」
受付を済ませ、カードキーを手に持って口端を上げて近づいてくる男に僕は目を瞬かせる。
「い、一番高いとこって…いくらなの?」
落ち着いた音楽の流れる広いロビーで、僕はうろうろと視線を彷徨わせほんの少しだけ周りの視線を気にする。だって普通男女だよね、こういうの泊まるのってさ。
「あーそんなこと気にするなよ。野暮だぜ。そうだ、これをクリスマスプレゼントにしてやろう。どうだ?」
「……」
どうでもいいけど、機嫌良さそうだなぁ透さん…。さっきは別人みたいに怖い顔でさっきの人たち殴り倒してたくせに。一体いくつ顔があるんだか。
「ここだぜ」
広いエレベーターに乗り、最上階で降りた場所にあった部屋のドアを開けて、透さんが言った。
「……わあ」
部屋の中にある大きな窓に張りついて僕は外の景色を見ながら瞳を大きくさせた。さっき見たイルミネーションが見える。そっか、だからカップルがこのホテルに多いのか。…最上階の部屋なんて、初めてだ。こんな景色なのか。
「気に入ったか?」
いつの間にか隣に立っていた男に得意げな顔で尋ねられ、僕はドキッとしながら視線を逸らす。
「べ、別に…」
そう言いながら僕はきょろきょろと辺りを見回しながら部屋の巡回をする。一番高いとこって言ってたくらいだから相当すごいところなんだろうけど…確かに部屋自体がすごく広いもんね。あ、お風呂も広い…!これ泡風呂もできるのかな。
「広いな。後で一緒に風呂に入れるな」
「!!」
突然後ろから聞こえた透さんの声に僕はバッと勢いよく後ろに振り向く。
う、後ろから突然話しかけてくるなっ…!ていうかついてくるなよ…っ!
透さんから再び逃れて、僕はふと大きなベッドがどんと置いてあるそれを若干口元をひきつらせながら目に映した。確か前に透さんと来たホテルもダブルベッドだったよな…今回もかよ…。でもあの時は幸運にも何もされなかったんだけど、今日は……
「何だよそんなにベッドなんかじっと見つめて」
「…!」
透さんに肩に腕を回されて、僕はビクリとする。
「…心配しなくても今日はたくさん可愛がってやるぞ」
そう言って僕の首筋にちゅ、とキスをしてくる透さんにひっと僕は身の危険を感じて体を硬直させる。
つーか何の心配だよ……!
「ていうかっっ何でいきなりホテル…っ?イルミネーションを見に行くってことは聞いてたけど…」
透さんの腕から逃れ、べたっと壁に張り付く僕に向かって透さんが一瞬睨みを利かせながら踵を返す。
「別に泊まりたいと思ったからだよ。」
珈琲をコップに入れながら言う男に、僕は唖然とする。そういえばあの時も、勝手にホテル連れていかれたよな…わけも分からず。いや別にいいんだけど、全部この人が払ってるわけだし。いくらか知らないけど…。
「まああとは、今すぐお前を抱きたかったから、かな」
……!?
ズズっと珈琲を飲みながら真顔でじっと壁に張り付く僕を瞬きもせず見て言う男。……な、なんか怖い……っ!そうだ、狼に狙われて狭い空間で逃げ惑う兎、まさに今その心境だ…っ!畜生…っっ
「凛人」
ひっっ。
珈琲を机に置く透さんが、僕の名前を呼びコツコツと近づいてくる。…だ、駄目だっ、この人から逃げられるわけがないっ!何よりこの体格差、身長差、敵うわけが…
「…何をそんなに怯えてる?」
ドキン
透さんが僕の顎を手で掴みながらいつもの如く鋭い瞳を向けて、聞いてくる。
何って…
「だ、だって、透さん変なことばっかりしてくるし…それに、さっきはすごく怖かったし」
「変なこと?恥ずかしいことってことか?」
「…う、うん…」
「可愛いな凛人。勝手に頬をピンク色に染めて」
「…!!」
「それに、さっきはキレてたから怖くて当たり前だ。あいつらにキレてたんだ。お前に怒るつもりは無い、だから安心しろ」
とか言って、すぐ僕にも手あげるくせに…。
「シャワーを浴びてる余裕が無い。凛人、早くベッドに来い」
じとっとした目を向ける僕に向かって、透さんが手を差し伸べてくる。…なんだこの、感じ。僕、この人と一体何をしてるんだ?今…。こんな、恋人同士みたいなこと…。
「……ほら」
「…っ」
高い部屋、というのが頭にぐるぐる渦巻いて、どうにも男の手を振り払えず素直にその手を受け取ってしまう。これがまさに、お金と代償に僕自身を捧げるってやつか…。僕は透さんにベッドの上に寝かせられながら1人トホホと内心涙を浮かばせる。
でも、
「凛人」
……頬に触れるこの人の手が温かく、優しい。
僕を見つめる透さんの目も、どこか優しく熱っぽい。
「何で目を背ける?」
僕の服を脱がせながら透さんが尋ねてくる。僕は頬を赤くしながらぷい、とそっぽを向いて言う。
「…別に、分からないよ。あなたが優しいから、それが違和感で怖いのかも」
すると僕の唇に透さんの顔が近づいてきて、ちゅっとキスをされる。…っ!!な、なんかムカつく…っ!
「悪かった、今日は優しく抱いてやる。とことん甘やかしてやるから」
「…なっ、ふざけんな!そんな一言で何を謝ったつもりなんだっっ、僕は…あんたになんか流されないからなっ!あんたが優しいのなんか一瞬なんだか…」
唇を、黙れ、というように再び男に塞がれた。それに驚く僕の口内に、舌を入れ込ませてくる男。
「…んんふっ」
男の舌が口内で動きまわり、口の端からだらだらと涎が垂れる。…くっそう、少しは手加減しろよッッ、息ができないっつーの!
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