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129.1泊旅行⑹
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翌朝、
「…ん〜」
僕は布団から体を起こし、伸びをした。
「凛人」
傍には既に私服に着替えた状態で立つ透さんが、未だ浴衣姿のままの僕を見て言った。
「早く着替えろ。」
「…へ」
そして目の前に突然どさっと投げ渡される自分の服に僕はうわっ、と声を上げつつキャッチする。
「朝食はよそで食おう、とにかく着替えるんだ」
「え、なんでそんなに急いでるの?あ…仕事の急用とか?」
「いいや、そうじゃない。ただ、ここから早く出たい」
透さんは眉間にシワを寄せてそう言うと、踵を返す。
…ここから早く?
ああそっか、昨日ちょっとした騒動みたいなことがあったから…。
「バス来るのいつだ」
旅館から朝早々に出ると無愛想にそう聞いてくる透さんに、僕はうんと…と時刻表を調べる。
「次は」
「おや、また会いましたね」
と、その聞きなれた声にはっとして顔を上げると目の前に昨日の兄弟がいた。
「何でまたお前らに会うんだよ」
そう言う透さんの顔からは明らかに怪訝さが滲み出ていた。
「昨日ぶり」
お兄さんの横に立つ男の子は笑顔を浮かべて透さんに向かって話しかけている。僕は透さんの腕を一応殴りかからないようにと掴みながら、ふと疑問に思う。…あれ、この2人いつの間に関わりを持ってたんだろ?
それにそういえば、
「透さん、なんで昨日僕のいる場所わかったの?」
2人の姿がいなくなってから、そう透さんに尋ねてみる。
「ああ?お前を探してる時にお前を見かけたって言うあのガキと偶然会ってな」
「…ふーん」
僕は軽く眉間に皺を寄せ顎に手をかける。何か引っかかる気がする…。でも、もうあの二人と会うことももうないだろうし、この件については特に考える必要ないのかな?
「どうした」
「あっううん」
そうしてふと、バスに乗ろうとした時、先に乗っていた透さんに手を差し出された。
「ほら」
「あ、ありがとう」
透さんはにこりとすることもなく、すぐ顔を背けるといつもの調子でバスの奥へ向かっていった。
とんだ災難はあったけど、でも、別に悪くはなかったのかな…この旅行も。
僕は隣の席で眠る透さんの寝顔を見ながらひとり微笑んだ。
「うわっ」
その後、無事家に帰り何となく鏡を見た僕は首筋の痣のような跡に目をひん剥かせた。これ…キスマーク…?昨日行為中に透さんに付けられた…。
「それにしたってこんな濃いの付けられたの初めてかもな…」
胸元結構開けて平然と帰路に着いてた気がするけど、見られてないかな。僕は首元の痣から目を背けながら軽くため息をついた。
ー
夕方、冷蔵庫に何も無かったので、すぐに買い物に出た。
明日からまた仕事の透さんには家で休んでもらうことにして、僕一人で行くことにした。
(何にしよう)
僕はうーんと頭を捻らせながら鞄を肩にかけて歩いていた。すると、
「あれ?凛人君?」
見知った声が聞こえた気がした。すぐに後ろを振り返ってみる。そこにいたのは、
「!烏堂さん…?」
「ああ、やっぱり」
久しぶりに見る烏堂さんの姿であった。
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