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118.あなたと一緒に
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「ただいま」
神崎さんの元から離れ、僕は透さんのいる病室まで戻った。
さっきまでいた朔夜さんは帰ったのかもういなくなっていた。
「戻ったか」
「うん。透さん、腕…大丈夫?」
すぐにベッドの近くに置いてある椅子に先ほどと同じように腰掛け言うと、上半身を起こし座る透さんがああ…と言い自分の包帯の巻かれた右腕に目を落とす。
「少しの間、この腕は使えそうにないらしい。リハビリが必要だそうだ」
「…そう、なんだ」
それにほんの少しショックを受ける僕を見て、透さんが口を開く。
「凛人」
顔を上げると、透さんの僕を見る瞳は真剣だった。
「俺は、今まさにこんなだ。左腕さえあればお前1人守ることくらい俺としては苦じゃないが」
「うん、そうだよね」
透さんなら。そうはにかみながら言うと、透さんは僕から瞳を外し言った。
「凛人…分かってるのか」
「え?」
透さんの真剣な声色に僕は体を少しだけ緊張させる。
…どうゆう意味?
「俺は、お前の想像してる何倍も野蛮な人間だぞ」
え……。
透さんはそうして僕を鋭い瞳で見、続けざま口を開いた。
「今回の件は軽いものでたまたま済んだ。だが、本来の俺はもっと怖いぞ」
「…」
「お前も俺といるんだからわかっているはずだな。俺は、お前には優しくはなれないぞ。凛人」
透さんはそう言い、その場に固まる僕からスっと顔を反対側に背けた。
「…透さん…」
透さんは言った。
「引き返すなら、今しかないぞ。お前がどう言おうと、喚こうと、俺はお前をめちゃくちゃにすることしかできないんだからな」
僕は向こう側を向くベッドの上に置かれた透さんの右手にそっと自らの手を置いた。触れたその手は、一瞬びく、とビクついたような気がした。
「……いいんです」
僕はぽつり、そう答えた。
「……凛人」
「…もういい、透さん…。」
僕は、こちらに振り向き瞳を大きくする透さんを見ながら必死に涙をこらえた。
「透さん…」
僕はただそれだけしか言えなかった。続きは涙に飲まれ言葉にできなかったからだ。
…この人が、すき。
なぜなのか、わからない。だけど、ただ、この人が好き。
「…凛人…」
透さんが、僕の体を引き寄せぎゅっと抱きしめてくる。そこはとてもあたたかい、この人の愛情を感じる温かな空間であった。
「なるべく、お前を傷つけないように努力する……。傍に居てくれるか…凛人」
僕はそれにほんの少し口元に笑みを浮かべながら迷うことなく答えた。
「…うん。傍にいて…透さん」
すると、腕に回された透さんの力が強くなった気がした。
これからまたどうなるか、分からないけれど、また乗り越えていこう。
あなたと一緒に、この先を。
それが愛なのか、何なのか分からなくてもいい。ただ、…この人といたい。
離れたくないんだ。
僕たちはしばらく、長い長い抱擁をした。
…
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