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108.目的
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ーー結論から言うと、男たちの告げていたことは虚言だった。
「あっ!!」
僕はどこかのホテルに男たちに連れ込まれ、ベッドの上へと体を投げ飛ばされた。
「あーはっはっはっ、バカめ!まさかこんなに簡単にあんな胡散臭い嘘で騙されてくれるとはなぁ!」
むくりとベッドから体を起こしながら、傍で声を上げて笑う男たちを僕はキッと鋭い眼差しで睨みつけた。
「あの男の恋人だって言うからどんなものかと思ったら、この程度とは。」
すると、1人の主犯格らしき男がどさっとベッドに腰を下ろし、僕の顎を掴み無理やり上へと顔を上げさせてくる。
「…へーえ。まあでも、見た目はそこそこ良いらしいな。」
「…」
「だが、まさか男の恋人を作るとは」
睨みつける僕の顔を男は落ち着いた様子で見下ろし見つめ、それからすぐ興味なさげに掴んでいた僕の顎を放しその場を立ち上がった。
男の周りにふたりの男が駆け寄って尋ねる。
「…お…男っ?か、神崎さんっ、それは本当に…?」
「見たらすぐ分かるだろ。分からないなら、そいつの付いているものを確認のため手で触ってみるか?」
一斉にこちらに視線を向けられた僕は、身の危険を感じて少しベッドの上で後ろに体をずらす。
「…さ、触っていいんすか…」
「さあな。まあそんなこと知れたらあの男にお前一生排泄機能使えなくさせられるかもな。」
「…っそ、そんな…っっ!ま、まさか、ハハ…さすがにそこまでは…」
「するさ、あの男は。立花 透……あの男は人間じゃない。お前らだってあいつがどういう奴か、きちんと分かってるはずだよな」
ふぅー、と主犯格らしき男はタバコを吐きながら男ふたりを見渡して言った。
僕はその間、後ろ手に車に乗っている時に男に縛られた手の拘束を体を動かしながら何とか外れないかと1人格闘していた。
「まあ、あの男の恋人を盗んだんだ、恐らくだが、あの男がこれまでにないほどキレるのは目に見えているさ。予想でしか分からないがな」
「…俺ら…殺されるんじゃ…」
「今更何を言ってる。お前ら、あいつに復讐を願ってここまで来たんじゃないのか?違うか?」
神崎、と呼ばれた主犯格らしき男は、そう言って男たちを見ている。やはり、この男がリーダーと見ていいらしい。しかし、見た目からチンピラ的な雰囲気はあまり見えない。寧ろ一般人にとても近い雰囲気を感じる。気のせいか?黒髪にそこそこの細身、それにとても落ち着いている。
…この男の目的はなんだ。今、復讐がどーのって言ってたが、一体…?
「夕方から夜、どこかの時間帯であの男は現れる。例の倉庫に呼び出して鍵を締め、あの男を徹底的に俺らで叩き潰す。いいな」
「叩き潰すって…そんなこと可能なんですか?…あいつはあんたの言うように人じゃない…1人で何十…いえ、何百ものやつを殴り倒してきた怪物ですよ。」
「だからそのガキを連れてきたんだろうがよ。あの男だって、自分の弱みを握られたら手も足も出ない…。俺はこのときをずっと待ってたのさ」
神崎という男はそう言って両手を横に広げ、ホテルから見える窓の外へ体を向けた。
「…そうだ。やっと、この時が訪れた……俺は何年もの間この日をずっとずっと待っていた。そしてようやくこの日を迎えられた……今日事が終われば俺は死んだっていい」
窓に映る男の顔が鏡のようになって反射してこちらにも見えた。僕はそれにゾクリとした。
それはとても不気味で、恍惚な表情だった。
「おいお前」
ビク
僕はそれから突然くるりと振り向いた男に体を跳ねさせる。
その表情はさっきと同じ落ち着いたものだったが、僕はまだ先ほどのぞくりとした感覚を忘れられずに少々体を震わせながら近づいてくる男の行動を目でしかと追った。
「何もしないとは思うが、注意だけしとくぞ。くれぐれも、俺たちの邪魔をするようなことはするなよ?」
「…っ」
「お子様は何もしないで事が終わるまで黙って大人しくしてくれていればそれでいい。そうすれば俺たちだって何もしない」
神崎、という男にそうして頭を軽く触れられる。その際男に軽く口端を上げ微笑まれたが、何だろう。そこまで嫌な気持ちを抱かなかった。決して好意的な優しい笑みではない。しかし、この男は少なくとも透さんが絶対の目的であって、僕には最初から特にほんとに何もする気がないことが伝わる。
この男の先ほどの恍惚な表情と言い、矛先はあくまで透さん…。それは果たして僕にとって、安堵すべきことか、危機とするべきこと、…なのか……。
「あの男が来るまで恐らく約3時間だ。俺はB班と少し話してくる。そのガキをしっかり見張ってろよ」
神崎という男はその後、そう言って部屋を出ていった。部屋には、ベッドの上に座る僕と、男2人が取り残された。
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