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127.1泊旅行⑷
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「さ、こちらに掛けてください」
何となく彼から有無を言わせないようなオーラがあったので、とりあえず彼の部屋まで着いていくことにした。
彼の部屋は、僕たちの部屋とは少し変わっていた。何故か温泉旅館なのに部屋の中はホテルのような洋風。…一体どういうことなんだ、そういう部屋もあるものなのか。
「あの」
1人用の椅子に座るよう促してくる彼に向かって僕はそう声を発する。彼は何やらカタカタと台所でお茶の用意でもしているようだ。
なんだかここ…まるで彼専用の部屋じゃないか?
「どうしました?そこに掛けてください。今紅茶を」
「僕、紅茶飲めません」
「ああ、そうなんですね。なら他のものを今から」
「ミルクティしか駄目なんです。」
「ああ、そうでしたか。でしたら砂糖とミルクをいれておきますね。」
…そうそう、
て、そうじゃなくて!
「僕長居するつもりないですっ」
大体、透さんに何も伝えていないままにここに来てしまった。早く帰らないと面倒なことになるのは目に見えている。
「まあまあ、そう急ぐことないじゃないですか。お連れの方に何か言われたら私が引き止めたと言ってもらって構いませんので」
お兄さんはそう言って優雅に紅茶をオシャレなティーカップに注いでいる。僕はその様子にため息をつきながら、ひとまず促された席に腰を下ろした。
「どうぞ」
「ありがとうございます…」
丁寧にお皿の上に置かれた高そうなティーカップを目にし、少し戸惑う。
「ミルクが足りないようでしたら遠慮なく言ってください。追加致しますね」
そう言いぺこりとお辞儀を軽くするお兄さんの姿は、まるでどこかの執事のようだった。今の浴衣姿がスーツだったら、それを想像すると容易に合致した。
一応飲んでみたミルクティは美味しかった。美味しかったが…
「僕、早く帰らないと……一緒に来た人が今頃心配してるかもしれないし」
僕はそう言いながら席を立ち上がる。
こんなこと言ってるけど本当は、トラブルを避けたいだけなんだけど…。
「おや、口に合いませんでしたか?」
「いえ、そういうわけじゃないです。美味しかったです」
「なら、もう少しここに居ればいいじゃないですか」
部屋の出口に向かって歩く僕の腕をお兄さんがすかさず掴む。
「…あの」
ほんと、あの人を怒らせたら何もいいこと無いんだって……!全部僕の身に降りかかるんだからっ!
「まだここに来たばかりじゃないですか」
「っ…用意されたお茶は飲みましたし、そもそも初対面のあなたとあなたの部屋で一体何をするって言うんですか?僕ほんとに早く帰らないと…」
と、ふいにぐいっと力強い手に引っ張られ僕は目を大きくさせる。そのまま部屋の奥にあったベッドの上に体を投げ出され、一瞬驚くも慌てて上半身を起こす。
この人ほんとに一体何を考えてるんだ…!?
ベッドに僕の体を投げ出した本人は、涼し気な顔をして掛けていた眼鏡をカチャリと軽い音を立てながら近くの棚の上に置いた。
そして、眼鏡を外した男が薄ら笑いながらベッドの上に体を横にする僕の近くまでやってきた。
「あっああああの」
僕は事の状況が理解出来ず、目の前に映る先程とはまるで違った印象のする男の顔を見上げそう口を開く。
「どうしました?」
何だか真面目そうだった雰囲気のお兄さんが一気にチャラ男に…。眼鏡掛けてるのと掛けてないのとでこんなに印象違うのか…。って、いやそうじゃなくて!
「退いてください!」
「無理です。」
…何言ってんだこの人は…っ?!
大体、
「あの男の子があなたのこの姿見たら泣きますよ!」
すると、彼は目を丸くして僕を見たかと思うと、1人可笑しそうに笑っていた。
「…泣くのは、あなたかもしれませんよ?」
は……?
と、顎にかかる彼の手に気づき僕はハッとする。慌てて抵抗しようとしたが、すぐに腕を押さえつけられた。
そして、そのまま首筋に男の顔が迫りーー
「……!」
瞬間ちくんとした痛みが走った。そのとき、
バン!
突然部屋の扉が開いた。
あ……、
僕はそこにいた人物に思わず息を止めた。
「…とおる…さん」
何で透さんが…ここに……?
透さんの瞳がこちらに向けられ、僕は背中にひんやりとした冷や汗を流した。
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