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112.幕開けの夜(透side)
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「こっちだ」
仕事終わりの夜、俺はマンションではなくついこの間会ったあの男たちの後ろをついて歩いていた。
「ここだ。」
ついて歩き辿り着いたのは、薄暗い雰囲気をした倉庫の中だった。予想通りではある。
「それで?…あいつは、凛人はどこにいる」
手前にいた男の胸ぐらを掴んでそう尋ねる。男は一瞬びくりとして、俺の手を無理やり引き離した。
「や、やめろっ、お前が俺たちに何かしようものならあのガキの命が危ないんだぞ…!」
「!」
しばし男と睨み合っていた俺だったが、後に俺はゆっくりと男のシャツから掴んでいた手を離した。
……凛人……
「…はっ、あのガキの教育がなってないんじゃないのか?ちゃんと管理してねぇから人質にとられるような今のような事態になるんだ」
男がそう言い笑うと、俺の傍にいた数人の男たちも声を上げて笑いだす。
「だが、お前にもそういう感情があったんだな。正直驚いた」
「…」
「まさか、本当にあのガキをダシにしただけで大人しくなるとは思っ…」
「誰が大人しくなるって?」
ギラッと睨みつけた目を男に向ける。
すると男どもはひぃっと僅かな声を上げて少し距離をとる。
「…なっ、なにかする気かっ!?わ、分かってるのか?!暴力をふるえばお前の恋人は危険な目に晒されー」
「もう晒されてるだろ、……凛人に何をした。言え」
「な、何もしてないっっ!!お前を誘き出す為の人質として捕まえてあるだけだっっ!」
慌てふためく男の首根っこを再度掴みかかったそのとき、耳によく聞き慣れた声が聞こえた。
「透さんっ…!!」
…!
その声を聞きすぐに顔を上げ声のするほうを見る。そこには、紛れもない俺をどこか不安そうに見つめる凛人の姿があった。
「凛人……!」
拘束された様子もない凛人を見て、俺は男から離れ、凛人の方へ足を向ける。…良かった、何もされてはいないようだ。
俺は心の中で安堵する。
「よかった、凛人」
「え…?」
戸惑った顔をする凛人の元に足を運びながら、俺は薄らと笑んだ顔を凛人に向け言う。
「…さっき、お前が拐われたと聞いて、生きた心地がしなかったんだ」
「…透さん…」
1歩、1歩と俺は凛人の元まで足を進めていく。
凛人はその場で突っ立ったまま俺を見ながら、やはり不安そうな表情をしていた。…どうしたんだ?怖くて足がすくんで動けないのだろうか。まあいい、それなら俺が抱えてやればいいだけの話し。
さあ…凛人、帰ろう。俺たちの家に。
「凛人、さあ…早く家に俺と帰ろうーーーー」
そう言い、手を凛人に差し出した時、
「…!」
奥から何やら人が現れるのが分かり、俺は目を開いた。
「…どうやら、お前はまだ何も理解していないらしい。」
……!…なに…どうゆう意味だ。
凛人の傍に立ち口端を上げ笑って話すその男の顔は、前にも確かに見た顔だった。そうだ、あの時、1番先頭に立って前に俺にどーのこーのと言ってきた人物。…つまりやはりこいつがリーダーなのか。
……まて。その男が何故凛人の傍に平然と立って笑っている?…何か妙だ。そもそも、なぜ凛人は拘束も何も無しに無傷で、そして何故…
凛人……どうして俺からそんなにもわざとらしく瞳を逸らしているんだ?……
「さあ、お前たち早くこの男の拘束を」
凛人の傍に立つ男はそう言い、驚いた顔をする俺をニヤリとして見つめている。隣にいる凛人は顔を俯かせ依然として瞳を下にしている。
凛人…どうして…。なぜ俺を見ないんだ…っ?!
「待ち焦がれた日は計算通りに確実に訪れた、……立花 透、今日お前をあの世に葬ってやる……!!!」
男がそう声を上げた時、凛人がこちらに振り向いた。それは、俺を見て苦しそうな、切ない顔をする凛人の姿だった。
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