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49.不意
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そろ、と僕はバスローブを着て浴室から透さんのいる部屋へ足を運ぶ。
「出たか」
頭をタオルで拭きながら、テーブルの前の椅子に足をクロスして腰掛ける透さんの元まで歩み寄った僕はうん、と言いながら少々目を逸らす。
「色々肉とか食べ物持って来させたけど、お前何が食いたい?」
「…別になんでも…」
「なんだよお前、反応薄いな」
だって……。
「うん?頬が赤いな。もしかしてもう風呂ためて湯船に浸かってたのか?」
「う、うん」
「おいなんだよ、あとで一緒に入ろうとしてたのによー」
って知るか…っ!!どうせまたセクハラしまくるつもりだったんだろっっ、この変態っ!
「はくしゅっ」
ぶるっと体を震わせながら鼻を触り透さんの正面の席に腰を下ろそうとする僕の腕を、透さんが掴む。
「おいまて、風邪か?」
「違うよ、そんなんじゃ……っくしゅ」
「おいおい、もしかしてそれで顔が赤いのか。」
額にスっと透さんの手が当てられる。
多分顔が赤いのは、お尻からこの人のーーが流れ落ちてきたからだ。…とは、この人には言えない。言おうとしたところで僕が自滅して恥ずか死ぬ未来しか見えない。辛い。
「お前、まさか風呂で抜いてきたのか?」
「…って、なわけないだろっ!?」
「ムキになって、可愛いな」
ニヤつくなっっこの変態クソ男……!
「だからっっ違うって言ってるだろっ」
続きを、開いた口を透さんの口で覆われて塞がれてしまう。
「っんんん」
口を離すと、透さんがふ、と笑って僕を見ながらコーヒーを口にする。
「ほんとはもっと抱いてやりたかったけど、お前が風邪かもしれないなら今日はもうよした方がいいかもしれないな」
片手で僕の頭を撫でながら言う透さんに僕はドキ、とする。…と…透さんがすごく優しい。……こ、こわい、ていうか気持ち悪い……。
「あれか、さっきお前のことを素っ裸にさせたのがまずかったのか」
「!」
冷静な顔して堂々とそんな話をしてくんな…っっ
「お前の体を隅々まで見たかったんだよ仕方ないだろ。さっきのヤツらに何かされてないかのチェックもあったし」
「別に聞いてない…!」
顔を真っ赤にしながら僕は男に向かって眉を寄せると、そのままベッドの上に男とは反対側に横向きになった。
「おい飯は?」
「食欲無いっ」
「お前まじで熱出してんじゃないだろうな。着込ませたつもりだったが駄目だったか」
ぎし、という透さんがベッドの上に座る音がして、僕は横向きに寝ながらびくっとそれに反応する。
「凛人、こっち向け」
「…ん…」
額にもう一度透さんの手が触れた。透さんの手はほんのり冷たかった。
「さっきより熱い気がする、困ったな」
「もう、平気だよ」
「馬鹿」
透さんがふと、僕の頭に触れながら遠くを見るようにして言った。
「しかし、お前がこんなに極端に貧弱体質になったのも俺のせい、か…」
透さんはそう呟いて、どこからしくない迫力のない表情で睫毛を伏せ、目線を下に落としていた。
……透さん…?
「凛人、近くの店で薬を買ってくる。ここにいろよ」
僕が何か言う隙も与えず、透さんは上着を羽織るとすぐに部屋を出ていった。そんな、ほんとに大したことないのに…一体どうしちゃったんだろ、透さん。なんだかさっきの透さん、すごく人間味があった…すごく普通の人がするような顔をしてたような。て、こんなこと言ったら失礼なのかな。
あの人いつも怒った顔か、企んでるような笑顔しか基本的に浮かべないから。
後に透さんは30分ほどですぐに帰ってきた。僕に薬を飲ませた透さんは、ベッドに横になる僕の体を後ろから腕を回し、抱き締めるようにしてきた。
「ちょ…っ」
「寝ろ」
ドキ
耳元で囁かれる透さんの低い声。
…なんだろ。なんか、どきどきしてくるよ…この人とはこれまで何度も頭に思い出すと恥ずかしいことをたくさんしてきたつもりなのに、まさに今日だって。…なのに、ただ透さんに抱き締められるだけで鼓動が早まる。頬に赤みが差す。
…心地いい。透さんの匂いが僕の心を落ち着かせるように眠気へと誘った。
ああ、僕は矛盾している。
だって、この人がさっき、どこか思い詰めたようならしくない顔をして窓の外を眺めていたから…。僕の体を、今、優しく触れるように抱きしめてくるから。
ああ、僕ってば甘い。僕ってばちょろい…。
透さんって、僕が弱ると、ほんと人が変わったみたいにとことん甘くなるんだからさ…。もう、極端な人だよね、ほんと…。
「……凛人…」
眠る間際、透さんの僕を呼ぶ声が聞こえた気がした。
透さんがその時どんな表情をしていたのか、その後すぐ意識を手放した僕には分からない。
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