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139.魔が差す(透side)
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部屋では七晴の抗う声が響いていた。
「いや…っ!」
涙を流し、四方八方から体を掴み服を脱がせようとする男たちの手を懸命に振り払う七晴。
「七晴」
俺はそんな彼の様子を見て話しかける。
「お前、俺が好きなんだろ?」
七晴はソファに座る俺を濡れた瞳で見つめながらゆっくりと頷く。
「なら、お前のその気持ち、一体どのくらいのものか俺に見せてみろ。」
「え…」
「たったこの程度のことで尻込みする気か。俺は、そんなんじゃ靡かねーぜ。」
そう言い俺はカチッと音を立てて煙草にライターの火を点ける。
七晴は口元を震わせる。
「…じゃあ、この人たちに抱かれたら……とおるさん、ボクのものになってくれる?…」
俺はふ、と笑いながら彼を見て言った。
「ああ、いいぜ。」
もちろんそんな気は一切ないが。
「わ、わかったよ」
七晴はすると、覚悟を決めたようにそう言って大人しくなった。そして男たちは七晴の衣服を剥ぎ取り、行為に挑もうとした。
俺はそんな光景をニヤニヤとしながら見つつ、意外にもすんなり行為を受け入れた七晴に目をやった。
面白くねぇ…。もっと泣いて嫌がって喚いてるところを見たかったのに。
俺は淡々と進んでいく光景につまらなさを感じ、煙草の火を消した。
そして腕時計を確認し、夜の9時を過ぎようとしているのを見てスマホを取り出した。凛人、家で大人しく留守番してるだろうか。そろそろ帰るか。
これから帰る、と打っている時、突然部屋のドアがばんっ!と開いた。
「幸斗様…ッッ!」
ち……。あの眼鏡の男がやって来てしまった。
「大丈夫ですかっ、幸斗様」
「斎賀(サイガ)…」
あともうちょっとだったのにな。俺はそう思いながら男たちに軽く話をつけて帰らせる。
「ちょっとあんた…、」
壁に背をつけて突っ立っていると眼鏡男が俺を見て近づいてきた。
「あ?なんだよ」
それにじっと見返せば、斎賀という男は俺を見て眉を吊り上げて言った。
「今幸斗様に何をさせようとしていたっ!?」
「は、この状況見て分からないのか?」
「こんなこと上に知れたら…お前は無事では済まないぞ!!」
「凛人にお前がこの間しようとしたことと同じことをしたまでだ。先に人のもんに手を出したのはどっちだ、俺のものに勝手に痕を付けたのはどこの誰だ!!!」
男の胸ぐらを掴み、今まさに殴りかかろうとした時、部屋に入ってきた人物に振り上げていた手を掴まれた。
俺のことを怯まずこうも簡単に止められる奴は限られている。
「やめろ透」
俺ははあと息を吐きながら、朔夜に掴まれた腕を振り払った。
「…どうしてお前がここにいる」
「俺だって付いてきたくてここに来たんじゃないさ。たまたま近くで実家の用があって、そしたらたまたまお前とお坊ちゃんの姿を見つけた。」
「…」
「透、お前やっと今、幸せになったんじゃねぇのかよ。なんでこんなこと…やってんだよ」
「お前に関係ねぇだろ。」
「せっかく丸くなってきてたのに、何昔の頃に戻ろうとしてんだよ」
「黙れ」
「…あの子を悲しませるようなこと、すんなよ」
バキッ
俺は朔夜の頬を殴った。
「…いっって〜…」
「俺はお前にどうこう言われる筋合いはない」
俺はホテルを出た。走って、家で待つ凛人の元まで向かった。
「透さん」
家に帰ると、何もこれまであったことを知らない凛人が笑って俺を出迎えた。
「疲れた?お風呂入れてるよ」
「…いや、いい」
俺は凛人の横を通り、自室へ向かった。
そしてベッドに横になり、唇を噛んだ。
結局俺は、昔と変わらない。凛人と釣り合う人間でいたいのに、少し魔が差すとまた俺は、過去の俺に戻ってしまう。極悪非道な人間に…。
畜生……
俺はそのまま朝を迎えた。
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