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126.1泊旅行⑶
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「透さん、僕もう1度温泉に入ってくる」
夜、夕飯を食べ終えた僕は、タオルを持ちその場を立ち上がりながら言う。
「1人で平気か?」
「うん。道は覚えてるし、すぐ戻ってくるよ」
僕は透さんにそう言い残し、部屋を出た。
だって、せっかく来た温泉旅館だし、たくさん温泉に入っておきたいじゃん。
大浴場に向かうと、人はまばらにいる感じだった。さっき透さんが妙なことを言っていたし、一応周りに気をつけながら入ろう。自分の身は自分で守らないと。
その後、何事もなくゆっくり温泉を過ごせた僕は脱衣所で気分よく体を拭いた。明日の朝も入ろうかなぁ。
それから浴衣を着直してタオルを手に出口に向かった時、ぽんぽんと突然肩を叩かれた。
一瞬嫌な予感がし振り向くも、そこには先ほどのあのお兄さんが笑顔をこちらに向かって浮かべて立っていた。
「…あ、あ〜さっきの!」
僕はホッと胸を撫で下ろす。てっきりどこぞの変態野郎が話しかけてきたのかと…。
「どうも、また会いましたね。」
にこり、そうして微笑むお兄さんの傍にはあの男の子の姿は無かった。
「そうですね。今日は家族でこの旅館に来てるんですか?」
気になりそう尋ねてみると、彼の眼鏡の奥の僕を見つめる瞳が一瞬右に逸れた。
「まあ、そんなところです。」
お兄さんは相変わらずにこやかな表情でそう答えると、再びスリッパを履こうとする僕をじっと見た。
……えっと…。
「じゃあ僕、そろそろ戻っ…」
「待ってください」
そのまま通り過ぎようとすると、彼に片腕を掴まれる。
それに驚いて振り向くと、にことどこか黒い笑みを浮かべた彼の顔が、後ずさり壁に背をつく僕の顔近くまで迫った。
生憎周囲に人はいなかった。
「あなたと少し話したいことがあるんです。」
「は…」
「私の部屋まで来てくれませんか?」
すぐに終わりますから。
彼はそう言うと、すぐに僕から体を離した。
一体…この人は何を考えているんだ…?
僕は警戒心いっぱいの目でにこやかに微笑む目の前の男を見つめた。
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