アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
146.放棄(透side)
-
「とおるさーんっ」
ノックもなくドアを開けた七晴がやってきて言った。
「また今度デートしよう?ね、いいでしょう?」
「…」
「でも今度はとおるさん本人とそういうことがしたいなぁ…。場所はどこでもボク気にしないしっ」
七晴はそうして、椅子に座る俺の髪に触れようとした。
俺はついに我慢できず、立ち上がり、傍にいた七晴の首に自らの手をかけた。
「…!!…っう……ぅぅ…」
俺は俺の手に両手を伸ばし辛そうに顔を歪める七晴を見下ろした。
「てめえ………前々から目障りなんだよ…」
「………と…おる…さ……」
俺はさらに首を絞める手の力を込めながら続けた。
「何でクビにしねえんだよ、とっととクビにすりゃいいだろ。ああ?」
「……い…いや、……け…けっこん…する、から…だか」
「誰がお前みたいなやつとするかよ」
七晴は俺を見上げ顔を青くさせた。
「つーか、お前とそーいうことしたくてもさぁ出来るわけないだろ。」
「……え……」
「萎えて、勃つわけねーだろって言ってんの」
口端を上げて軽く笑いながらそう言うと、首を絞められていた七晴がカッと顔を赤くさせ、悔しむように唇を噛んで涙を目に浮かべた。
俺の手から逃れると、はぁはぁっと息をし、キッと鋭い睨む目つきで俺を見た。
「ボクは、こんなにあなたのことが好きなのに…っ…どうしてそんなこと言うのっ!?」
「はあ?」
「ボクと…あの子と、何の違いがあるって言うの!?」
喚く七晴の胸ぐらを掴んで引き寄せ、俺は言った。
「…何もかもだよ」
ー
「ただいま。」
「透さん」
家に帰ると、閉じ込めておいたはずの凛人が帰宅した俺を迎えた。
「お前…またどうやって」
「ねえ透さん、ちゃんと話し合おう?」
…。
「はっ、何言ってんだ、話し合いだ〜?」
「うん、そうだよ。」
真剣な瞳でこちらを見てくる凛人を見て、俺は目を逸らす。
「話し合いって何のだよ」
「今回のことに決まってる。…彼とは、もう大丈夫なの?」
「…何が」
「透さんがまた、あの子に何かしないか不安なんだよ。約束して、…もう物騒なことしないって」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃなんねーんだよ」
じっと鋭い目を凛人に向ければ、びくっと凛人の体が跳ねる。
「透さん…僕のこと愛してるんでしょ?」
「ああ、そうだ。だが、それとこれとは話が別だ。」
「まってっ!話はまだ…」
立ち去ろうとする俺を凛人が駆け寄り呼び止める。
「安心しろよ。俺は近々恐らく、あの会社を辞めさせられる」
俺は凛人の方へ振り返りネクタイに手をかけながら告げる。
「え…?」
「アイツは金持ちの息子なんだ、そいつに俺は色々とやらかしてる。まあ、辞めればアイツと関わることもないだろうし、結婚もなくなる。お前もこれで良かったろ?」
に、と笑いながら凛人の顎に手をかけると、凛人は俺の手を振り払った。
「冗談やめて。辞めるって…これからの生活はどうするのっ?」
「はあ?しばらくは平気だろ、貯蓄ならそこそこある」
「そ、そうじゃなくて、…働かなきゃっ…!辞めてその後就く場所決まってるのっ?」
「うるせーなぁぐちぐちぐちぐち、そのうちテキトーに就いてやるよ。」
俺はそう凛人をあしらうと、その場を立ち去った。
たく、あいつは心配性だな。
…ま、どうにでもなるさ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
147 / 178