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135.企み(透side)
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「とおるさ〜ん」
最近、会社に通うのがかなり億劫になった。
原因は、
「…お前、いい加減にしろ。俺に一々絡んでくるな、迷惑だ」
昼休憩、廊下を歩いていると向こう側からタイミングよく現れた七晴が、こちらに向かって満面の笑みを浮かべながら走りよってきた。
「今日ボクとおるさんの為にお弁当作ってきたんだ」
当然のように腕に手を回して話しかけてくる七晴の手を俺は振り払う。
「だから一緒に食べよう?ね?」
しかし俺のそんな行為など気にもしない様子で、せかせかと歩く俺の隣を同じように七晴が歩きながら尋ねてくる。
「とおるさん、何が好き?食べ物」
エレベーターの前に着き、仕方なく立ち止まっているところを笑顔を浮かべた七晴にまた尋ねられる。
こいつは…、俺が無視しようと決め込んでても、手を何度振り払っても、あの日から毎日毎日飽きもせず俺の傍に着いてきやがる。ドMか?
「俺、弁当あるから。」
エレベーターが開いた直前、俺はそう一言だけ返す。すると、視界に映った七晴の顔が一瞬驚くようにして目を開いた。
「へ、へぇ」
「…。」
それから、食堂に着き、席について凛人の作ってくれていた弁当を食べようとしたら、
「席ここしか空いてないみたいだし、ボク隣で食べさせてもらうね。」
当然のように隣に腰を下ろす七晴。
そして、相変わらず俺に未だ色々と話しかけてきている七晴の姿を、俺はじっと観察するように見る。
七晴 幸斗…だったか?俺は名前を思い出しながらヤツから目を逸らしてたんたんと昼食をとることにする。
当然だが、周りでご飯をとっていた社員たちの目は俺たちに向かって明らかに注がれている。俺だってこんなところで食べる気なんてなかったんだ。ただ、社長室でこいつと2人きりになることの方が嫌だったので止むを得なかったのだ。
隣で気分良さそうに自分の作ってきたらしい弁当を開ける七晴に、俺は心の中で思う。
恐らく、七晴という大企業のお坊ちゃまということもあり、子どもの頃から甘やかされて育ち、それ故にここまで人に図々しい態度をとれるんだろう。
この会社の立場的にもこいつのとこの方が上なのもあり、余計誰もこいつに何も言えないということである。
ま…俺はそんなことどうでもいいけど。
「ところでお前、今学生じゃないのか?」
すると、私服を着たヤツが振り向き、嬉しそうに反応する。
「えっ?何でわかったの?」
「見たらわかるだろ。」
と、隣で照れたような仕草をする七晴。
「実はそうなんだ。でもあなたに会いたくて、今は学校お休みとってる。でも、家でちゃんと勉強してるよ」
そして下から見上げるように瞳を向けてくる七晴に、俺はああそう、とだけ返し顔を背けた。
「ねえ今度デートしようよ」
「……はあ?」
突然何を言ってくるんだ。
「とおるさんの仕事が終わってからでいいよ、夜の6時とか7時から、会おうよっ!」
「ガキは家帰って寝てろよ」
「ガキじゃないよ!それにボクと仲良くしてた方がメリットもあると思うよ。」
自信満々に笑顔を浮かべて俺を見てくる七晴を俺は冷静に見つめ返した。
…イライラする…。
こういう何も不幸なく不自由なく親に大事に守られて甘やかされて、自分に自信満々で俺を前にしても怯んだ様子をひとつも見せない、上から物事を躊躇いなく言ってくるやつ…。
こういうやつを見てると、腹が立つ。
「……いいぜ。」
「えっ、ほんとにっ?」
俺は彼に向かってに、と口端を上へとあげた。
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