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92.変わらない生活
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透さんとの生活はそれからも続いた。特に荒だった事もなく、大人しくなった僕に対して透さんはとても機嫌が良さそうだった。
「ただいま。凛人」
「おかえりなさい、透さん」
僕は慣れたように仕事から帰ってきた透さんの元まで自然と足を運ばせる。
「ほら、今日はチョコレートケーキを買ってきてやった。」
スっと手に提げたケーキの箱をどうだと言わんばかりの表情で見せてくる透さん。
「また…?僕先週もケーキ食べたよ、その前の週だって。家にしかいないのにこんなに食べてたら太っちゃうよ」
「何言ってんだよ、食ってる割に全然肉ついてないくせによ。こことかな」
「ひゃっ」
する、と脇腹から腰、お尻にかけて手でやらしく撫でてくる透さんに僕は過敏に反応する。…このセクハラ男っ!
「さ、早く飯食って一緒にこれ食おうぜ。」
に、と笑った男の顔に僕は怪訝に眉を寄せつつも、渋々食卓の席へと座る。
「今日は何してたんだ?」
「え?何って、なにも」
男の問いにご飯を口にしながら答える。
「そうか。まあ家にいてもやることなんかねえだろうしな」
分かってるなら外に出させてくれ、と心の中で呟く。
「…やることなんて、タマと一日中ずっとゴロゴロしてるだけだよ。つまらない」
はあと息を吐きながら言えば、目の前で同じく夕食を食べていた男が声を上げて愉快そうに笑う。…あー、ほんとひどい男。極悪人だ。
「仕方ないだろ、お前は俺のペットみたいなもんなんだから。」
「ペ……ペット…?」
僕は持っていた箸を強く握る。
「そうだ。そのペットとこの俺が結婚してやると言ってるんだ。凛人、お前は俺にもっと感謝しろよ。」
傲慢な表情でこちらを見てくる透さんを見て、僕は頭をクラリとさせた。
ダメだ……やっぱりどんどん悪い方向になってる。このままじゃ、僕は本当にこの人の言いなりのペットのまま、お嫁にさせられてしまう。そんな最悪なこと…絶対嫌だ!
「…僕は、ペットじゃないよっ!」
席を立ち上がり、手を震わせながらも何とかそう声を発する。
「は?」
ビク
席に座ったまま、笑みをなくした顔をした男が僕の方をじっと鋭い目で見つめてくる。…ひ、怯まないっ!怯んだらだめだ!
「こんなのおかしいよ、外に1歩も出してもらえないなんて」
「何言ってんだよ今更。最初の頃に戻っただけだろ」
平然と言ってお茶を飲む透さんを僕は凝視する。
「そんな…。」
なら、今までの日々は何だったの…。僕は、結局この家に閉じ込められたまま何も変わっていない。一体どうしたらいいの?どうしたら…
じっと、目の前の食卓の席に座る男をその場に立ったまま見つめる。透さんは僕の視線に気づき、すぐ顔を上げ目を向けてくる。
「何だよ?」
「……」
もし僕が今歯向かったら、また他の人がどうにかなる、とか何とか言って脅してくるのかな。でも、なら、一生だからってこのままこの人の言いなりのまま?そんなのおかしい、そんなの、…奴隷と言ったって何も変わらない……。
「…凛人?」
僕は瞳から涙を流す。
透さんが、僕を見て驚き、動揺した顔をするのが分かった。
「な、どうして泣くんだよ」
「……」
「おい凛人、この生活の一体何が不満だって言うんだ!俺は別にお前に酷いことなんて何もしてねえはずだぜ」
「…してるでしょ、僕を縛ってる。それにいつも僕の合意も無しに毎日強引に透さんは僕を抱いてくるでしょ」
頬に涙を流しながら眉を下げ僕が言うと、透さんは顔を下にさせ机の上に置いた両手の平の拳を強く握った。
「…お前俺に意見するのか」
「…当たり前でしょっ、僕だって人間なんだよ、透さんだって分かってるでしょ?」
僕は透さんを涙を流し見つめながら言う。
「ねえ透さん…もうこんなこと、いい加減やめよう…」
「…何だと」
「こんな生活に幸せが待ってるわけないでしょう」
「……」
「あなたは僕を愛してるって言うくせに…どうしてこんなやり方でしか出来ないの」
ああ、この人が…今目の前にいるこの人が、優しい人だったら…そうだったらどんなにいいか、と僕はまた今も叶わないことを思ってしまっている。
けれど思わずにはいられない。どうしてこの人は…、いつからこの人は、こんなふうになってしまったんだろう…?
「ねえ透さん、僕…聞きたいことがあっーーーわ!」
突然こちらに歩み寄ってきていた透さんにその場に体を押し倒される。驚いて上を見上げると、透さんが僕を見下ろして睨みつけるようにして見つめていた。
「……透さん…」
「お前のどこが人間だって?俺に飼われることでしか、まともにこの世で生きてもいけないくせに」
「…!」
どうしてそんな、そんな…酷いことばかり言うの…?…どうして…透さん……
僕は瞳にじわ、と溜まった涙を堪えるようにぎゅっと目を硬く閉じる。透さんの手が僕の頬を撫で、首筋を撫で、体をいやらしく撫でてくる。
「それに、合意が無いだって?」
そう言いながら透さんがきゅっと僕の足の間にある部分を手で握ってくる。
「あっ…!」
「俺にこうして触られてしっかり反応してきてるくせに、どの口がそんなことを言う?」
「……や…やめて…」
怖い顔をした透さんが僕を見下ろしている。
「思い知らせてやる」
ビク
「もう二度とおかしなことを言い出さないように、お前を俺に降伏させてやる…!」
もう冬が通り過ぎようとしているというのに、僕たちはまだ、…あの頃のままーー。
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