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120.幸せ
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玄関で靴を履くスーツ姿の透さんにお弁当を渡しながら尋ねる。
「忘れ物、ないよね?」
「ああ」
透さんは靴を履き終わると、腕時計に視線を落としながら答えた。
しかし、くるりと背を向けたはずの透さんが突然再びこちらに振り向き驚く。
「いや、あった」
「は?」
「忘れ物」
透さんはそう言うと、僕の体を引き寄せた。
「え、ぇぇっと…」
じーとこちらを見られている視線に顔を背けながら目線を彷徨わせる。
「なんだ、可愛い反応するんだな」
「…いや、は?!」
「顔が赤い」
透さんにそうして体を離された。
ていうか、…何なんだこの人ほんとにっっ。顔が赤い…?はっ、ああそうですか、そうですかっ!!
「戸締りちゃんとするんだぞ。」
「…分かってるよ、大体僕は子どもじゃないんだけど…」
眉を寄せながらそう言う僕の頭に触れると、透さんはちゅ、と僕の頬にキスを落とした。
「行ってくる。凛人」
僕は仕事に出かける透さんに向かってひらひらと手を振って見送った。
僕たちの生活は順調だ。
ほんの少し前から、本当に嘘みたいに普通の、幸せな生活を築けている気がする。
幸せ。
うん、そうだ。僕がずっと夢にまで見ていたのはこういうのだ。…嬉しい。
だからこそ、もう何も、起こりませんように。
僕たちは今とても順調…だから、
だから、
この幸せを、…誰も邪魔しないでいてーーーー
透さん、僕はあなたを信じてるよ。
だから透さんも僕のことを信じていて。
きっと、きっとこの生活は、…続いていくはずだよね…ーーーー、透さん…。
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