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100.脅し(透side)
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夜、仕事を終え、帰路に着く。
(ふぅ…)
車の窓から煙草を持つ手を出しながら口から煙を吐く。最近、吸う頻度が目に見えて増えている。あまり煙草は吸いたくない。家には凛人もいる。あまりあいつに煙草の煙を吸わせたくない、というのもあるが…
〝もう族から抜けてお前だって何年も経ってるだろ。なのに未だにこんな調子じゃ…〟
「…」
ああ、…気分悪ィな…何だか今日はすこぶる。
俺は信号待ちに苛立ちを覚えながら青に変わった瞬間アクセルを踏んだ。
その後、車を走らせて数十分経った時だろうか。とある一方通行の道の曲がり角をハンドルを切って曲がった時、目の前を走っていた車が突然その場で急停車した。
「!?」
っ、なんだ…?!
咄嗟に急ブレーキをかけ俺は車を止める。幸い後ろに車はいなかったら良かったものの、いたらどうなっていたか。
俺は一息つきながらばん、と車のドアを開けて降りる。辺りは街頭1つほどしか無い閑散とした雰囲気がある。もう夜の9時になるからな…最近はずっとこうだ。早くあいつに会いたいのに…。
「おいてめえ、なに急に止まってんだ。危ねーだろが」
苛立ちを隠さずに紺色の車の運転席側に向かって足を進めた俺は車の中を見ながら眉を寄せて言う。
すると、おもむろに運転席から人が降りてきた。
「よお。立花 透」
「…あ?」
見覚えのない男が煙草を手にしながら少々笑ってそう言い、こちらを見ている。ああん…?なんだコイツは?低級のチンピラか?
そう思っていると続々と車から人が降りてきた。
ニヤついた何か企むような顔をするムサ臭い野郎どもに出迎えられ、気分は最悪だ。
「なんだお前らは」
ふう、と煙草の煙を口から呑気に吐きながら尋ねれば、リーダー各らしき目の前に立つ男が声を出し笑う。
「分からないか?お前に恨みがある奴らの集まりさ」
そう言うと男は笑いを含めながらもぎりっと俺を見て睨むように歯を強く噛んだ。
「俺はずっと待ってた、お前の弱みを握るときを、この時をずっと」
「…」
それに黙ったまま冷ややかな目線を向ける俺に向かって男が口元を綻ばせる。
「知ってるぜ…。あんたに大事な恋人がいること」
…!!
俺はここに来て初めてまともに男の顔を見る。…こいつ、いや、こいつら…。凛人に何かする気か?
俺は煙草の火を靴で踏み消す。
「…お前ら、あいつに指一本でも触れてみろ。生きて帰れると思うなよ」
「…て…てめぇに脅される側じゃねんだよこっちはっ!!俺たちがお前を脅してんだよ!」
一瞬顔を青ざめさせた男が負けじと俺を見て威勢よく喚いている。
「脅しだぁ?くだらねえことしてねえでここで勝ち負けつけようじゃないか」
そう言い口端を上げながら指をボキボキと鳴らせば、男たちの足が1歩後ろに下がる。
「ま、まて…!今日はお前とやり合うつもりはない!」
慌てたように言う男に俺はつまらなさそうに目を向ける。大人数のくせにへっぴり腰過ぎんだろ、こいつ。…つまらねぇ。
特に用もないので、そのまま踵を返し、車に戻ろうとすると
「おいまて!」
「…なんだよ」
ち、と舌打ちしながらイライラした表情で男どもを見る。
「せいぜい恋人のお守りに励むんだな、俺たちいつお前の隙を狙うか分からねぇぜ」
調子よく話す奴をじっと目だけで見つめていれば、そそくさと奴らは車に乗り始めた。
「いいな!待ってろ!必ずお前に土下座して謝らせてやるからな…!!」
そう吐き捨てると奴らは車を走らせ去っていった。………なんだアイツら。
ご丁寧に注意喚起なんかしていきやがった。もしやアホなのか?まさか罠?いいや、ない。まああんな下等な奴ら、俺が気にするまでもない…。
何も気にかけることは、何も…
「……」
俺はふと思い立ち、足早に停めていた自分の車に乗り込んだ。
だがもし本当にあいつに何かするようものなら、…俺はただじゃおかないぞ。
俺は帰路を急いだ。
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