アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
109.敵対
-
ホテルの一室に取り残され両手を後ろに拘束されたままの僕は視界に男ふたりの様子を映しながら頭を働かせていた。
結局いちかばちかで来てみたらただの男たちの嘘だった、そして恐らく僕はこれから、透さんをおびき寄せる為の餌として使われようとしている…。
ああ僕のバカ、安易に信じ込んで付いてきてしまったばかりに墓穴を掘ったような形になってしまった。だけどあの時あんなことを言われて真実を確認しようがなかった。ならば付いていきこの目で確かめた方がマシだと思ったのだ。どのみち、後からこのことを知った透さんには怒られるんだろうな……。
はあ、と僕は落胆の息を吐く。
それにしても、復讐…か。
透さんが過去何をしたのかなんて僕には分からないし、知らない。でも、さっき物騒なこと話してたよね…僕をダシに透さんを一方的に殴る、そのようなことを。
…僕は、一体どうすればいい?
僕は分からない。果たして、透さんの味方をするべきなのか、しないべきなのか。そもそも僕は部外者だ。この人たちが相当の恨みを持って透さんに敵対心を抱いているのなら、過去にそれ相応のことがあったからなのだろうと素直にそう思ってしまう。
……だって、透さん…あなたが優しいところがあるのも十分わかっているけど、あなたの行いを全て僕は庇いきれない。透さんに非があったことはこれまでいくつもあったような気がして…僕はあなたを庇いたいと言いきれない。
僕は、そう長くなくとも数ヶ月の間、あなたと一緒に過ごしてきたから。だから、…僕はあなたを知っているから。あなたのダメな部分も多く知っているから。だから僕は、あなたを庇いきれない…。
でも……
〝……ぅあっ!うぐっっ!〟
透さんが袋叩きにされているところを見るのも嫌だ…!…一体どうすれば……
僕は一体…どうすればいい……?
「おい」
…?
突然1人の男に話しかけられた。顔を上げると、もう1人の男もベッドに座り込む僕の傍に立ってこちらを見下ろしていた。
「…な、なんですか?」
僕は囲むように傍に立ってくる男2人に途端に表情を強ばらせながら尋ねる。
「お前本当に男なのか?」
は…?
「…そうです」
「有り得ない。男のくせに何でそんなに肌が白いんだ」
「…そんなの知らない……、…!触るな…っ!」
体に触れてくる男の手に僕はゾゾゾと悪寒を走らせ顔を青くさせる。まさかこいつら……
「ちょっとだけサービスしてくれよ、な?」
そう言って体を突然押し倒してくる男たちに僕は目を白黒させながら体を何とかじたばたと暴れさせる。
「…いやっっ!!!嫌だ!!退けっっ!」
嘘だ、何でこんなことに…っ!
「ああ、あの男には絶対言うなよ。俺らが殺されちまう…だから口止めとして、ハメてるところの写真を撮っておいてやるからな。バラしたら写真を即世にばら撒くからな?」
僕の体の上に馬乗りになった男が、僕の服を両手で強引に左右に向かってびりっと裂くように脱がしていく。
「…や…やだっっ……!!いやだ!!!」
突然ということと恐怖のあまり、思わず涙目を浮かべて声を上げて僕は叫ぶ。
すると、すぐ口をもう一人の男に塞がれ、僕は最早何も抗えないまま大きくさせた瞳で目の前に映る、にやぁと笑った気持ちの悪い顔をする男の顔を見上げるしかなかった。
……もうやだ……僕のバカ……。だけど…もう駄目だ、……もう……ヤられる………ーーーー
僕は強く目を瞑った。
「…何してる!!!」
その時だった。
唇を寄せてくる男の顔が迫った時、突然部屋のドアが開く音が聞こえると同時に誰か人が入ってくるのがわかった。
え……。顔を上げると、そこにいたのは神崎というあの男であった。
「お前たち何をやってる…!」
「か、神崎さん…っ、俺たちはその…」
「退け!!早くそこから降りろ!」
神崎さんに無理やりベッドの上から降ろされた男2人は、神崎さんを見てひぃっと顔を青くさせている。
「ち、違いますこいつがっ、こいつが俺たちを誘惑したんです!」
…!
「そんなこと、僕がするわけないだろっ…?!」
「だ、黙れ!人質の分際で偉そーにっ!」
「ーーいい加減にしろ!!!」
「し、しかし神崎さ…」
「お前ら、気がたるんでるぞ……!」
神崎さんの一喝で場が一瞬しんと静まる。
「こんなガキに一々惑わされてるようじゃあの男はやれねーぜ!分かってるだろ!」
「…は、はい…」
その後、男ふたりを部屋から出させた神崎さんは、ベッドの上に座る僕の方へと振り返りスタスタとそのまま歩み寄ってきた。
…な、なんだ?
僕は警戒しながら傍に立つ男を見上げた。すると、
「それを着ておけ」
「…え?」
突然目の前にバサッと落とされる服に、僕は目をぱちくりとさせる。それと同時に、後ろ手に拘束されていた両手も解かれた。
「…えっと…」
「勘違いするな。俺たちは敵対関係にある、お前のことを解放する気はないからな。この件が終わるまでは」
神崎さんはそう言い離れた場所にある1人がけソファに腰を下ろすと、新聞を開き、コーヒーを静かに飲み始めた。
この人と透さんの間には一体……何があったんだろう。
僕は1人コーヒーを飲む神崎さんの後ろ姿を見つめながら渡された服をぎゅっと握った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
110 / 178