アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
125.1泊旅行⑵
-
「雨、降ってなくて良かったね」
「ああ。」
その後、温泉を出た僕達は、旅館の外を浴衣を着て2人並んで歩いていた。
なんだか、こんなふうに2人でゆっくり外を歩くなんて久しぶりだ。ほんの少しこの状況に気持ちが弾んでるのは、僕だけなのかな。
「寒くないか」
「え?」
ちらりと隣を見ると、透さんが浴衣の上に掛けている羽織を脱ごうとしているのに気づく。
「平気だよ!」
「そうか?」
「うん」
それにしても透さん、恐ろしい程に浴衣姿が似合っている。…僕も背さえあれば。背さえ…。
「なんだよ?」
「ううん。温泉よかったね」
「ん?ああ、温泉な」
?
透さんはすると、瞳を閉じて何やらニヤニヤした表情を浮かべている。…何その顔。
「いやぁお前の裸姿に魅入られた男共が揃いも揃って勃起させてたもんだから、思わず笑っちまってな」
「…!なっ!」
何それ…!
どうりでやたら視線を感じると思ったんだっ…何かと思ったらそういうことかよ…!
「まあ、俺は鼻が高いけどな」
「やめてよねっ!」
全然嬉しくない、そんなこと言われたって。
得意げな顔の透さんを見て僕はふくれっ面を浮かべる。
「怒ったのか」
「…べつにっっ」
「安心しろ。お前は他の野郎共になんざ渡さないさ。」
ふーん…。尚もつんとそっぽを向いていると、突然透さん側に腰を引き寄せられる。
「うわっ」
透さんの胸に手を当てながら顔を上げると、こちらを見る透さんと目が合う。
「お前は俺が守ってやる。」
ドキ
透さんのそんな言葉に僕は胸をドキリとさせてしまう。
「だから、お前もよそ見するなよ」
「、よ、よそ見ってなんだよっ」
僕は透さんに肩を抱かれて歩きながら、顔を背けて慌てて照れた表情を隠す。
なんだかこれって、俗に言うイチャイチャ、なのかもしれない。透さんとこんなカップルみたいなやり取り、全然慣れてなくてドキドキする…。いやカップルみたいな、というより、カップルなんだけど…。
透さんと、こんな普通のやり取りができるだなんて。
「下駄、しんどくないか」
「え?」
「そろそろ部屋に戻るか。夕飯も準備されてるだろうしな」
透さんが柔らかな表情で僕のことを見下ろしていた。
あ…なんだか、本当に今日は恋人っぽいのかもしれない……。
「夕飯何かな」
笑いながら隣にいる透さんを見上げて言う。
とその時、ちょうど前から歩いてきた人物が透さんの体にどんっと当たるのが分かった。
「いてぇ」
少々不機嫌そうな顔をした透さんがその目をぶつかってきた人物に向けた。そこには
「すみません」
眼鏡をかけた優しげな雰囲気をした男の人がこちらを向いて立っていた。
「いえ別に!」
眉を寄せる透さんが何か言う前に慌てて僕はそう笑って言うと、その男性の後ろから背低めの男の子が顔を出したのを見つけた。僕より少し年下くらいの子だろうか?
「ごめんなさい、お兄ちゃんが。」
その子はフフと微笑んで透さんの方を見た。
「じゃあボクたち行くので。またどこかで」
兄弟らしきその2人はそのままにこやかに僕たちの前から去っていった。何となく、どこか品を感じる2人だったな…。
「?透さん」
2人の去っていく後ろ姿を見つめ眉間にシワを寄せる透さんを見て、僕は目を瞬かせる。もしかしてぶつかったことまだ怒ってるのか?
「今あいつ、ワザと当たってきたような気がしたが…」
「え?」
「…いや、何でもない。帰ろう」
「うん」
僕たちは2人並んで歩いて旅館へと戻った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
126 / 178